猫と紙飛行機。


 昨日から降り続いた雨のお陰か、とても空気の澄んだ朝だった。
 いつもより早く家を出たわたしは水溜まりを避けて、学校と反対方向へと向かう。
 結局、答えは出なかった。だけど、一人で考えても答えがないことがわかっただけ上出来だ。
 正解がないなら、無理になにかに当て嵌める必要はない。ヒカリと一緒に、見つけていけばいい。
「大丈夫……ヒカリのことは、わたしが必ず救ってみせるから」
 救われたいなんて、ヒカリは願ってないかもしれない。だからこれは、わたしの願いだ。
 何をもって救いとするかも、わからない。紙飛行機みたいにくるくる回り落ちる思考は、めじるしアクセサリーのように揺れる心は、いつまでも昨日の雨みたいに止まらないかもしれない。
 けれども、どんなかたちであれ、ちゃんと向き合うことだけは決めたのだ。
「この先にある苦しみは、あの頃のわたしと……同じで、違う。何が正解かは、わかんないけど……」
 何度か深呼吸をして、笑顔を作る。かつて先生も、こんな気持ちだったに違いない。不安や焦りは伝染するから、せめて明るく振る舞おうとしてくれていたんだろう。あの頃気付けなかった優しさも、今ならわかる。
「大丈夫……今日がダメでも、何度だって……」
 ヒカリの家の前に立ったわたしは、そう自分に言い聞かせながら、わずかに震える指先でインターホンを押した。