呪いをかけられている王女なのに専属護衛騎士に溺愛されています。

 マーレブラウ王国。
 この国は水産業が盛んで北側に位置するリーズィヒにあるゼーレ港は国内や他国の中でも港が大きいことで有名な港の一つでした。
 何隻かの帆船はゼーレ港に停船していたり、これから出港する帆船もあり出港準備のための備品確認や食料の補給などに漁師たちは追われている。
 ゼーレ港から届く潮の香りが朝から栄える市場まで風によって運ばれてくる。
 新鮮な色とりどりの魚が台に並んでいておじさん店主が、大きな声で魚を売っている。

 「安くて新鮮だよー!今朝、揚がったばかりの捕れたてだよ」

 朝から市場では沢山の人々がお目あての品(しな)を探しています。
 青々とした海の色は青色の宝石を散りばめたかのようにキラキラと輝き煌めいていたのでした。
 国が領海としている領域には、魚の餌となっている浮遊生物が多く生息しています。
 そのため、魚が大量に捕れる穴場の場所まであり旬の魚やここでしか捕ることのできない珍しい魚も捕ることが出来るのです。

 そんなマーレブラウ王国にある城は、他の城とは異なっていて、小島に浮かぶようにして建てられておりアイン城と名付けられた。
 城が建てられる前は、海に佇む岩山に城は建てられた。
 最初は小さな城であったが増築を繰り返し現在の形の城になった。
 他国の敵などから城を守るために造られた堅固な城壁が城の周りを囲んでいる。
 どのようにして城と町を行き来しているのかというと石畳で造られた頑丈な橋がある。 そのおかげで町と繋がることが出来ているのです。

 その頃、城内の中心部分にあたる居館の中で王族が暮らしている本館の隣にあるエデン館にある一室の部屋の周りの廊下では何やら朝から侍女や使用人達が慌ただしくしているではありませんか。
 なんとその部屋は王妃が使用している部屋なのでした。

 「布の用意をしておいて」
 「まだ、枚数が足りないわ。もう少しもってきておいて」
 「はい、用意しておきます」

 これからこの部屋で何かが始まるようです。

 数時間後、王妃の部屋では準備が整い、あとは事が進むのを侍女や使用人たちが固唾を飲んで見守っていたのでした。
 一方そんなこととは知らず陛下はその頃落ち着かない様子で執務室で業務を行っていたのでした。

 「陛下」
 「何だ」
 「王妃のことが気掛かりなのは充分承知しておりますが業務に集中なさってくださいませ」

 宰相であるガブリエルが陛下であるロビン・クラークに対して何度目かの催促をして若干の疲れが垣間見える。
 陛下が集中出来ない理由も理解しながらも残りの業務作業を進めてもらうように促す。
 陛下とガブリエルは年齢が近い。
 近いといってもガブリエルの方が陛下より年上なのだが、それもあってなのかがっしりとした頼もしい体つきに襟足が少し長く髪の毛の色は栗色で、緑の瞳、整った顔立ちで城内のなかにはガブリエルに憧れているものも多い。
 おまけに独り身というのもありそういわれているようだ。

