あれから数日が過ぎたが佐伯さんは部室に現れない。
でも、連絡は来る。
バイトや急用そして今日は『体調が悪い』
怪しい、怪しく思いたくないけど怪しく感じてしまう。
理由は明白、あの日の最後の佐伯さんの言葉。
『好きだよ。友達として』
もちろんあの言葉の真意は僕も気になる。気になるからこそ、会う日を楽しみにしてたのに、なかなか会えない。
そして今日もーーー
このままだとまずい。なんとかしないと。
コンコン
と、そんな考え事をしている最中珍しく部室の扉がノックされた。
「すまん、ちょっといいか」
この声、確か佐伯さんのクラス担任の中早先生だ。
「あ、はいどうぞ」
「悪いな、あれ佐伯は?」
「今日は体調不良でお休みですよ。佐伯さん」
「あ、そうなのか。困ったな」
中早先生は頭をぽりぽりと書いた。
片方の手には一枚の紙が握られてる。
「それ、佐伯さんのですか?」
「ん?ああ。そうなんだ」
中早先生は机の上に一枚の紙を置いた。
内容は『進路希望調査書』
「これ、今日提出のやつでな。よりによってあいつ机の上に置いて、どっか行っちまったんだ。部室かと思ったんだが……休みか」
「くそ、どうすっかな」
先生は再び頭をかき始め、眉間に皺を寄せた。
「僕が持っていきましょうか?佐伯さんの家確か隣駅だったんで」
「お、まじか!じゃあお願いしてもいいか?俺今から職員会議でよ、すまねーな」
本当に職員会議間際なのか、言い終えると先生は急ぎ足で部室の扉まで向かった。
「あ、そうだ伊藤。おそらく佐伯ズル休みだぞ」
「え?そうなんですか?」
「ああ、だって今日元気そうだったからな。あと、最近あいつ様子おかしいけど、何かあったのか?」
「え、どうして僕に聞くんですか?」
僕以外に仲がいい人なんていくらでもいるはずなのに。
「伊藤は確か転校生だったよな」
「はい、二年の頭からです」
「だったらあいつの話も知らないか……自分から話すやつでもないしな」
段々と声が小さくなっていく先生。
何か聞いてはいけない気もしなくはないが、聞いておかないといけないような気もする。
「先生、そのまま職員会議には行かないでくださいね」
「話せってことか……」
「お願いします」
「へいへい」
諦めたのか先生はいつもは佐伯さんが座っている椅子に「よっこいしょ」と言いながら腰掛けた。
「俺から聞いたとは言うなよ」
「はい」
珍しく真剣な顔をしている中早先生に自分の顔も思わずこ強張ってしまう。
「佐伯がモテるのは知ってるよな?」
「はい。確かこの前も告白されたって言ってました」
「またかよ、すげーなあいつも」
「今から話すのはこの話に必要だから話すけど、他意はないから、そこだけ頼むぞ」
ここまで先生が気を配ると言うことはそれほどのことなんだろう。
僕は黙って頷いた。
「よし。はっきり言うがあいつはモテるんだ。容姿がいいからな。入学当初は男女問わず大人気だったんだ。女子には囲まれ男子には告白されるという、この世の縮図みたいになっててたんだ」
「それだけ聞くと順風満帆そうですけど?」
「まあな。そんな日が続いたある日。染谷というこいつもまあモテるやつでな、そいつが佐伯に告白したんだ。周りは大騒ぎでその噂は学校中に広がったんだが、佐伯は染谷の告白を断ったんだ。『好きな人がいる』って言ってな。でも、染谷が食い下がらず、しつこく断った理由を聞いたみたいでな。その時のやつの顔が怖くて思わず『顔が無理』と言ってしまったらしく。その部分だけ切り取られ噂になり、佐伯は周りから除け者にされ、ひとりぼっちになったという訳だ」
「え、でも今の話だと染谷さんが誤解を解けばいいじゃないですか、どうしてそんな」
染谷さんがその誤解を解き正直に話せば、佐伯さんも一人にならなかったはず。
「伊藤。世の中、お前みたいないい奴ばかりじゃないんだ。自分の評価を下げるような真似を振った女のためにやれるやつが、告白に失敗したからって豹変するようなやつがすると思うか?」
「……思わないです」
「だろ、それにこの話も噂ぐらいでは聞いたこともあるだろう。でもお前はそれでも佐伯と仲良くやっている。おそらくあいつの様子が変なのも告白だけじゃないだろう。そこは聞かないでおいてやる。ただ、一つだけわかっておいてやってほしいことがある。あいつは勘違いされやすいが、めちゃくちゃいいやつだ。だから、佐伯のことを頼む」
深々と頭を下げる中早先生。
「ど、どうして先生がそこまでするんですか?」
一教師と生徒なのにどうしてここまでするんだ。
それにどうして佐伯さんのことに対してこんなに詳しいんだろう。いくら担任だといえ。「親権は元妻なんだが、佐伯は俺の娘なんだ」
「な、なら先生が話すべきじゃないですか父親として、教師として!」
「俺じゃダメなんだ。俺が入ってしまうとあいつのためにならないんだ。だから頼む」
さらに頭を下げる。
頭を下げてるせいでほとんど顔は見えないけど、どことなく佐伯さんの雰囲気だ。
先生と親両方に頼まれたら、断れるわけでもない。
「僕なりに頑張ってみます」
そういうと先生は顔を上げ安堵していた。
