混乱する私に、彼は大慌てでポケットから普段つけているメガネを取り出し、前髪を乱暴に下ろして装着した。
そして、急に猫背になってぼそぼそと呟いた。
「ち、違う……俺はアイドルなんて……ただの地味なクラスメイトで……」
「……え?」
メガネ。重い前髪。急に小さくなった背中。
声のトーンは違うけれど、さっきまでのクラスメイト、長谷川くんそのものだった。
「長谷川……くん? ……え!? じゃあ、リクくんって……長谷川くん!?」
「ちょ、声が大きい!!」
長谷川くんは私の手首をキュッと掴むと、慌てて路地の奥へと引っ張り込んだ。薄暗いビルの陰、2人分のスペースしかない狭い隙間。
背中が冷たいコンクリートの壁に当たり、逃げ場を失う。長谷川くんは周りを警戒するように素早く見回したあと、観念したようにハァ……と小さいため息をついた。
そして、メガネをすっと外し、前髪をかき上げた。
夕日に照らされた国宝級の素顔が、目の前に現れる。
薄暗い路地裏だというのに、彼だけが発光しているんじゃないかと思うくらい、眩しくて息が止まる。
「……頼むから、大声出さないでくれ、白石。」
長谷川くんは壁についた手にぐっと体重をかけ、私を閉じ込めるように顔を近づけてきた。
顔と顔の距離、わずか10センチ。
上品な香水の匂いと、男の子らしい温かい体温がダイレクトに伝わってきて、私の心臓が爆発しそうだ。
「白石。お前、さっき教室で『リクくんは人生の酸素』とか言ってたよな」
「〜〜〜〜っっっ!?」
(げーーーーっ!? さっきのゆいとの痛いオタクトーク、全部聞かれてたーーー!?)
恥ずかしさで顔から火が出そうな私を見て、長谷川くんは眉をひそめ、少しだけ悔しそうに口元を歪めた。
「学校では『地味な長谷川』でいなきゃいけないから我慢してたけど……目の前で俺のこと熱弁されてるの、どんな気持ちで聞いてたと思う?」
(バカバカバカ!!…夢だ、うん。これは夢)
「『推し』が目の前にいるんだから、俺だけ見てよ」
耳元で囁かれた低くて甘い声。
ステージの上で見せる完璧な王子様じゃない。目の前にいるのは、私だけに感情をむき出しにする「推し」だった。
「事務所にバレたら一発でアウトなんだ。……俺の秘密、守ってくれる?」
上目遣いで、私を捉えて離さない強い瞳。
断れるはずなんてなかった。
推しとの危険すぎる秘密の共有。
私の高校生活は、この瞬間から大きく狂い始めてしまった——!
そして、急に猫背になってぼそぼそと呟いた。
「ち、違う……俺はアイドルなんて……ただの地味なクラスメイトで……」
「……え?」
メガネ。重い前髪。急に小さくなった背中。
声のトーンは違うけれど、さっきまでのクラスメイト、長谷川くんそのものだった。
「長谷川……くん? ……え!? じゃあ、リクくんって……長谷川くん!?」
「ちょ、声が大きい!!」
長谷川くんは私の手首をキュッと掴むと、慌てて路地の奥へと引っ張り込んだ。薄暗いビルの陰、2人分のスペースしかない狭い隙間。
背中が冷たいコンクリートの壁に当たり、逃げ場を失う。長谷川くんは周りを警戒するように素早く見回したあと、観念したようにハァ……と小さいため息をついた。
そして、メガネをすっと外し、前髪をかき上げた。
夕日に照らされた国宝級の素顔が、目の前に現れる。
薄暗い路地裏だというのに、彼だけが発光しているんじゃないかと思うくらい、眩しくて息が止まる。
「……頼むから、大声出さないでくれ、白石。」
長谷川くんは壁についた手にぐっと体重をかけ、私を閉じ込めるように顔を近づけてきた。
顔と顔の距離、わずか10センチ。
上品な香水の匂いと、男の子らしい温かい体温がダイレクトに伝わってきて、私の心臓が爆発しそうだ。
「白石。お前、さっき教室で『リクくんは人生の酸素』とか言ってたよな」
「〜〜〜〜っっっ!?」
(げーーーーっ!? さっきのゆいとの痛いオタクトーク、全部聞かれてたーーー!?)
恥ずかしさで顔から火が出そうな私を見て、長谷川くんは眉をひそめ、少しだけ悔しそうに口元を歪めた。
「学校では『地味な長谷川』でいなきゃいけないから我慢してたけど……目の前で俺のこと熱弁されてるの、どんな気持ちで聞いてたと思う?」
(バカバカバカ!!…夢だ、うん。これは夢)
「『推し』が目の前にいるんだから、俺だけ見てよ」
耳元で囁かれた低くて甘い声。
ステージの上で見せる完璧な王子様じゃない。目の前にいるのは、私だけに感情をむき出しにする「推し」だった。
「事務所にバレたら一発でアウトなんだ。……俺の秘密、守ってくれる?」
上目遣いで、私を捉えて離さない強い瞳。
断れるはずなんてなかった。
推しとの危険すぎる秘密の共有。
私の高校生活は、この瞬間から大きく狂い始めてしまった——!
