見た目(仮)が好きです。

気づいたら朝になっていた。
「頭が重い……」
 昨日のことは夢だったんじゃないかと思いたいが、制服を着ているということが、昨日のことが夢ではなかったということを知らしめている。
『学校、行きたくないな』
 そんなことを考えながら、登校準備を済ませた。
 学校へ着くやいなや僕は中早先生に捕まった。
「おーい伊藤。こっちこっち」
 木陰でコソコソこっちを呼ぶ中早先生に。
「で、どうだった?」
「頼まれた用紙は渡しました」
「おー。それはよかった。サンキューな。で、その後は?」
 昨日の記憶が鮮明に蘇ってくる。
「親でもある先生に言いたくはないですが、最悪でしたよ。あんな人だとは思わなかったです」
 ほんとは言ってはいけないことだとわかっていた。でも、昨日何も言えなかったせいか、気づくと口に出してしまっていた。
「な、何かあったのか?」
 一瞬驚いた先生はすぐに心配そうな顔になる。
 本当に親子なのかと疑うほどの差を感じてしまう。
「いえ、何もありません。それじゃ」
 とだけ告げ、急ぎ足でその場を離れようとした。
「あ、あいつは悪い奴じゃないんだ。本当に……だからわかってやってくれ」
 わかってたんだ。そう思っていたんだ。でも、違ったんだよあんたの娘は。
 だからこんなにもむしゃくしゃするんだ。「……だったらあなたが説得してくださいよ。あの人のことを一番わかってるんでしょ!?」
 大声を出してしまったせいで、周囲の生徒の視線が僕と先生に向けられた。
 でも、そんな視線を顧みずに先生は口を開いた。
「俺が説得したとして、お前は満足するのか?だったら俺も説得する。でもそうじゃないだろ?」
「むり……です」
「だから頼む。なんとかしてやってくれ」
 生徒からの視線はさっきまでよりは減っているが、ちらほらとある。
 が、先生はそんなことも鑑みずに、頭を深々と下げた。
「なんとかする。の解決策は全くわかりませんが、自分なりにやってみます」
 そう言い残し、僕はその場を離れた。
 自ずと生徒からの視線も解放された。
  
 授業のことが何も頭に入らないくらい僕の頭は佐伯さんのことでいっぱいだった。
 違和感、不快感、嫌悪感様々な感情が渦を巻いて頭の中をぐちゃぐちゃにする感覚だ。
 そんなことを考えていると、気付けば昼休みになっていた。
 昼休み、僕はいつも購買でパンを買っているが、今日は食欲がなく自販機に牛乳だけ買いにいった。
 自販機にお金を入れ、牛乳を取り出し口から牛乳を取り出した時、聞き慣れた名前がどこからか聞こえてきた。
「俺、佐伯に告ろうかな」
 心臓が強烈に反応し、鼓動が止まらなくなった。
「えー、なんでだよ。あいつどんな奴に告られてもみんな玉砕してんだぜ。やめとけよ」
「いやあんな美人と一発やりたいじゃん。あの胸も揉んでみていし」
 グチャッ!
 その言葉を聞いた瞬間、僕は手に持っていた牛乳を握りつぶしていた。
 佐伯さんのことだ。あんな奴気にも止めないだろうけど、佐伯さんのことをそうゆう目的でしかみてない人を見ると、自分でも信じられないくらいイライラした。
 教室に戻り、カバンからスマホを取り出して佐伯さんにメールを送った。
 たとえ大丈夫だとしても、少しでも佐伯さんに嫌な思いをしてほしくないから。
 送ると、すぐに返信が来た。
『放課後、部室で』
 その文だけで、僕は十分だった。
 
 放課後
 放課後までの時間は本当に一瞬だった。
 話すこと、話し始め、どう言おうか、何を言いたいのか。
 午前中までとはまた違った内容が頭の中をかき乱してきた。
 とは言っても、時間は永久じゃなく気付けば放課後になっていた。
 重たい足取りで部室に向かう。
 結局何もまとまらないまま、部室に来てしまった。
 扉に手を添えると、少し扉が開いていた。
 佐伯さん、もう来てるんだ。
 一呼吸おき、僕は扉を開けた。