その顔はやはり佐伯さんに似ていた。
でも、連絡は来る。
バイトや急用そして今日は『体調が悪い』
怪しい、怪しく思いたくないけど怪しく感じてしまう。
理由は明白、あの日の最後の佐伯さんの言葉。
『好きだよ。友達として』
もちろんあの言葉の真意は僕も気になる。気になるからこそ、会う日を楽しみにしてたのに、なかなか会えない。
そして今日もーーー
このままだとまずい。なんとかしないと。
コンコン
と、そんな考え事をしている最中珍しく部室の扉がノックされた。
「すまん、ちょっといいか」
この声、確か佐伯さんのクラス担任の中早先生だ。
「あ、はいどうぞ」
「悪いな、あれ佐伯は?」
「今日は体調不良でお休みですよ。佐伯さん」
「あ、そうなのか。困ったな」
中早先生は頭をぽりぽりと書いた。
片方の手には一枚の紙が握られてる。
「それ、佐伯さんのですか?」
「ん?ああ。そうなんだ」
中早先生は机の上に一枚の紙を置いた。
内容は『進路希望調査書』
「これ、今日提出のやつでな。よりによってあいつ机の上に置いて、どっか行っちまったんだ。部室かと思ったんだが……休みか」
「くそ、どうすっかな」
先生は再び頭をかき始め、眉間に皺を寄せた。
「僕が持っていきましょうか?佐伯さんの家確か隣駅だったんで」
「お、まじか!じゃあお願いしてもいいか?俺今から職員会議でよ、すまねーな」
本当に職員会議間際なのか、言い終えると先生は急ぎ足で部室の扉まで向かった。
「あ、そうだ伊藤。おそらく佐伯ズル休みだぞ」
「え?そうなんですか?」
「ああ、だって今日元気そうだったからな。あと、最近あいつ様子おかしいけど、何かあったのか?」
「え、どうして僕に聞くんですか?」
僕以外に仲がいい人なんていくらでもいるはずなのに。
「伊藤は確か転校生だったよな」
「はい、二年の頭からです」
「だったらあいつの話も知らないか……自分から話すやつでもないしな」
段々と声が小さくなっていく先生。
何か聞いてはいけない気もしなくはないが、聞いておかないといけないような気もする。
「先生、そのまま職員会議には行かないでくださいね」
「話せってことか……」
「お願いします」
「へいへい」
諦めたのか先生はいつもは佐伯さんが座っている椅子に「よっこいしょ」と言いながら腰掛けた。
「俺から聞いたとは言うなよ」
「はい」
珍しく真剣な顔をしている中早先生に自分の顔も思わずこ強張ってしまう。
「佐伯がモテるのは知ってるよな?」
「はい。確かこの前も告白されたって言ってました」
「またかよ、すげーなあいつも」
「今から話すのはこの話に必要だから話すけど、他意はないから、そこだけ頼むぞ」
ここまで先生が気を配ると言うことはそれほどのことなんだろう。
僕は黙って頷いた。
「よし。はっきり言うがあいつはモテるんだ。容姿がいいからな。入学当初は男女問わず大人気だったんだ。女子には囲まれ男子には告白されるという、この世の縮図みたいになっててたんだ」
「それだけ聞くと順風満帆そうですけど?」
「まあな。そんな日が続いたある日。染谷というこいつもまあモテるやつでな、そいつが佐伯に告白したんだ。周りは大騒ぎでその噂は学校中に広がったんだが、佐伯は染谷の告白を断ったんだ。『好きな人がいる』って言ってな。でも、染谷が食い下がらず、しつこく断った理由を聞いたみたいでな。その時のやつの顔が怖くて思わず『顔が無理』と言ってしまったらしく。その部分だけ切り取られ噂になり、佐伯は周りから除け者にされ、ひとりぼっちになったという訳だ」
「え、でも今の話だと染谷さんが誤解を解けばいいじゃないですか、どうしてそんな」
染谷さんがその誤解を解き正直に話せば、佐伯さんも一人にならなかったはず。
「伊藤。世の中、お前みたいないい奴ばかりじゃないんだ。自分の評価を下げるような真似を振った女のためにやれるやつが、告白に失敗したからって豹変するようなやつがすると思うか?」
「……思わないです」
「だろ、それにこの話も噂ぐらいでは聞いたこともあるだろう。でもお前はそれでも佐伯と仲良くやっている。おそらくあいつの様子が変なのも告白だけじゃないだろう。そこは聞かないでおいてやる。ただ、一つだけわかっておいてやってほしいことがある。あいつは勘違いされやすいが、めちゃくちゃいいやつだ。だから、佐伯のことを頼む」
深々と頭を下げる中早先生。
「ど、どうして先生がそこまでするんですか?」
一教師と生徒なのにどうしてここまでするんだ。
それにどうして佐伯さんのことに対してこんなに詳しいんだろう。いくら担任だといえ。「親権は元妻なんだが、佐伯は俺の娘なんだ」
「な、なら先生が話すべきじゃないですか父親として、教師として!」
「俺じゃダメなんだ。俺が入ってしまうとあいつのためにならないんだ。だから頼む」
さらに頭を下げる。
頭を下げてるせいでほとんど顔は見えないけど、どことなく佐伯さんの雰囲気だ。
先生と親両方に頼まれたら、断れるわけでもない。
「僕なりに頑張ってみます」
そういうと先生は顔を上げ安堵していた。
その顔はやはり佐伯さんに似ていた。


