サボテンは部室を出るときに回収した。
滝川には「園芸部の奴にあげるって言って忘れてた」と適当な嘘をついた。でも、生き物を捨てるのもなんだから、本当にあげてもいいかもしれない。
放課後。
「たーかつ! 駅まで一緒に帰ろ!」
昇降口で滝川に声を掛けられた。集まる視線。うわ、目立つ!
滝川自身が目立ってるのか、滝川がオレに声をかけている絵面が珍しくて見られているのか分からない。
後者だとしたら、付き合いがバレるのも時間の問題か?!
いやま、友達として仲良くしてると思えば不自然ではないな。滝川、相田や他のメンツともよくつるんでいるし。
玄関を出て、駅までの道を歩く。
滝川とオレの組み合わせで何を話しているんだと思われそうだけど、意外に話が尽きない。
共通の趣味も多いんだ。YouTubeで同じゲーム実況見てたりとか。
しばらく住宅街の間の一車線の道をくだり、カフェや雑貨屋も多いにぎやかなエリアまで来た。
滝川の視線が、雑貨店の店頭に並べられている観葉植物に向く。
吊り下げられたポトス、太い根のガジュマル……サボテンもある。
そのままスルーしようとして、思い直し、足を止めた。
……部室のサボテン。
滝川が、元カノのものだと気づいていたかは分からない。
でも、なんとなく、2人で買ったものを置いたら喜んでくれそうな気がした。
オレは滝川に顔を向けた。
「サボテン回収したしさ。部室に新しくなんか置こうかな。どれがいいと思う?」
「え、オレも一緒に選んでいいの?!」
急き込むように返されて笑ってしまう。嬉しいんだ。分かりやすいな。
「いーよ。あの部屋に合うの探したいから」
滝川は真剣に選び始める。一つ一つの植物をじっと見て、スマホでなにかを検索している。
「何してるの?」
「日当たりがどのくらいいるかとか、丈夫かとか……」
後ろから見ていたら、店員の女性がすすすっとオレに近づいてきた。滝川の方に目配せしながら、小さな声で話しかけてくる。
「あの人、モデルさんとかですか?」
「あ、いや、特にそういうのはしてないみたいで」
まあ聞かれるよな、そりゃ。
観葉植物見てるすらっとした立ち姿なんて、雑誌の1ページだもんな。
イケメンで羨ましいなあって前なら思っただろうけど、……友達になったら、相手が褒められるのも嬉しいもんだな。
結局、ガジュマルを買った。水を蓄えた太い根が可愛らしい。
オレの「なんか癒やされるよな」のひと言が決め手になった。
ビニールの手提げを受け取った滝川は、嬉しそうに中を覗き込んでいた。
「高津に選ばれて、部屋に置いてもらえるラッキーな植物だ!」と滝川。
「いや、意味分からんし」
そんな言葉でどきどきしてしまうのも、意味が分からない。
※ ※ ※
翌日の放課後。
部室にガジュマルを置きにいこうと廊下を歩いていると、廊下の向こうから歩いてくる男二人ーー文芸部の友達に会った。
他クラスだけど仲はいい。時々昼も一緒に食べて、元カノと別れた話も聞いてもらっていた。
「高津、機嫌よさそうだよな」
「彼女できた?」
んん? なんか最近、同じようなことを聞かれていた奴が身近にいたような。
誰だっけ。忘れたけど。
オレはにこっと笑いかけた。
「出来てない。でも、ま、次の日曜はデート」
「マジ?!」
「クソ野郎!!」
校舎を出て、ハミングでもするような気分で、渡り廊下を歩く。
滝川がいたら、言わなかった。
デートを楽しみにしてるなんて、まんまとほだされたみたいで悔しいからさ。
ほだされ編(完)
滝川には「園芸部の奴にあげるって言って忘れてた」と適当な嘘をついた。でも、生き物を捨てるのもなんだから、本当にあげてもいいかもしれない。
放課後。
「たーかつ! 駅まで一緒に帰ろ!」
昇降口で滝川に声を掛けられた。集まる視線。うわ、目立つ!
滝川自身が目立ってるのか、滝川がオレに声をかけている絵面が珍しくて見られているのか分からない。
後者だとしたら、付き合いがバレるのも時間の問題か?!
いやま、友達として仲良くしてると思えば不自然ではないな。滝川、相田や他のメンツともよくつるんでいるし。
玄関を出て、駅までの道を歩く。
滝川とオレの組み合わせで何を話しているんだと思われそうだけど、意外に話が尽きない。
共通の趣味も多いんだ。YouTubeで同じゲーム実況見てたりとか。
しばらく住宅街の間の一車線の道をくだり、カフェや雑貨屋も多いにぎやかなエリアまで来た。
滝川の視線が、雑貨店の店頭に並べられている観葉植物に向く。
吊り下げられたポトス、太い根のガジュマル……サボテンもある。
そのままスルーしようとして、思い直し、足を止めた。
……部室のサボテン。
滝川が、元カノのものだと気づいていたかは分からない。
でも、なんとなく、2人で買ったものを置いたら喜んでくれそうな気がした。
オレは滝川に顔を向けた。
「サボテン回収したしさ。部室に新しくなんか置こうかな。どれがいいと思う?」
「え、オレも一緒に選んでいいの?!」
急き込むように返されて笑ってしまう。嬉しいんだ。分かりやすいな。
「いーよ。あの部屋に合うの探したいから」
滝川は真剣に選び始める。一つ一つの植物をじっと見て、スマホでなにかを検索している。
「何してるの?」
「日当たりがどのくらいいるかとか、丈夫かとか……」
後ろから見ていたら、店員の女性がすすすっとオレに近づいてきた。滝川の方に目配せしながら、小さな声で話しかけてくる。
「あの人、モデルさんとかですか?」
「あ、いや、特にそういうのはしてないみたいで」
まあ聞かれるよな、そりゃ。
観葉植物見てるすらっとした立ち姿なんて、雑誌の1ページだもんな。
イケメンで羨ましいなあって前なら思っただろうけど、……友達になったら、相手が褒められるのも嬉しいもんだな。
結局、ガジュマルを買った。水を蓄えた太い根が可愛らしい。
オレの「なんか癒やされるよな」のひと言が決め手になった。
ビニールの手提げを受け取った滝川は、嬉しそうに中を覗き込んでいた。
「高津に選ばれて、部屋に置いてもらえるラッキーな植物だ!」と滝川。
「いや、意味分からんし」
そんな言葉でどきどきしてしまうのも、意味が分からない。
※ ※ ※
翌日の放課後。
部室にガジュマルを置きにいこうと廊下を歩いていると、廊下の向こうから歩いてくる男二人ーー文芸部の友達に会った。
他クラスだけど仲はいい。時々昼も一緒に食べて、元カノと別れた話も聞いてもらっていた。
「高津、機嫌よさそうだよな」
「彼女できた?」
んん? なんか最近、同じようなことを聞かれていた奴が身近にいたような。
誰だっけ。忘れたけど。
オレはにこっと笑いかけた。
「出来てない。でも、ま、次の日曜はデート」
「マジ?!」
「クソ野郎!!」
校舎を出て、ハミングでもするような気分で、渡り廊下を歩く。
滝川がいたら、言わなかった。
デートを楽しみにしてるなんて、まんまとほだされたみたいで悔しいからさ。
ほだされ編(完)



