学校が終わった後、バスに乗らずに駅まで歩いた。
朝、眞白さんのあんな姿を見たのに、歩いた。
もしまた偶然会えたとしても、なんて声をかけたらいいのかも分からないのに。
「あれ、未来ちゃん?」
名前を呼ばれて一瞬期待した。
「あ、大原さん」
「今帰り?」
「はい」
「学校から駅まで歩いてるの?」
「運動不足だから」
「そっか。こっちは少し運動不足になりたい。なんて言っちゃいけないんだけど」
「大原さんはお休みですか?」
「この服私服に見える? コンビニに使いっ走りだよ」
言われてみれば、大原さんは『東奈消防署』と書かれたTシャツを着ていた。
「ここのコンビニ署が近いからみんなよく利用するんだ」
「そうなんですね」
「あのさ……」
「はい?」
「良かったら連絡先教えてもらえないかな?」
「わたしのですか? それだったら坂下さんが知って……」
「誰から聞くんじゃなくて、未来ちゃんから聞きたいんだ」
「いいですよ」
「あ……でも今何も持ってなかった……」
「だったら、大原さんの番号教えてください。わたしがそれにかけるから」
「いいの?」
「はい」
大原さんに言われた番号に電話をかけた。
「これで着信が残ったはずです」
「ありがとう。電話していい?」
「はい」
「じゃあ、僕行かないと」
「お仕事頑張ってください」
「頑張ることがない方がいんだけどね」
「そっか。じゃあ、トレーニング頑張ってください」
「そうする。じゃあね」
こんなに簡単に連絡先の交換はできるのに、聞いて欲しい人には聞いてもらえない。