 「わかっている」

 適当にガブリエルに返事をする。
 陛下はやはり集中出来ておらず、心ここにあらずの状態の中、陛下の思いが伝わったのか執務室の扉がノックされた。

 「失礼いたします」

 陛下は「入りなさい」と返答する。
 資料から素早く男性の侍従に視線を移すと侍従が部屋に入ってくるのも待ちきれないのが後ろ姿でもカブリエルに伝わってきた。

 男性は陛下の前までやってくるとお辞儀すると話し始める。

 「陛下、ご報告に参りました。さきほどおう……、」

 男性の侍従が連絡事項を話している途中にもかかわらず陛下は部屋を出て行ってしまう。

 「陛下ーー」

 男性の侍従は陛下の突然の行動に驚き、ガブリエルは陛下の名前を叫ぶと頭を抱えながらも侍従に下がるように伝えると陛下の後を追うのでした。
 それはまるで風のようであった。
 椅子から勢い良く立ち上がると執務室を出ていく。
 陛下は王妃がいるエンデ館に向かっていきます。
 本館の廊下を進んで、階段を二階分下ると本館とエンデ館を繋げている回路に差し掛かっていた。
 額には汗が出ていましが陛下はそんなことも気にせずに急ぎ足で回路を渡っていく。
 陛下はエンデ館の建物の中に入り、また階段を上ると、目的の部屋の周辺に近づくと速度を徐々に弱め歩き始める。
 いつの間にか後から遅れてやってきたガブリエルも到着し息を整えながら陛下の後ろを歩いていた。
 王妃のことで頭が埋め尽くされていて後にガブリエルがついてきていることに陛下は気が付かなかった。
 エンデ館にすでにふたりがいるとも知らず廊下には侍女や使用人たちが後片付けを行っていたのでした。
 足音に気付いた侍女と使用人たちは振り返り顔を確認すると一斉に並び二人に挨拶をする。

 「「「「おめでとうございます」」」」」

 ウエストコートの下に着ているドレスシャツはシワが寄ってしまい額には汗をかいた王の姿は他の人から見たら王としての相応しい姿ではないのであろう。
 しかし今ここに立っている姿は王ではなくロビン・クラークという一人の男性の姿なのであった。

 ドアの前、陛下は息を整えるとカブリエルがドアを開けてくれる。
 陛下は緊張の面持ちで足を踏み入れていく。

 「陛下」

 カブリエルはハンカチをそっと渡すと、陛下は額の汗を拭うとハンカチをカブリエルに返した。
 陛下は、ゆっくりと歩みを進めると「陛下、おめでとうございます」と乳母から祝いの言葉を送られる。

 それは陛下にとって待ちに待った誕生なのでした。
 ロビン・クラークという人物が置かれた状況をみれば理解できるのではないだろうか。
 ロビンの母親は生まれてすぐに亡くなり、先代の王である父親が病気のため早くに亡くなった。
 王子から王に二十代前半と若くしてなったためか周囲からの強い期待や助言という名の批判を沢山受けた。
 ロビンには兄弟はおらず助けてくれる人も彼の心を守ってくれる人も居なかった。   
 だからロビンは一人ぼっちになり色のない世界で過ごしていたのであった。
 でもある日、若き青年の前に一人の令嬢が現れて、それは彼にとって久しぶりに訪れた心休まる癒しの時間であり存在であった。
 その若き青年というのはロビンのことであり、それは突然の出来事でロビンの世界はいつしか色がある世界へと変わっていったのであった。
 のちにロビンとこの令嬢は結ばれ夫婦となった。
 だからロビンは陛下は幸せな家族という存在を強く求めていた。
 部屋に入ると王妃がベッドで休んでいます。

 「陛下」

 王妃がベッドから起き上がろうとすると陛下は優しい言葉で休むようにいいます。
 王妃から視線を移動させると王妃のベッドの近くには、小さなベッドには赤ん坊が眠っていました。
 乳母が小さなベッドから生まれたばかりの赤ん坊を抱き上げると王妃のベッドに赤ん坊を移動させ寝かせます。
 陛下はカブリエルに目配せすると、乳母と共に部屋を出ると部屋には三人きりになりました。
 陛下は王妃がいるベッドに腰掛けると、最愛の妻に感謝の言葉を伝えます。 

 「ありがとうアイリス」

 小さな手に小さな足、何もかもが小さくてこの瞬間さえも全て尊く感じる。

 「可愛らしいですね」
 「ああ、そうだね」

 陛下が赤ん坊の手に自身の親指を近づけるとぎゅっと小さな手が握ってくれる。
 赤ん坊は、時々あくびをする姿を見せる。
 二人は赤ん坊を見てから顔を見合わせると微笑みあい、そして誓ったのでした。

 「大切に、」
 「育てていきましょう」」

 微笑ましい幸せな穏やかな周りまでもが心があたたかくなるような時間が流れています。
 この日マーレブラウ王国に王女が誕生した。
 父ロビン・クラーク、母アイリス・クラークの両親のもとに生まれた。
 娘はリネア・クラークと名付けられ、城内の塔から見える青々とした海のような青色の瞳と黄金に近い金色の髪の毛がよく似合う美しく愛らしい女の子です。
 ─これからどんな風にリアネは大きくなっていくのでしょう。
 ただ何事もなく健康に幸せに育っていってほしいそれは誰もが望んだ願いなのでした。