―――――――
―――
目が覚めたのは、朝の六時。アラームよりも早起きなのは、半年ぶりだろうか。
浅い秋の朝は、しっとりとした涼しさだった。
体を起こすと、まだ頭がボーッとする感覚に包まれた。
ぼんやりとさっき見ていた夢を思い浮かべながら、カーテンを開ける。
窓から見える空は、まだ少し暗い。
まだ寝ててもいいかな、そう思ったとき、目に見覚えのある雪のように無垢な白色が写る。
「昨日の……」
無垢な白の間に、赤い線がちらりと見えた。
何度見ても綺麗だな、と思うが、昨日のように手を伸ばすことはしない。
綺麗なのに、蛾なんて。なんで蛾なんだろう。蝶ならきっと、好きになれたのに。
蛾なんて。そんなことを考えていたその時、ふと、図書室の先生が言っていたことを思い出した。
「蛾ってさ、毛虫の時は気持ち悪いって言われちゃうけど、一生懸命変わろうとして、サナギになって、最後は綺麗な蛾になるところが、健気でかわいいんだよね」
この綺麗な姿の前には、私のように毛虫を嫌う人がいた。
頭が朝の涼しさに、少し冷えた感覚がした。
「こっち来んなよ。菌がうつる」
「キモい」
いつの間にか、布団を握る手がギュッとこわばっていた。
見るのも嫌がられる毛虫に、いつも避けられてばかりの私。どことなく、共通点が見えてしまう。
白い校舎の繭にこもって、自分は正しいと信じて人の考えを否定する。そんな自分の姿が、毛虫のようなものに思えてきた。
マコトに会いたくなくて学校を休もうとするのは、自分が否定されるのが怖いだけなんじゃないのか。
私も実は垢だらけで、だからあの蛾の白さが好きになったんじゃないのか。
握りしめてくたくたになった布団を払いのけ、ひんやりとした床に立ち上がった。
何を言われるかはわからない。けれど、学校に行って、マコトに会おう。
「それから」
窓のほうを見ると、白い蛾―シロヒトリ―はいなくなっていた。でもきっと、また会ってみせる。
窓のほうから見える通学路は、朝日に照らされ白く光っていた。
fin
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目が覚めたのは、朝の六時。アラームよりも早起きなのは、半年ぶりだろうか。
浅い秋の朝は、しっとりとした涼しさだった。
体を起こすと、まだ頭がボーッとする感覚に包まれた。
ぼんやりとさっき見ていた夢を思い浮かべながら、カーテンを開ける。
窓から見える空は、まだ少し暗い。
まだ寝ててもいいかな、そう思ったとき、目に見覚えのある雪のように無垢な白色が写る。
「昨日の……」
無垢な白の間に、赤い線がちらりと見えた。
何度見ても綺麗だな、と思うが、昨日のように手を伸ばすことはしない。
綺麗なのに、蛾なんて。なんで蛾なんだろう。蝶ならきっと、好きになれたのに。
蛾なんて。そんなことを考えていたその時、ふと、図書室の先生が言っていたことを思い出した。
「蛾ってさ、毛虫の時は気持ち悪いって言われちゃうけど、一生懸命変わろうとして、サナギになって、最後は綺麗な蛾になるところが、健気でかわいいんだよね」
この綺麗な姿の前には、私のように毛虫を嫌う人がいた。
頭が朝の涼しさに、少し冷えた感覚がした。
「こっち来んなよ。菌がうつる」
「キモい」
いつの間にか、布団を握る手がギュッとこわばっていた。
見るのも嫌がられる毛虫に、いつも避けられてばかりの私。どことなく、共通点が見えてしまう。
白い校舎の繭にこもって、自分は正しいと信じて人の考えを否定する。そんな自分の姿が、毛虫のようなものに思えてきた。
マコトに会いたくなくて学校を休もうとするのは、自分が否定されるのが怖いだけなんじゃないのか。
私も実は垢だらけで、だからあの蛾の白さが好きになったんじゃないのか。
握りしめてくたくたになった布団を払いのけ、ひんやりとした床に立ち上がった。
何を言われるかはわからない。けれど、学校に行って、マコトに会おう。
「それから」
窓のほうを見ると、白い蛾―シロヒトリ―はいなくなっていた。でもきっと、また会ってみせる。
窓のほうから見える通学路は、朝日に照らされ白く光っていた。
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