扉を開けるといつもの席に佐伯さんが座っていた。
いつもは漫画を読んでいるけど、今日は空を眺めていた。
「お疲れ様」
と、ボソッと呟くように言った。
いつもの元気な佐伯さんじゃなく、あの時の佐伯さんだ。
「うん、お疲れ」
僕もいつもの窓際の席に座った。
自ずと佐伯さんの視線は空から、僕の方へと変わった。
少しの間気まずい沈黙が流れた。
結局何から話していいかまとまらなかったせいで、何も言葉が出てこなかった。
「ね、私から話していい?」
そんなとき、佐伯さんが口を開いた。
この沈黙を意に返さないかのような自然な口調で。
「前もって言っとくけど話し方、こっちが本当なんだ。今までのは作り物。だからあんまり気にしないで」
頷く前に佐伯さんは言葉を続けた。
「今日、悠真君牛乳握りつぶしたんだって?教室で噂になってたよ。で、その原因て私?それも噂になってたから。辻褄が合うんだよね。ね、なんで握りつぶしたの?」
あの時の佐伯さんよりかはマシだけど、やはりどこか僕を試している感じがする。
そんな相手にどんな話し合いをしたらいいかわからないけど、僕は自分の思っていることを話すしかない。
「多分佐伯さんと同じクラスの人かな?その人たちが佐伯さんに告白するって言ったんだ。体目当てで。それで気付けば握りつぶしてました」
「怒ったの?」
「多分」
「ふーん。ね、この前言った悠真君のことが好きってこと覚えてる?」
「……はい。でも、外見ですよね。僕はそんなことで好かれても嬉しくないです」
「ね、悠真君。あの時言ってたある人って中早先生のことでしょ?先生がどこまで知ってどこまで悠真君に話したかは知らないけど、それ全部じゃないよ。そういう話って当事者しか本当のことを知らないの。だから私はさっき、昼休みのことを悠真君に聞いたの。所詮噂に過ぎないから。ね、どこまで聞いたの先生から」
僕は中早先生から聞いた高校入学し、染谷君に告白され、そのあと何があったのかを佐伯さんに話した。
でも、中早先生が父親であるということは隠しておいた。
「やっぱり、噂止まりじゃない。悠真君今から全部話す。その話を聞いて、改めて私のことを考えて」
「ならどうしてあの時ちゃんと話してくれなかったんですか?あの時ちゃんと話してくれていたら、こんなことにもならなかったのに」
「それも話してから説明させてくれる?」
その言葉に僕は頷くことしかできなかった。
「染谷君はね、噂を訂正するって言ってくれたのよ。でも私はそれを断った。容姿がいいから性格も良いと思われることが多かったの。実際私は八方美人を演じてたから、性格も良かったの。でも、染谷君の一件以来私をそう言う目で見てくることはなかった。それがとても心地よかったの。自由に生きれている自分が。だからそのあとの私は本当に自由だった。おかげで一人にもなれたし。でも、そんなある日、君に一目惚れしたの。顔がタイプだったわ。でもそれだけじゃなかった。いくら転校生と言えど私のことは噂程度では知っているはずだけど、普通に接してくれて嬉しかった。それに悠真君私の目を見て話してくれるでしょ。最初は見た目から入ったけど、今はあなたの全てが好きなの」
どう答えたらいいかわからず。黙ってしまっていた。
色々情報量が多く、何から話したら良いかすらわからない。
でも、なぜか少し安心した自分がいた。
やっぱり佐伯さんは佐伯さんだったんだと。
「正直何を言えばいいかわからないです。でも良かったです。僕の思ってた佐伯さんのままででも、一つだけ聞いて良いですか?」
「ん?」
「どうして僕と話してた時はあんなふうな感じだんですか?今と全然違うじゃないですか」
佐伯さんの顔がどんどん赤くなっていった。
「……その方が悠真君のタイプかなって」
その状況に笑えてしまうのと同時に「かわい」と言葉を漏らしてしまっていた。
さらに佐伯さんの顔が赤くなっていく。
「そ、そんなことより!私は全てを話したけど、悠真君の気持ちはどうなの?今でも尊敬してるって逃げるの?」
「僕は佐伯さんのことを部活仲間だと思っていました。中早先生の話を聞いてそれは尊敬という形にも変わりました。でも、今全てを聞くとそれは少し違っていたんだと思います。僕も佐伯さんのことが好きです。なので、もしあの人たちに告白されるようなことがあるなら、絶対に断ってください」
「ふー」と佐伯さんは息を吐いた。その息にはきっと今までの全ての重みが込められているのだろう。
「もちろん。あんな人こっちから願い下げよ」
と、言った佐伯さんの顔は今までで一番綺麗な顔をしていた。
