不完全な正解(ぼくら)

四月。
去年までと同じ道を、今年も歩く。

一年前に戻れたらいいのに。
そしたら止められたのに。
こんな想いもしないですんだのに。
考えたってどうすることもできないものが、ずっと頭の中を堂々巡りしていた。

高校最後の年が、わたしを置いて歩き始めている。
放課後の教室には笑い声が響いていて、窓の外には去年と同じように桜が咲いていた。

何も変わっていない。

私の周りは変わっていない。
部活の友だちが仲良くしてくれてるし、クラスメイトからは励まされたりもした。
でも、どこかぽっかりと穴があいて、全部が違うように感じた。

この気持ちはなんなの。


私は、玲華が今、どこで何をしているのか知らない。
私がしたことは、玲華を苦しめることになった。
私は今でもどうすればよかったのか分からない。
あのとき、先生に何も話さなければよかったのかな。
それで、玲華は幸せになれていたのかな。
取り返せない過去を何度考えたことか。

私は玲華のことを、何でも知っているつもりだった。
でも、本当の肝心な部分は何も知らなかった。

玲華がどんな毎日を過ごしていたのかも。
どれだけ苦しかったのかも。
私のことを、どんなふうに見ていたのかも。
自分だけが親友だと思っていた。
今考えればわからないことばかりだ。

私たちは同じ時間を過ごしてたけど、実際は互いの見えていない世界を生きていた。

でも、玲華と過ごした時間まで、嘘だったとは思いたくなかった。
一緒に笑ったことも、くだらない話をしたことも、何でもない日に隣にいてくれたことも。
それは全部、本当だったから。

だからこそ、苦しかった。
あのときの私は、間違っていたのだろうか。
玲華のことを無意識に傷つけていたのかもしれない。
今でも、わからない。
きっと、何年経っても、はっきりした答えなんてわからない。

窓の外で、桜の花びらがひとつ、風に飛ばされていった。

時間は戻らない。
玲華と過ごした日々も、あの日のことも、なかったことにはできない。
それでも、明日は来る。
私がどれだけ後悔していても。
私がまだ、あの日から抜け出せずにいても。
高校最後の一年は、とっくに進みだしている。

答えは、まだ見つからない。
それでも、いつか。
この出来事を、間違いじゃなかったとは思えないけど、ちゃんと自分の中で受け止められる日が来たら――。

窓の外では、春の風が桜の枝を揺らしていた。
花びらは、次々と宙に放り出されていく。


「助けたいと思うこと」と「相手を救えること」は同じではない。だからといって、誰かを助けたいと願う気持ちは偽善にはならない。

もし、あのときに戻れたなら。
今度こそ、違う言葉 |《正解》を選べるだろうか。