学年一のキラキライケメン(バカ)に告白されたので、付き合ってみた

滝川をデートに誘ってしまった。
いや、デートじゃないな。単に日曜日遊ぼうって言っただけだ。
……ん、でも付き合ってる以上、デートになんのか? ううむ。

月曜日の朝。
オレはイヤホンを耳に突っ込んだまま、プラプラと廊下を歩いていた。脳を騒がしくしておくのが好きなんだ。本を読めないなら音楽を聞く。

昨日の渋谷デートを思い出す。滝川はずっとニコニコ笑っていて……まあ、悪くなかった。手を繋がれた時はびっくりしたけど。びっくりしただけで、別にドキドキしたりはーー

あ、ええと、今、聞いている音楽は、高校の合唱コンの課題曲メドレーです。♪何処行くか流浪の民〜♪

「おはよっ!」

ドキー!いや、ギクー!

後ろから滝川の明るい声。ひょいと隣に並んできた。

「お、おはよ」

オレはイヤホンを外しながら顔を上げる。

滝川は朝からご機嫌だ。
付き合いだしてから、クラスでも話すようになった。話しかけてくるのは滝川だけど。
並んで歩く滝川は、ハミングしてないけどしてるみたいなキラッキラの笑顔。女子の視線が飛んでくる。視線の先がオレじゃないと分かっていても緊張する。

気づかないふりで前を向く。

「高津、今日は何聞いてるの?」

「んー流行りの音楽とかではないんだけど」

ここで流浪の民とか言うやつ、面倒くさいよな。ガラッと教室のドアを開ける。

「おー滝川ぁ、と、高津じゃん」

入口付近の椅子に座っていた相田が片手を上げた。滝川のお仲間のピアス付きイケメン。

「はよー」

オレは混ざる気もなくて、挨拶だけして通り過ぎる。ちらっと見ると、滝川が相田と仲良さそうに話している。
目立つ。目立つから見てしまうのか、いや、見られるから目立つんだな。周囲の視線がライトのようにイケメンを照らす。

自分の席で教科書を揃えていたら、女子も混ざった会話が聞こえてくる。
オレは机の横にかけたカバンから水筒を取り出した。麦茶を一口。

「滝川くん、彼女出来た? 最近いつもニヤついてるよね」

ゴブッ、ゴホゴホッ

あっぶね。飲みかけの麦茶吹くところだった。
そういえば、いままで、滝川の浮いた話は不思議なくらいなかった。オレのことがずっと好きだったから……ではないと思うが。自意識過剰!

耳をすませる。
オレと滝川の交際のことは、クラスの誰も知らないはず。

相田が笑いながら混ぜ返す。

「マジ? どんな美人よ?」

滝川とのことは……男同士だから隠したいとはそこまで思っていない。同じ学年で男同士のカップル、他にもいるし。でも、ものすごく好きならともかく、来週には「やっぱ友達」かもしれないのに、オープンにしたくはない。

……滝川、言わないよな? 「高津と付き合ってる」とか。

机の上の水筒を握りしめる。

やばい。そのへん、ちゃんと話しておくんだった。

横目で滝川を見ると、滝川もオレを見ていた。目があった!

言うなよ、言うなよ、これは前フリじゃないぞ、おいいい、オレのこと好きなら言いたいこと分かるよな?!

滝川が、首を傾げて笑った。