学校を出て、眞白さんと最初に会ったコンビニに向かっていると、いろんなことが思い浮かんだ。
あの日、どうしてあのまま家に帰らなかったんだろう……
コーヒーがこぼれたブラウスなんて気にしなければ良かった。
今ならわかる。
坂下さんが言った言葉の意味が。
『あいつは、やめといた方がいい』
坂下さんは志保理さんのことを知っていたんだ。
コンビニに着くと、駐車場にいた眞白さんはすぐにわたしに気が付いて、近づいて来た。
「良かった、会えて。ちゃんと謝りたかったんだ、この前のこと。どこか話せるとこに……」
「眞白さんの家でいいですよ、この近くなんですよね?」
「ああ、うん。未来ちゃんがいいなら」
「いいですよ」
だって、眞白さんはわたしには興味がないから。
眞白さんのマンションは本当にコンビニのすぐ近くだった。
「お茶でいい?」
「はい」
眞白さんは駐車場にあった自販機でお茶を買って、階段を上がった。
眞白さんの部屋は2階の一番端っこだった。
「うち、冷蔵庫ないから」
そう言いながら、部屋の鍵を開けると
「どうぞ」
と言われた。
部屋に入って驚いた。
あまりにも、何もなかったから。
ここで本当に暮らしているの?
使われた形跡のないキッチン。
本当に冷蔵庫もない。レンジすらない。
部屋の中も、ベッドとローテーブルくらいで、テレビもなかった。
「ここって、どのくらい住んでるんですか?」
「今の署に配属されてからだから、多分5年くらい」
5年……
5年住んでてこんなに何もないの?
自分には志保理さんと救助の仕事以外何も必要ない、っていう決意のような部屋に思えた。
「何もないって驚いてる?」
「はい」
「床で悪いけど座って」
言われるままにそこに座った。
眞白さんはわたしの斜め向かいに座った。
「志保理とは、高2の時から付き合ってて、志保理の親にも公認だったんだ。あいつには、よく怒られてた。毎日何となく生きるなって。目標を見つけろって。高3になっても進路が決まらなくて、適当にどこか大学にでも行こうかくらいしか考えてなかったんだ。あの日までは……」



