彼の言葉ひとつひとつにはなにやら特別な力が籠っていそうな気がした。
それが「綿貫家」の「異能」なのかはわからない。
もしかしたら気のせいかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
ただ、会話をして自然と嫌な気分にはならない。
だから話しかけられる話題さえ見つかれば、こちらから話しかけようとしている。
特に最近は仕事も覚えてきて、心に余裕もできてきたので余計に話しかける機会が増えたように感じる。
多分彼なりに頭の中ではいろいろと考えているのだろう。
だけど、そんな姿を微塵も見せない。
私だったら抑えきれず、顔に出てしまいそうだ。
多分、だけど、彼は私と年齢もさほど違わない。
なのに、なんだかひとまわりもふたまわりも大きな存在に見えてくる時がある。
社交の場で屈託のない笑顔で多くの財界の人間たちと渡り合う姿を見ると、さすがだなと思う。
隙を見せることなんてせず、常に堂々としていて威厳があり、なんだかちょっとかっこいい。
軒下でボーーっと空を見上げているときとは大違いだ。
時々、二重人格者なんじゃないかと疑うほどに彼は面白いほど二面性を上手に使い分けている。
使い分けている、というよりは、電池切れになった、という表現の方が当てはまるかもしれないが…
そんな彼も昔は挨拶をしても返ってこなかった。
よそ者め!といった感じの鋭い目つきで睨まれることだってあった。
今は会話も続くのでずいぶんとマシになったな~としみじみ振り返る。
ふとそう思っているとまた、彼が「いつもの定位置」に陣取っていた。
「今日もですか。おぼっちゃま」
はぁ…とため息をつく。
「今日はもう夕暮れで青空広がってませんけど、いいんですか?」
もちろん彼の目的は「空」そのものなので、青空じゃなくてもいいことはわかっている。
わかっているけれど、わざと聞いてみた。
少し、いじわるをしてみたのだ。
だけど彼は悠然と返してきた。
「いいんだ。青空じゃない空も好きだから。」
「それに…空にもいろんな姿があるからこそ、美しく見えるんじゃないかな?。人間と同じで、ね」
そんなことを恥ずかしげもなく言ってきた。
彼には言葉遊びで勝てる気がしない。
どんないじわるな言葉を投げかけてもきっと彼は物怖じせず、返してくるだろう。
そんなところで教養の良さを表現してこなくても!と心の中で思う。
「では、人間も美しいですか?」
う~~ん、と彼は唸る。
少し答えに窮していたが、やがていい答えが思いついたのか、言葉を紡ぎだした。
「人間も美しいさ。あがけばあがくほど、輝いて見える」
「だけど、醜い人もいることは事実だ」
「そういう存在がいることを理解した上で、やっぱり人間も美しい」
「僕の考えは変かもしれないけど、あがいている人ほど美しい。何もしない方がみすぼらしいって思う」
面白い言葉が返ってきた。
きっと多分、芸術肌なのかもしれない。
そんな回答、普通の人からは飛び出てこない。
それが本心かはわからない。
あれだけいろんな、それこそ、いわゆる「汚い大人」とも何人も接してきただろう。
けれど、そういう考えをもっているというのはきっと本当のことなんだろうなぁって妙に納得した。
「おぼっちゃまは時々、不思議で面白いですね」
「そんな回答、誰も予想しませんよ」
「では私もあがいてみましょうかね」
いつしか、彼との会話を楽しむ自分がいた。
今度はどんな突拍子のない言葉が返ってくるのだろう?
そう期待する私がいたのだった。
それが「綿貫家」の「異能」なのかはわからない。
もしかしたら気のせいかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
ただ、会話をして自然と嫌な気分にはならない。
だから話しかけられる話題さえ見つかれば、こちらから話しかけようとしている。
特に最近は仕事も覚えてきて、心に余裕もできてきたので余計に話しかける機会が増えたように感じる。
多分彼なりに頭の中ではいろいろと考えているのだろう。
だけど、そんな姿を微塵も見せない。
私だったら抑えきれず、顔に出てしまいそうだ。
多分、だけど、彼は私と年齢もさほど違わない。
なのに、なんだかひとまわりもふたまわりも大きな存在に見えてくる時がある。
社交の場で屈託のない笑顔で多くの財界の人間たちと渡り合う姿を見ると、さすがだなと思う。
隙を見せることなんてせず、常に堂々としていて威厳があり、なんだかちょっとかっこいい。
軒下でボーーっと空を見上げているときとは大違いだ。
時々、二重人格者なんじゃないかと疑うほどに彼は面白いほど二面性を上手に使い分けている。
使い分けている、というよりは、電池切れになった、という表現の方が当てはまるかもしれないが…
そんな彼も昔は挨拶をしても返ってこなかった。
よそ者め!といった感じの鋭い目つきで睨まれることだってあった。
今は会話も続くのでずいぶんとマシになったな~としみじみ振り返る。
ふとそう思っているとまた、彼が「いつもの定位置」に陣取っていた。
「今日もですか。おぼっちゃま」
はぁ…とため息をつく。
「今日はもう夕暮れで青空広がってませんけど、いいんですか?」
もちろん彼の目的は「空」そのものなので、青空じゃなくてもいいことはわかっている。
わかっているけれど、わざと聞いてみた。
少し、いじわるをしてみたのだ。
だけど彼は悠然と返してきた。
「いいんだ。青空じゃない空も好きだから。」
「それに…空にもいろんな姿があるからこそ、美しく見えるんじゃないかな?。人間と同じで、ね」
そんなことを恥ずかしげもなく言ってきた。
彼には言葉遊びで勝てる気がしない。
どんないじわるな言葉を投げかけてもきっと彼は物怖じせず、返してくるだろう。
そんなところで教養の良さを表現してこなくても!と心の中で思う。
「では、人間も美しいですか?」
う~~ん、と彼は唸る。
少し答えに窮していたが、やがていい答えが思いついたのか、言葉を紡ぎだした。
「人間も美しいさ。あがけばあがくほど、輝いて見える」
「だけど、醜い人もいることは事実だ」
「そういう存在がいることを理解した上で、やっぱり人間も美しい」
「僕の考えは変かもしれないけど、あがいている人ほど美しい。何もしない方がみすぼらしいって思う」
面白い言葉が返ってきた。
きっと多分、芸術肌なのかもしれない。
そんな回答、普通の人からは飛び出てこない。
それが本心かはわからない。
あれだけいろんな、それこそ、いわゆる「汚い大人」とも何人も接してきただろう。
けれど、そういう考えをもっているというのはきっと本当のことなんだろうなぁって妙に納得した。
「おぼっちゃまは時々、不思議で面白いですね」
「そんな回答、誰も予想しませんよ」
「では私もあがいてみましょうかね」
いつしか、彼との会話を楽しむ自分がいた。
今度はどんな突拍子のない言葉が返ってくるのだろう?
そう期待する私がいたのだった。



