道に背を向けて、店の表を掃き掃除していると、「あの」と言う声が耳に届く。
声の主を振り返ったおれは、小躍りしたいくらい、嬉しくなった。
「浅黄。来てくれたんだ」
おれの方を見ていた浅黄が、手にしたチケットに視線を落とす。
「ビリヤードって何ですか」
「え。そこから?」
おれが驚くと、浅黄は「聞いた事の無い単語なので……」と、おれの反応を不思議がるように首を傾げる。
「とりあえず、店に入ってよ。やってみたら面白いから」
浅黄を連れて店内に足を踏み入れると、店長が駆けつけて来た。
「鴇の知り合い? めちゃくちゃ可愛いね」
浅黄が店長から目を逸らす。
容姿を褒められても、浅黄は嬉しくないようだ。
「店長は可愛い子には目が無いから」
おれが店長を見ながら笑うと、店長は浅黄の手を取り、「おれが教えてあげる」とビリヤード台の前に浅黄を案内し始める。
平均より背の高い店長と並んでも、浅黄の身長は低く見えない。
店長が浅黄にビリヤードを教えてくれるなら、おれに出る幕は無い。女の子に優しくするのが当たり前の店長と二人にされても、浅黄は、そう嫌な思いはしないだろう。
浅黄の周りに群がる男数人が気になったけれど、店長が居るんだから、いきなり乱暴な扱いを受ける事は無い気がする。
そう言えば、あの男たちの名前を知らないなと考えながら、店の倉庫に向かい、掃除用具を仕舞っていると、チリトリを表に忘れた事に気づく。
裏口から店の表に出て、チリトリを回収した後、同じ出入り口から店の中に入ったら、店長が倉庫で嬉しそうにスマートフォンを見ている。
「なんか良い事でも有ったんですか」
「浅黄ちゃんの連絡先、聞いたら教えてくれた」
スマートフォンを操作しながら「本当に可愛い子だね。浅黄ちゃん」と微笑む店長に返答するのも忘れて、おれは自分のロッカーを開け、スマートフォンを取り出した。
「おれも聞いてみよう」
初対面の店長に連絡先を教えてくれるなら、自分にも教えてくれるかもしれないと思ったので、店内に居る浅黄を探す。
「……帰ったのかな」
浅黄の姿が見当たらず、考えた事を口にすると、いつの間にか、おれの後ろに居た店長が「男の子達と出て行った」と店の表を指さす。
「もう少し遊んで行かない? って聞いたけど、浅黄ちゃんは、あいつらと遊ぶから、もう今日はいいって……」
嫌な予感がした。浅黄の周りに居た男達は、女性に対して紳士的ではない。
「探して来ます」
店長に告げて、店の外に向かって走った。
間に合ってくれと祈りながら。
声の主を振り返ったおれは、小躍りしたいくらい、嬉しくなった。
「浅黄。来てくれたんだ」
おれの方を見ていた浅黄が、手にしたチケットに視線を落とす。
「ビリヤードって何ですか」
「え。そこから?」
おれが驚くと、浅黄は「聞いた事の無い単語なので……」と、おれの反応を不思議がるように首を傾げる。
「とりあえず、店に入ってよ。やってみたら面白いから」
浅黄を連れて店内に足を踏み入れると、店長が駆けつけて来た。
「鴇の知り合い? めちゃくちゃ可愛いね」
浅黄が店長から目を逸らす。
容姿を褒められても、浅黄は嬉しくないようだ。
「店長は可愛い子には目が無いから」
おれが店長を見ながら笑うと、店長は浅黄の手を取り、「おれが教えてあげる」とビリヤード台の前に浅黄を案内し始める。
平均より背の高い店長と並んでも、浅黄の身長は低く見えない。
店長が浅黄にビリヤードを教えてくれるなら、おれに出る幕は無い。女の子に優しくするのが当たり前の店長と二人にされても、浅黄は、そう嫌な思いはしないだろう。
浅黄の周りに群がる男数人が気になったけれど、店長が居るんだから、いきなり乱暴な扱いを受ける事は無い気がする。
そう言えば、あの男たちの名前を知らないなと考えながら、店の倉庫に向かい、掃除用具を仕舞っていると、チリトリを表に忘れた事に気づく。
裏口から店の表に出て、チリトリを回収した後、同じ出入り口から店の中に入ったら、店長が倉庫で嬉しそうにスマートフォンを見ている。
「なんか良い事でも有ったんですか」
「浅黄ちゃんの連絡先、聞いたら教えてくれた」
スマートフォンを操作しながら「本当に可愛い子だね。浅黄ちゃん」と微笑む店長に返答するのも忘れて、おれは自分のロッカーを開け、スマートフォンを取り出した。
「おれも聞いてみよう」
初対面の店長に連絡先を教えてくれるなら、自分にも教えてくれるかもしれないと思ったので、店内に居る浅黄を探す。
「……帰ったのかな」
浅黄の姿が見当たらず、考えた事を口にすると、いつの間にか、おれの後ろに居た店長が「男の子達と出て行った」と店の表を指さす。
「もう少し遊んで行かない? って聞いたけど、浅黄ちゃんは、あいつらと遊ぶから、もう今日はいいって……」
嫌な予感がした。浅黄の周りに居た男達は、女性に対して紳士的ではない。
「探して来ます」
店長に告げて、店の外に向かって走った。
間に合ってくれと祈りながら。
