学年一のキラキライケメン(バカ)に告白されたので、付き合ってみた

膝に力が入らなかった。滝川の手が倒れかけたオレの肩を支える。

ずるっ

オレは、そのままストンと座布団の上に尻もちをついた。
滝川もオレにあわせてかがむ。
当たり前のような顔で正座したのに、よろけるなんて恥ずかしい。

「足が痺れた!」

笑いながら横を向いたら、鼻先に滝川の顔があった。

ーーん?

一瞬、真顔で見つめあう。近い! 滝川の色素の薄い目が目の前に。

「……」
「……」

男同士でも至近距離は若干気まずいな。
オレが「カバン……」と座ったまま動こうとすると、滝川ははっとしたような表情になり、部屋の隅に置いていたオレのカバンを取ってきてくれた。

「ありがと」

「た、高津でも足、痺れるんだ」

「そりゃ痺れるって!」

痺れない雰囲気を醸し出していたけどな! 滝川の前でカッコつけたかったのかもしれない。自分に笑える。
滝川はなぜかおろおろして顔を赤くしている。
クラスメイトの前で『全部好き』なんて堂々と言う奴が、なにが恥ずかしいんだか知らないが。

すりガラスを通る陽の光が優しく室内を照らす。

オレはカバンからカルディの袋を取り出した。
オレンジピールのチョコレート。チョコはあんまり好きじゃないけど、これは甘すぎず、ほろ苦さもあって美味しい。

滝川は座り直し、窓のほうを見ていた。サボテンが気になるのか? サンドイッチも放り出したままだ。

「これオレのオススメ。食べてみてよ」

「えっ」

振り向いた滝川が目をパチパチとさせている。
オレを見て、それからチョコレートを見た。

「オレ、チョコ好きなんだ。でもこれ、食べたことない! めっちゃ嬉しい!!」

顔を輝かせ、心底嬉しそうに笑う。

ドキッとした。

ーーえ、まさかな。

首筋が熱くなる。

でも、否定は出来ないほどに、はっきりと。
滝川が発光しているみたいに見えたんだ。嘘だろ。

滝川、本当に発光してるんじゃないのか? 富山に帰れよ。
いや、そんな話じゃなくて。

オレは慌ててパッケージのビニールを剥いた。
箱のミシン目を開き、小枝のような形のチョコレートを取り出す。
パクリ! 甘さと苦さのバランスがいい!

あ、滝川のために買ってきたのに、自分が先に食べてしまった。

「滝川も食べてみて」

箱を差し出すと、滝川も1本つまんで口にいれる。

「美味しい!」

いい反応を貰えてほっとした。2人とも好きなものが1つ出来た。

次から次へと食べていると、滝川に「唇にチョコついてる」と言われた。舌でペロペロ舐めたら、滝川に笑われたから、こちらも笑ってしまう。
滝川がまた顔を赤くしているからパッケージの裏を見ると、オレンジリキュール入り。なるほど。

オレンジピールチョコは、ワインにも合うらしい。
オレと滝川が一緒にワインを飲む日が来るかは分からないけど、楽しみにしておいてもいいかな、と思う。


あっという間に時間は経った。
校舎から遠いから、早めに戻らないといけない。

「滝川ーー」
オレが声をかけると、滝川がまたサボテンを見ていた。

ーーあれが、元カノの買ったものだと知ってるわけないよな? でも元カノ、オレとのこと友達に喋りまくってたし、まさかな……。

ふと、滝川が呟いた。

「いいなあ」

その真意は、聞けなかったけど。