『社交パーティー』
それは豪華な夕食とおしゃべりを楽しむ親睦会。
その実、実態はその交流を通じて人脈を広げ、社会的地位の向上を狙う機会という側面ももっている。
パーティーを通じて新しい人脈を開拓したり、情報交換などをするいわば「探り合いの場」となっているのだ。
僕は正直、あまり好きではない。
表向きには参加者は皆、笑顔で楽しんでいるように見えて、
実際はお互いの腹の探り合いをしているわけだ。
下手なことを口を滑らせようものなら、すぐに社交界で広まってしまう。
息の詰まる、貴族たちにとってそこは「戦場」なのである。
いつもなら僕一人、味方もおらず、四方八方からの言葉攻めに遭うところだったのだが、
今回は唯一気の許せる「沙羅」を(いちメイドではあるが)忍ばせている。
僕が彼女を加えてほしいとメイド長に頼めば逆らうわけもなく、二つ返事でOKが出た。
後から考え直してみると、彼女に迷惑をかけてしまったんじゃないか?とも思ったが、
なるべく考えないようにした。
そして迎えた社交パーティー当日。
多くの業界人が集まり、人によっては自分の権力を誇示するかのように煌びやかに着飾った衣装や
自慢の妻を引き連れ、所せましと会話を楽しんでいた。
昔はそれこそ、思い思いのドレスを身に纏い、社交パーティーというよりは「舞踏会」に近いものが催され、
朝から晩までダンスパーティーのようなものも行われていたようだが、
今は粛々と食事やお酒をつまみに業界人同士が会話を楽しむ厳かなものへと変化している。
ダンスを踊れと言われたら僕には無理だが、静かな場よりは音楽が流れ、気が紛れる舞台があった方が、
幾分か緊張の糸も解れていただろうに…
残念に思う気持ちを抑え、今は黒のスリーピースに身を包み、どこから声がかかっても大丈夫なように臨戦態勢中だ。
「ドレスコード」というのは実にめんどくさい!
普段着が袴姿なので余計、窮屈に感じてしまう。
しかし、こんな、誰の目が光っているとも知れない場で気を抜いた格好をしてしまえば、
それこそ恰好の「えさ」になってしまうので仕方なく、ビシッとスリーピースを着こなしている。
ジャケットを脱ぎたい気持ちをグッと堪え、さりげなくキョロキョロとしていると、ふと、沙羅の姿を確認する。
はやる気持ちを抑え、ゆっくりと彼女の方に近づいていく。
「ごきげんよう」
後ろからそう、声をかけると、彼女の肩がビクッと跳ね上がる。
このような社交場なんてきっと彼女は初めての経験なのだろう。
背中からは不安と恐怖に包まれているように感じた。
彼女がおそるおそるこちらに向き直すと安堵の顔で顔が緩んだ。
そして同時にムッとした顔で小声で攻め立ててきた。
「おぼっちゃま!なんでこんな…堅苦しく息苦しい場にお呼びになったのかしら!」
「おまけにおぼっちゃまに媚びを売ったんじゃないかってメイド長から疑いの目を向けられているわ!」
「私は静かに日々を過ごしたいだけだったのに…どう責任取ってくださるのかしら?」
彼女は僕に不満の声を捲し立てるようにバシバシとぶつけてきた。
言葉の一つ一つは棘があるのに、いちいち尊敬語なのが少しツボにハマってしまい、思わずクスっと笑ってしまった。
彼女はその一瞬を逃さず、
「笑いごとではありませんよ!?」
「私、こういうの、とても苦手なのですから…」
さっきまで怒っていたのに今は子供が迷子になったような不安の表情でいっぱいだった。
少し、彼女を追い詰めすぎてしまったかなと反省し、彼女の手を引いた。
「ごめん。君にこの社交場を見せてあげたかったんだ」
「いつも…僕の退屈な日々に色を塗ってくれた君に感謝の気持ちとして届けたかったのだけど…」
「あまりお気に召さなかったようだね。本当にすまなかった」
僕は素直に謝った。
彼女を失いたくはなかったから。
すると、彼女は不安な顔を隠すとボクの顔をジッと見つめ、
「穴埋めはのちほど、していただきますからね?」
「おぼっちゃまはほら、パーティーを楽しんでらしてくださいな?」
そう言って、僕の空いたグラスにワインをなみなみと注いでくれた。
