オレンジ



ドアの前にいたわたしは、病室を出て来た眞白さんと目が合った。

「聞いてた?」
「いいえ。中の声は聞こえないですから」
「実習、何時に終わる?」
「多分、6時前くらいには終わります」
「今度は約束守るから。一番最初に会ったコンビニのところで待ってていい?」
「時間、遅れるかもしれませんよ?」
「いいよ、待ってる。すっぽかしてもいいし」
「行きますよ」
「うん、じゃあまた後で」

眞白さんは少し行きかけて、戻って来ると

「ごめん、これ、捨てといて」

そう言って、持っていた花束をわたしに渡して、エレベーターの方に向かって歩いて行った。

この病棟で何度も見た後ろ姿だった。
ほんの少ししかいない時がほとんどだったけれど、それでも、今日はなぜだか一番辛そうに見えた。



志保理さんのための花束。

行き場のない花束(想い)は、あまりにも綺麗で残酷だった……