拝啓、最愛の君へ。

翔の亡骸を見てからちょうど12時間が経った。

翔がいなくても、時は進む。
風呂に入って、ろくに味のしないご飯を食べて特に何も出来ずにいた。

すると突然、部屋の扉が遠慮がちにノックされた。

「洸。翔ちゃんママが来てるわ。渡したい物があるらしいの。」

ノックと同じく遠慮がちに開かれた扉から母が顔を覗かせていた。

「わかった。今行く。」

少し急いで階段を下ると目を腫らしたおばさんが玄関に立っていた。

「洸君。こんな時間にごめんなさい。今日は翔に会いに来てくれてありがとうね。」

自分も辛いだろうに無理して笑顔をつくるおばさんの顔は見ていて胸が苦しかった。

「はい。渡したいものって??」

「これ。もともと書いてたみたいなの。最期の翔の気持ち受け取ってあげてくれないかしら。」

そう言うおばさんの手には一通の手紙のようなものが握られていた。

「これって、、、」

「あの子が遺した遺書よ。」

「ありがとうございます。受け取ります。」
遺書と聞いて驚いたけど、愛叶ちゃんの死を経験した翔ならありえると妙に納得してしまった。

そう答えるとおばさんはついに泣き崩れてしまった。

「愛叶も翔も、洸君の事が大好きだったの。だから、どうか忘れないであげてね。」

「はい。俺も2人のこと大好きです。忘れる事なんてないですから。」

おばさんは隣の家に帰って行った。

部屋に戻って手紙を開ける。
書かれた日にちは今年の俺の誕生日だった。

「翔のやつ。人の誕生日になんてもん書いてるんだ。」

翔の文字を指でなぞる。
はねが大きくてひらがなは小さめ。よく見慣れた字。

最後の一行目まで読み終わって顔を上げる。

ちょうど顔を上げた先には今年の誕生日2人でとった写真が置いてあった。

「くうっ、くっくっ、ううっ、うっうっ」
写真の中の翔はいつもと同じ顔で微笑んでいた。
昨日まで見ていたはずなのに、もう会って見る事はできない表情。そう思うと涙が止まらなかった。

「お前が居ないのに幸せになんてなれるわけないだろ。
 俺を幸せにしたいならお前がそばに居ろよ。」

こんなこと言ってもしょうがないのは分かってる。
だけど言わずには居られなかった。

「俺が、お前のことたまにしか思い返さない訳ないだろ。1分1秒たりとも忘れねぇよ。」

翔の書いた最後の手紙が涙で湿っていく。
やばいと思って一度横に置いてふと空を見る。

空には天の川が広がっていた。

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