籠の中の鳥

今日は月イチで開催される「社交パーティー」だ。
通常はメイドの下っ端である私が呼ばれることはまずない。
メイド長と彼女が選ぶ数名の選りすぐりのメイドのみがパーティーの準備に駆り出される。
しかし、今回のパーティーには何故か私にも声がかかったのだ。

「え?私ですか?」
「ですが、私はまだまだ新人の身で…」

「おぼっちゃまの指名です。」
「何をしたのか知りませんが、おぼっちゃまに気に入られたようね?」

メイド長から少し含みのある言い方を言われた。
私は…あまり良くは思われていない。
いくら先代のメイド長の娘とはいえ、今は亡き人の忘形見。
同情で迎え入れたとはいえ、「メイド」として何の手解きも受けていない私が、
いきなりこんな上流階級のいちメイドになれるなんて本来あってはならないことだから…
それは私も自覚して、あまりでしゃばったことはしないようにしていた。
だけど、今回のことは予想外すぎて回避できなかった。
確かにここ最近は彼と話す機会が増えたような気はする。
だけど、そんなに気に入られるほど、会話が弾んだ覚えもないし、
特別取り入ったわけでもない。
こんなことくらいで気に入られるのなら、私じゃなくても全然できることだと思った。
(「おぼっちゃまは一体私のどこに魅力を感じたのかしら…」)
心の中でそう呟きつつ、

「承知いたしました」
「謹んでお受けいたします」

そう、社交辞令の言葉を述べ、その場を後にした。


社交パーティーに招待されたからといって「パーティー」としてメイドたちが楽しめるわけでは決してない。
私たちは黙々と給仕をこなすのみ。
あとは、招待客のおもてなしを粛々としていく。
飲み物を注いだり、料理の提供、ご機嫌取りなどに奔走する。
要は「雑務全般」を任されるというわけだ。
それでも私たちメイドにとって、これはとても名誉なことだそうで、
メイド長に選ばれたメイドたちは皆、喜んでいた。
…私以外は。

「パーティーに参加できるなんて光栄だわ」
「みんなに自慢できてしまうわね!」
「〜様のグラス係、緊張するわね…」

みんな、思い思いの感情を抱いていた。
私はというと、

(「社交パーティーが終わったら私はおぼっちゃまに文句の一つや二つ、言わなければ気が済まないわ!」)

と、心の中でこんなに堅苦しく、空気の重い社交場にお呼ばれされたことを呪った。


そもそも私は人付き合いが得意な方ではない。
同じメイド同士でさえ、あまり人間関係は上手くいってないというのに……

そんなことを頭の中で考えながら身支度を整え、
「夜の社交場」へと歩を進めていった。