春、4月。
わたしたち高校生にとって、春はこれからの1年が天国になるか、地獄になるかが決まる。1年の中で1番大事な季節と言ってもいい。
わたしの1番の親友、愛依(めい)と同じクラスというのは事前に学校のサイトで確認済みだ。わたしはその事実にわくわくとしながら2年4組の教室へと足を踏み入れた。
「おはようー!」
「あ、茉由。おはよ」
顔見知りの子たちと挨拶を交わしていく。愛依の姿はまだない。愛依はいつも早いのに。おかしいな、と思いスマホのメッセージアプリを開く。
『めいおはよ!もう2年生だね!』
わたしが朝起きてすぐに送ったメッセージ。既読はまだついていない。既読は早い方ではないけれど、この時間になって1度も返信がないのはおかしい。
「まあ、でも愛依もたまには寝坊くらいするよね」
わたしは気にせず待つことにした。
教室はざわざわと騒がしい。新学期の初登校日にしてもちょっとうるさすぎる気がする。おかしいな。
今日は愛依のことといい、おかしいことが多いような。
わたしが思考をぐるぐると巡らせていると、突然教室前方のドアがガラガラと音を立てて開く。かなり強く力を入れたような音だった。
「島村(しまむら)さん!島村茉由(しまむらまゆ)さんー!いるー?」
大声を上げながら教室に入ってきたのは去年学年主任だった女の先生。たしか、藤森(ふじもり)先生だ。
…というか、島村茉由って…
「はい!島村です!」
予想してないところからいきなり自分の名前を呼ばれ反応が遅れてしまった。教室中で談笑していたクラスメイトたちの視線が一斉にわたしへと集まる。
「ちょっと、私と一緒に職員室へ行きましょう」
「あ、はい…」
返事をしたはいいが、不安に駆られて怖くなる。学校のサイトによると、今年も藤森先生が学年主任のはずだ。新年度早々、学年主任の先生に呼び出される心当たりはまったくない。嫌な予感がわたしの体中を駆け巡る。わたしの不安をよそに先生はスタスタと早歩きで進んでいく。
先生に連れて行かれたのは、相談室と呼ばれる校舎の隅にある小さい部屋だった。
入るのは初めてだが、週に1度スクールカウンセラーの先生が来校し、ここでカウンセリングを行うというのは知っていた。
部屋に入ると、大勢の大人たちがわたしを出迎えた。
去年の担任、校長、教頭、養護教諭、生徒指導の先生、あとは知らないおじさんが2人。
「じゃあ、島村さん。あなたはここに座って」
と藤森先生に入り口から1番近い席を指した。
わたしが席に座ると、去年担任だった若い男性教諭、秋山(あきやま)先生が口を開いた。
「まず単刀直入に訊きますね。島村さんは桜木(さくらぎ)愛依さんと仲が良かったですね?」
なぜここに呼ばれたのかも、なぜいきなり愛依の名前が出てくるのかもわからないまま、だけど躊躇なく頷く。普段から聞いて慣れ親しんでいる秋山先生の声が、どこか他人行儀に聞こえた。
「あの…、なんで今愛依の名前が?というかなぜわたしを?」
先生たちは誰もわたしの問いには答えない。秋山先生は気にせず続ける。
「島村さん。単刀直入に言いますが、桜木さんは…亡くなったそうです」
わたしたち高校生にとって、春はこれからの1年が天国になるか、地獄になるかが決まる。1年の中で1番大事な季節と言ってもいい。
わたしの1番の親友、愛依(めい)と同じクラスというのは事前に学校のサイトで確認済みだ。わたしはその事実にわくわくとしながら2年4組の教室へと足を踏み入れた。
「おはようー!」
「あ、茉由。おはよ」
顔見知りの子たちと挨拶を交わしていく。愛依の姿はまだない。愛依はいつも早いのに。おかしいな、と思いスマホのメッセージアプリを開く。
『めいおはよ!もう2年生だね!』
わたしが朝起きてすぐに送ったメッセージ。既読はまだついていない。既読は早い方ではないけれど、この時間になって1度も返信がないのはおかしい。
「まあ、でも愛依もたまには寝坊くらいするよね」
わたしは気にせず待つことにした。
教室はざわざわと騒がしい。新学期の初登校日にしてもちょっとうるさすぎる気がする。おかしいな。
今日は愛依のことといい、おかしいことが多いような。
わたしが思考をぐるぐると巡らせていると、突然教室前方のドアがガラガラと音を立てて開く。かなり強く力を入れたような音だった。
「島村(しまむら)さん!島村茉由(しまむらまゆ)さんー!いるー?」
大声を上げながら教室に入ってきたのは去年学年主任だった女の先生。たしか、藤森(ふじもり)先生だ。
…というか、島村茉由って…
「はい!島村です!」
予想してないところからいきなり自分の名前を呼ばれ反応が遅れてしまった。教室中で談笑していたクラスメイトたちの視線が一斉にわたしへと集まる。
「ちょっと、私と一緒に職員室へ行きましょう」
「あ、はい…」
返事をしたはいいが、不安に駆られて怖くなる。学校のサイトによると、今年も藤森先生が学年主任のはずだ。新年度早々、学年主任の先生に呼び出される心当たりはまったくない。嫌な予感がわたしの体中を駆け巡る。わたしの不安をよそに先生はスタスタと早歩きで進んでいく。
先生に連れて行かれたのは、相談室と呼ばれる校舎の隅にある小さい部屋だった。
入るのは初めてだが、週に1度スクールカウンセラーの先生が来校し、ここでカウンセリングを行うというのは知っていた。
部屋に入ると、大勢の大人たちがわたしを出迎えた。
去年の担任、校長、教頭、養護教諭、生徒指導の先生、あとは知らないおじさんが2人。
「じゃあ、島村さん。あなたはここに座って」
と藤森先生に入り口から1番近い席を指した。
わたしが席に座ると、去年担任だった若い男性教諭、秋山(あきやま)先生が口を開いた。
「まず単刀直入に訊きますね。島村さんは桜木(さくらぎ)愛依さんと仲が良かったですね?」
なぜここに呼ばれたのかも、なぜいきなり愛依の名前が出てくるのかもわからないまま、だけど躊躇なく頷く。普段から聞いて慣れ親しんでいる秋山先生の声が、どこか他人行儀に聞こえた。
「あの…、なんで今愛依の名前が?というかなぜわたしを?」
先生たちは誰もわたしの問いには答えない。秋山先生は気にせず続ける。
「島村さん。単刀直入に言いますが、桜木さんは…亡くなったそうです」
