しあわせになる方法

 一軒家の玄関口でドアベルを鳴らすと、インターホン越しに応じてくれた砂子が、おれの姿に気づいて家の外に出て来る。
 謝罪をし、感謝の言葉を伝えると、始めは険しかった砂子の表情が、少しずつ、付き合っていた頃のような穏やかなものに変わった。
 砂子に「幸せになってほしい」と伝えて、帰ろうとすると、砂子に引き留められる。
「お茶ぐらいなら出すけど、上がって行かない?」
 もう少し話がしたいという砂子は「鴇の口から『ごめん』とか『ありがとう』って言葉が出て来ると思わなかった」と、おれを見る。
「ありがとう。でも、この後、会って、謝りたい人が居るんだ」
 おれに視線を向けたままの砂子が「ケンカした相手?」と聞いてくる。
 頬が腫れた原因を砂子には話していないが、人から見ると、まだ普段のおれの顔とは違うのかもしれない。
「違うけど、相手が許してくれるなら、友達になりたいと思ってる」
「……本当に変わったね」
 自分が変わったかなんて、自分では分からない。でも、最低なおれを見て来た砂子が変わったと言うなら、少しは変われたのかもしれない。
 もう一度、砂子にお礼を言って、じっと見て来る彼女に「じゃあ」と伝えた。
 別れるまで一緒に居てくれて、今日、話を聞いてくれた彼女は優しい。
 やり直したいという自分勝手な気持ちを自覚しながら、何が有ろうと自分は自分を許してはいけないのだと思い直し、砂子の自宅を後にした。