仕事を終えた玉蘭は自室に戻り、豪華に結われた髪を丁寧に解して行く。鏡台に前に座り自分の顔を眺める。化粧が落ちた玉蘭の顔は妖艶な綺麗さはあるも、どこかまだ幼さを感じさせられる顔だった。
(化粧を落とすと流石に齢十七には見えないかな…)
ドカっ
「玉蘭!今日ね〜。お客さんから甘味頂いたんだ〜。一緒に食べよ!」
一人考え事にふけっている最中に、思いっきり戸が開く。玲瓏が飛び着く勢いで、玉蘭の方にくる。思わず抱きしめたくなるような可愛さだ。ただ、玲瓏の手元にあるお菓子の香りに食欲をそそられる。お腹が乏しく感じられ、夕餉を食べ損ねてしまっていたことに今気づく。
「お菓子でしょ。今お茶入れるから椅子に座ってて?」
セカセカと速足で下の階の台所に急ぐ。
「甘味になるとすぐそれ〜」
下の階に行き、東側の奥まった場所まで行くと台所が見えてくる。ただの台所だが、手入れの行き届いた赤い漆喰の柱や角の金細工によってさすがは、花街一の妓楼と言う事がわかる。
皿と茶を用意して戻ってくると、玲瓏は机を拭いてくれていた。
(こう言うところが良いお嫁さんになると思うんだけど、妓女とはもったいない気もするけど…)
「お皿いるよね?」
キュッキュとリズムよく布巾で机を拭いている背に声をかける。
「うん。あんまり食べれない珍しーいお菓子だよ!四人分あるから白蓮姐ちゃんと紅焼姐ちゃん呼ぼ!」
確かに甘い匂いはするものの、珍しい飴と果物が混ざり合ったような不思議な甘さの香りだ。
「姐ちゃんたち呼んできてくれない〜?」
玉蘭の部屋から離れた所に部屋がある二人を呼ぶのは面倒くさい、ただでさえこの広い楼の台所まで行って戻ってきたばかりだと言うのに。まあここは従って置かなくては食べられない…。
バーンっ
玲瓏の比ではないくらい思いっきりドアが開く。
「甘いお菓子あるでしょー」
呼ぶまでも無かった…。白蓮姐ちゃんの鼻によって二人を呼ぶ手間がはぶけた。
「しかも滅多に食べられない糖葫蘆!紅焼の鼻では嗅ぎ分けられ無かったこの香り!ねえなんで二人で食べようとしてるのぉ?私だってまだ生まれた一回しか食べたないのにー‼︎」
糖葫蘆とは、山楂などの果実を串に刺し、煮詰めた砂糖を飴にし、果実にかけたものである。外側は飴でパッリっと噛み心地がよく、内側は果実の甘みが広がる珍しくて貴重なものだ。そうかこの飴の甘い独特の香りは糖葫蘆だったのだ。白蓮姐ちゃんもさっき客から点心をもらっていたようなきがするが。
ただ一つ不満な事が…
「なんでお客さんは私へのお土産に簪ばかりなのかしらね?」
ふと素朴な疑問を出したつもりだ。他の妓女は点心などをもらってる事が多い、だが不思議と玉蘭の部屋には簪が増えて行くばかりだ。三人の顔はこの疑問を聞いて曇った…気がする。
「蘭蘭はさー誰も手懐けられないって知ってるし、意外と甘味好きなのは知られてないから…」
玲瓏が細々と喋る。それに続けて白蓮姐ちゃんが口を開く。
「あとね。一番面白いのが〜。ふふ。男の人は自分のあげた簪つけて欲しいものなのよ!」
「途中から男目線で喋るな」
紅焼姐ちゃんから一発くらっている白蓮姐ちゃんを横目に納得する。
(つまり私を自分のものだと主張したいのね…)
こう言う社会には辟易する…
「まあまあ。皆食べよっ!」
四人が席につき、お茶が入れられる頃には話に火がついていた。
「燕燕姐ちゃん、身請けされるらしいよ。柳姐に聞きたてほやほやだから誰も知らないと思うよ!」
お喋り好きで口が軽い白蓮姐ちゃんは簡単にさっき聞いた話をすぐにいってしまう。まだ柳姐も言っていないのだからあまり言わない方がいいだろうに。このように口が軽いせいで白蓮姐ちゃんに相談しにくる客はいないそうだ。
(まあ。白蓮姐ちゃんに言うってことは別に聞いてもいい話なのかしら)
「燕燕姐ちゃんって、二人のちょっと上の世代でしょう?少し遅くない?」
少し疑問に思う。燕燕姐ちゃんは玉蘭が小さい頃から姐として慕って来た一人であり、妓女頭と言う高い地位の妓女でもある。
「最後の最後まで妓女としての矜持がある。素敵な人だからな…」
燕燕姐ちゃんは皆に分け隔てなく接し、ほとんどの人間から好かれていたが、きっと紅焼姐ちゃん達の世代が一番、燕燕姐ちゃんに可愛がられて来たのだろう。
「そういえば紅月楼の一人に妓女、武官に身請けされるらしいよ〜」
意外にも噂話を口にしたのは玲瓏だった。紅月楼とは言ってしまえば花街でかなり格式が低いとされている妓楼だ。夜鷹のように客を取らねばならぬ者もいると聞く。そこが武官に身請けされるとは珍しい話であると言えるだろう。
「あそこがか…」
紅焼姐ちゃんが玉蘭と同じように疑問を抱いたらしい。あそこは武官に差し出せるような生娘はいないはずだが…
「よっぽどの美人でもいたのかなぁ〜。それかまだ下っ端武官なのかな」
白蓮姐ちゃんの考える可能性も十分にあり得る。ただどこか気になる気がすると言った感じだ。
