学年一のキラキライケメン(バカ)に告白されたので、付き合ってみた

喧騒から離れたい時に行く場所がある。

校庭に面した部室棟。
1階建ての長屋のような作りで、ずらりと並んだドアの前には、バット、サッカーボールなどそれぞれの部活の道具が置かれている。
文化系の部活は基本校舎内に部室をもらえるんだが、文芸部は弱小だから、余っていたこの部屋を押し付けられた。でも、悪くない。文芸部でも今はオレくらいしか来ないんだから。

部外の友達を連れていくのは初めてだ。昼休みのチャイムと同時に、滝川を教室から連れ出した。

「校舎から一番遠い部屋だけどさ」

購買のパンを持った滝川を軽く振り返り、ドアをあけて中に入る。

「どうぞ」

「わあ……」

滝川が目をきらきらさせている。
靴を脱いでたたきから上がると、四畳半の板の間の部屋。田舎のおじいちゃんの部屋みたいな雰囲気だ。

中央には小さな座卓と座布団。壁にはカラーボックスを並べて、部員で持ち寄った本を置いている。
すりガラスの窓辺には、サボテンの鉢植え。
まあこれは、オレと別れた後この部屋に来ることもなくなった彼女の置き土産だけど。

「あがって。なんつって、自分の家じゃないけど」

オレがカバンを部屋の隅に置きながら声をかけると、滝川は長身をかがめ、いそいそと靴を脱いで上がってきた。
なんだか絵面が、庶民の家を訪れた王子様だ。制服の白シャツが妙に眩しく見える。

「へえ、いろんなジャンルの本がある」

滝川は、持ってきたパンを座卓に置いて本棚を見始めた。
本も見せたいけど、今日の用件はそれじゃない。

「滝川、早くたべよ」

オレが声をかけると滝川が戻ってきた。
二人で小さな座卓を挟んでパンを食べる。改まった話をするので、オレは普段はしない正座。滝川はあぐら。

思い切って切り出した。

「あのさ滝川、これはオレの希望なんだけど、あんま、付き合ってることオープンにしたくないんだ」

滝川がサンドイッチの包装を剥がす手をとめた。綺麗な目で真意を確かめようとするようにこちらを見る。
オレは言葉を選びながら言う。

「あ、滝川とだから言いたくないっていう意味じゃなくて。オレーー別れたばっかりだからさ、すぐ次行ったって思われるのも」

本音とは、ちょっと違うけれども。
滝川を傷つけたいわけじゃないんだ。
大丈夫かな。

反応を窺うと、滝川は明るく笑った。

「オレ、付き合ってることは、なんかウキウキしてたみたいでバレちゃってさ。でも高津のことは秘密にするよ。……大事だから」

「え?」

「高津、目立つのあんまり好きじゃないだろ。オレ、高津のそういうところも好きで……あ、これ、全部好き、の一部ね」

「は、はあ」

滝川はサンドイッチを食べ始めた。牛乳にプスンとストローを刺し、飲んでいる。

なんだか調子が狂う。オレのどこがそんなにいいんだか。パンの味が分からなくなっちゃうじゃないか。

食べ終わったところで、思い出した。

そうだ。

滝川と食べようと思って、カルディのお勧めのチョコを買ってきたんだ。カバンの中。

オレは立ち上がろうとした。
途中までは立ち上がれた。でも、足が痺れていた。体が斜めになる。よろける。

「あっーー」

オレが倒れかけるのと、座卓を回り込んできた滝川の手がオレの肩に触れたのが、同時。