いつもは漫画を読んでいるけど、今日は空を眺めていた。
「お疲れ様」
と、ボソッと呟くように言った。
いつもの元気な佐伯さんじゃなく、あの時の佐伯さんだ。
「うん、お疲れ」
僕もいつもの窓際の席に座った。
自ずと佐伯さんの視線は空から、僕の方へと変わった。
少しの間気まずい沈黙が流れた。
結局何から話していいかまとまらなかったせいで、何も言葉が出てこなかった。
「ね、私から話していい?」
そんなとき、佐伯さんが口を開いた。
この沈黙を意に返さないかのような自然な口調で。
「前もって言っとくけど話し方、こっちが本当なんだ。今までのは作り物。だからあんまり気にしないで」
頷く前に佐伯さんは言葉を続けた。
「今日、悠真君牛乳握りつぶしたんだって?教室で噂になってたよ。で、その原因て私?それも噂になってたから。辻褄が合うんだよね。ね、なんで握りつぶしたの?」
あの時の佐伯さんよりかはマシだけど、やはりどこか僕を試している感じがする。
そんな相手にどんな話し合いをしたらいいかわからないけど、僕は自分の思っていることを話すしかない。
「多分佐伯さんと同じクラスの人かな?その人たちが佐伯さんに告白するって言ったんだ。体目当てで。それで気付けば握りつぶしてました」
「怒ったの?」
「多分」
「ふーん。ね、この前言った悠真君のことが好きってこと覚えてる?」
「……はい。でも、外見ですよね。僕はそんなことで好かれても嬉しくないです」
「ね、悠真君。あの時言ってたある人って中早先生のことでしょ?先生がどこまで知ってどこまで悠真君に話したかは知らないけど、それ全部じゃないよ。そういう話って当事者しか本当のことを知らないの。だから私はさっき、昼休みのことを悠真君に聞いたの。所詮噂に過ぎないから。ね、どこまで聞いたの先生から」
僕は中早先生から聞いた高校入学し、染谷君に告白され、そのあと何があったのかを佐伯さんに話した。
でも、中早先生が父親であるということは隠しておいた。
「やっぱり、噂止まりじゃない。悠真君今から全部話す。その話を聞いて、改めて私のことを考えて」
「ならどうしてあの時ちゃんと話してくれなかったんですか?あの時ちゃんと話してくれていたら、こんなことにもならなかったのに」
「それも話してから説明させてくれる?」
その言葉に僕は頷くことしかできなかった。
「染谷君はね、噂を訂正するって言ってくれたのよ。でも私はそれを断った。容姿がいいから性格も良いと思われることが多かったの。実際私は八方美人を演じてたから、性格も良かったの。でも、染谷君の一件以来私をそう言う目で見てくることはなかった。それがとても心地よかったの。自由に生きれている自分が。だからそのあとの私は本当に自由だった。おかげで一人にもなれたし。でも、そんなある日、君に一目惚れしたの。顔がタイプだったわ。でもそれだけじゃなかった。いくら転校生と言えど私のことは噂程度では知っているはずだけど、普通に接してくれて嬉しかった。それに悠真君私の目を見て話してくれるでしょ。最初は見た目から入ったけど、今はあなたの全てが好きなの」
どう答えたらいいかわからず。黙ってしまっていた。
色々情報量が多く、何から話したら良いかすらわからない。
でも、なぜか少し安心した自分がいた。
やっぱり佐伯さんは佐伯さんだったんだと。
「正直何を言えばいいかわからないです。でも良かったです。僕の思ってた佐伯さんのままででも、一つだけ聞いて良いですか?」
「ん?」
「どうして僕と話してた時はあんなふうな感じだんですか?今と全然違うじゃないですか」
佐伯さんの顔がどんどん赤くなっていった。
「……その方が悠真君のタイプかなって」
その状況に笑えてしまうのと同時に「かわい」と言葉を漏らしてしまっていた。
さらに佐伯さんの顔が赤くなっていく。
「そ、そんなことより!私は全てを話したけど、悠真君の気持ちはどうなの?今でも尊敬してるって逃げるの?」
「僕は佐伯さんのことを部活仲間だと思っていました。中早先生の話を聞いてそれは尊敬という形にも変わりました。でも、今全てを聞くとそれは少し違っていたんだと思います。僕も佐伯さんのことが好きです。なので、もしあの人たちに告白されるようなことがあるなら、絶対に断ってください」
「ふー」と佐伯さんは息を吐いた。その息にはきっと今までの全ての重みが込められているのだろう。
「もちろん。あんな人こっちから願い下げよ」
と、言った佐伯さんの顔は今までで一番綺麗な顔をしていた。