「ねえ最近変じゃない──?」
皆が思っていたであろう疑問を最初にだしたのは玲瓏だった。
(化粧を落とすと流石に齢十七には見えないかな…)
ドカっ
「玉蘭!今日ね〜。お客さんから甘味頂いたんだ〜。一緒に食べよ!」
一人考え事にふけっている最中に、思いっきり戸が開く。玲瓏が飛び着く勢いで、玉蘭の方にくる。思わず抱きしめたくなるような可愛さだ。ただ、玲瓏の手元にあるお菓子の香りに食欲をそそられる。お腹が乏しく感じられ、夕餉を食べ損ねてしまっていたことに今気づく。
「お菓子でしょ。今お茶入れるから椅子に座ってて?」
セカセカと速足で下の階の台所に急ぐ。
「甘味になるとすぐそれ〜」
下の階に行き、東側の奥まった場所まで行くと台所が見えてくる。ただの台所だが、手入れの行き届いた赤い漆喰の柱や角の金細工によってさすがは、花街一の妓楼と言う事がわかる。
皿と茶を用意して戻ってくると、玲瓏は机を拭いてくれていた。
(こう言うところが良いお嫁さんになると思うんだけど、妓女とはもったいない気もするけど…)
「お皿いるよね?」
キュッキュとリズムよく布巾で机を拭いている背に声をかける。
「うん。あんまり食べれない珍しーいお菓子だよ!四人分あるから白蓮姐ちゃんと紅焼姐ちゃん呼ぼ!」
確かに甘い匂いはするものの、珍しい飴と果物が混ざり合ったような不思議な甘さの香りだ。
「姐ちゃんたち呼んできてくれない〜?」
玉蘭の部屋から離れた所に部屋がある二人を呼ぶのは面倒くさい、ただでさえこの広い楼の台所まで行って戻ってきたばかりだと言うのに。まあここは従って置かなくては食べられない…。
バーンっ
玲瓏の比ではないくらい思いっきりドアが開く。
「甘いお菓子あるでしょー」
呼ぶまでも無かった…。白蓮姐ちゃんの鼻によって二人を呼ぶ手間がはぶけた。
「しかも滅多に食べられない糖葫蘆!紅焼の鼻では嗅ぎ分けられ無かったこの香り!ねえなんで二人で食べようとしてるのぉ?私だってまだ生まれた一回しか食べたないのにー‼︎」
糖葫蘆とは、山楂などの果実を串に刺し、煮詰めた砂糖を飴にし、果実にかけたものである。外側は飴でパッリっと噛み心地がよく、内側は果実の甘みが広がる珍しくて貴重なものだ。そうかこの飴の甘い独特の香りは糖葫蘆だったのだ。白蓮姐ちゃんもさっき客から点心をもらっていたようなきがするが。
ただ一つ不満な事が…
「なんでお客さんは私へのお土産に簪ばかりなのかしらね?」
ふと素朴な疑問を出したつもりだ。他の妓女は点心などをもらってる事が多い、だが不思議と玉蘭の部屋には簪が増えて行くばかりだ。三人の顔はこの疑問を聞いて曇った…気がする。
「蘭蘭はさー誰も手懐けられないって知ってるし、意外と甘味好きなのは知られてないから…」
玲瓏が細々と喋る。それに続けて白蓮姐ちゃんが口を開く。
「あとね。一番面白いのが〜。ふふ。男の人は自分のあげた簪つけて欲しいものなのよ!」
「途中から男目線で喋るな」
紅焼姐ちゃんから一発くらっている白蓮姐ちゃんを横目に納得する。
(つまり私を自分のものだと主張したいのね…)
こう言う社会には辟易する…
「まあまあ。皆食べよっ!」
四人が席につき、お茶が入れられる頃には話に火がついていた。
「燕燕姐ちゃん、身請けされるらしいよ。柳姐に聞きたてほやほやだから誰も知らないと思うよ!」
お喋り好きで口が軽い白蓮姐ちゃんは簡単にさっき聞いた話をすぐにいってしまう。まだ柳姐も言っていないのだからあまり言わない方がいいだろうに。このように口が軽いせいで白蓮姐ちゃんに相談しにくる客はいないそうだ。
(まあ。白蓮姐ちゃんに言うってことは別に聞いてもいい話なのかしら)
「燕燕姐ちゃんって、二人のちょっと上の世代でしょう?少し遅くない?」
少し疑問に思う。燕燕姐ちゃんは玉蘭が小さい頃から姐として慕って来た一人であり、妓女頭と言う高い地位の妓女でもある。
「最後の最後まで妓女としての矜持がある。素敵な人だからな…」
燕燕姐ちゃんは皆に分け隔てなく接し、ほとんどの人間から好かれていたが、きっと紅焼姐ちゃん達の世代が一番、燕燕姐ちゃんに可愛がられて来たのだろう。
「そういえば紅月楼の一人に妓女、武官に身請けされるらしいよ〜」
意外にも噂話を口にしたのは玲瓏だった。紅月楼とは言ってしまえば花街でかなり格式が低いとされている妓楼だ。夜鷹のように客を取らねばならぬ者もいると聞く。そこが武官に身請けされるとは珍しい話であると言えるだろう。
「あそこがか…」
紅焼姐ちゃんが玉蘭と同じように疑問を抱いたらしい。あそこは武官に差し出せるような生娘はいないはずだが…
「よっぽどの美人でもいたのかなぁ〜。それかまだ下っ端武官なのかな」
白蓮姐ちゃんの考える可能性も十分にあり得る。ただどこか気になる気がすると言った感じだ。
「ねえ最近変じゃない──?」
皆が思っていたであろう疑問を最初にだしたのは玲瓏だった。