それは豪華な夕食とおしゃべりを楽しむ親睦会。
その実、実態はその交流を通じて人脈を広げ、社会的地位の向上を狙う機会という側面ももっている。
パーティーを通じて新しい人脈を開拓したり、情報交換などをするいわば「探り合いの場」となっているのだ。
僕は正直、あまり好きではない。
表向きには参加者は皆、笑顔で楽しんでいるように見えて、
実際はお互いの腹の探り合いをしているわけだ。
下手なことを口を滑らせようものなら、すぐに社交界で広まってしまう。
息の詰まる、貴族たちにとってそこは「戦場」なのである。
いつもなら僕一人、味方もおらず、四方八方からの言葉攻めに遭うところだったのだが、
今回は唯一気の許せる「沙羅」を(いちメイドではあるが)忍ばせている。
僕が彼女を加えてほしいとメイド長に頼めば逆らうわけもなく、二つ返事でOKが出た。
後から考え直してみると、彼女に迷惑をかけてしまったんじゃないか?とも思ったが、
なるべく考えないようにした。
そして迎えた社交パーティー当日。
多くの業界人が集まり、人によっては自分の権力を誇示するかのように煌びやかに着飾った衣装や
自慢の妻を引き連れ、所せましと会話を楽しんでいた。
昔はそれこそ、思い思いのドレスを身に纏い、社交パーティーというよりは「舞踏会」に近いものが催され、
朝から晩までダンスパーティーのようなものも行われていたようだが、
今は粛々と食事やお酒をつまみに業界人同士が会話を楽しむ厳かなものへと変化している。
ダンスを踊れと言われたら僕には無理だが、静かな場よりは音楽が流れ、気が紛れる舞台があった方が、
幾分か緊張の糸も解れていただろうに…
残念に思う気持ちを抑え、今は黒のスリーピースに身を包み、どこから声がかかっても大丈夫なように臨戦態勢中だ。
「ドレスコード」というのは実にめんどくさい!
普段着が袴姿なので余計、窮屈に感じてしまう。
しかし、こんな、誰の目が光っているとも知れない場で気を抜いた格好をしてしまえば、
それこそ恰好の「えさ」になってしまうので仕方なく、ビシッとスリーピースを着こなしている。
ジャケットを脱ぎたい気持ちをグッと堪え、さりげなくキョロキョロとしていると、ふと、沙羅の姿を確認する。
はやる気持ちを抑え、ゆっくりと彼女の方に近づいていく。
「ごきげんよう」
後ろからそう、声をかけると、彼女の肩がビクッと跳ね上がる。
このような社交場なんてきっと彼女は初めての経験なのだろう。
背中からは不安と恐怖に包まれているように感じた。
彼女がおそるおそるこちらに向き直すと安堵の顔で顔が緩んだ。
そして同時にムッとした顔で小声で攻め立ててきた。
「おぼっちゃま!なんでこんな…堅苦しく息苦しい場にお呼びになったのかしら!」
「おまけにおぼっちゃまに媚びを売ったんじゃないかってメイド長から疑いの目を向けられているわ!」
「私は静かに日々を過ごしたいだけだったのに…どう責任取ってくださるのかしら?」
彼女は僕に不満の声を捲し立てるようにバシバシとぶつけてきた。
言葉の一つ一つは棘があるのに、いちいち尊敬語なのが少しツボにハマってしまい、思わずクスっと笑ってしまった。
彼女はその一瞬を逃さず、
「笑いごとではありませんよ!?」
「私、こういうの、とても苦手なのですから…」
さっきまで怒っていたのに今は子供が迷子になったような不安の表情でいっぱいだった。
少し、彼女を追い詰めすぎてしまったかなと反省し、彼女の手を引いた。
「ごめん。君にこの社交場を見せてあげたかったんだ」
「いつも…僕の退屈な日々に色を塗ってくれた君に感謝の気持ちとして届けたかったのだけど…」
「あまりお気に召さなかったようだね。本当にすまなかった」
僕は素直に謝った。
彼女を失いたくはなかったから。
すると、彼女は不安な顔を隠すとボクの顔をジッと見つめ、
「穴埋めはのちほど、していただきますからね?」
「おぼっちゃまはほら、パーティーを楽しんでらしてくださいな?」
そう言って、僕の空いたグラスにワインをなみなみと注いでくれた。



