シロヒトリ

 今日は水曜日で、清掃の時間がある。

 週の真ん中の日に、さらに清掃という追加の時間がある。水曜日というのは、何と憂鬱な日なのだろう。

 私は掃除用具の入っているロッカーを開け、箒を取り出す。そして、教室を出て、廊下の掃除を始めた。

 このクラスの数少ない好きなところは、清掃場所を選べることかもしれない。

 私が清掃場所を決めるとき、廊下を希望して、いわゆる「陽キャ」の人たちに怪訝な顔をされた。
 だが、彼らは清掃ではなく、友達と喋るためにこの場所を選んでいることを、私は知っている。

 私も清掃や片付けが好きではないが、窓のある廊下が好きだった。

 外の爽やかな空気を吸うと、なぜだか掃除をしよう、と少しは思えてくる。

 爽やかな空気に乗せられ、窓から入って来てしまった木の葉をそっと箒で掃く。どこからか、陽キャたちの不安になるくらい高い笑い声が聞こえてくる。

 窓のある壁の隅を掃いていると、昼休みと変わらない、枯れ葉の甘い匂いが混じった風が、そっと髪を撫でた。

 そういえば、あの蝶は今頃、何をしているのだろう。

 近くの林にでも行って、沢山の花に喜んでいるのだろうか。それとも、車通りの多い道に迷い込んでしまって、あたふたと飛んでいるのだろうか。

 いずれにしても、あんなに綺麗な蝶を見れて良かったな、でも、名前は知りたかった……。と、ボーッとしていると、

「ちょっと、そこどいて」

 図書委員の人だろうか。教室に置いてあった本を持って階段の方へ向かっていく。

 どいて、なんて強く言わなくても良いのに。鏡がなくても、自分の口角が下がるのがわかった。

 だが、図書、という言葉で、あることを思いつき、意識しなくても、背筋がピンと伸びた。

 ありがとう、図書委員さん。心で思わず感謝を述べた。

 あの蝶の名前を、本で調べよう。