「玉蘭どの。久しぶりです」
薔薇の間で待っていたのは、三十路手前の男だった。
「宗岳様ですね。わたくしこの日をとても楽しみに待っていたのですよ?」
宗岳、薔薇楼の上客でありかなりの地位の武官とも聞く。確か禁軍の将軍の片腕だとか。良い顔立ちで人が好む愛嬌と話術に長けている好青年で、まあ残念なのが少し臆病な所だろう。
「今日こそは碁で勝ちたいですね」
今まで何回か碁を共にやって来たが、宗岳は玉蘭には碁で勝てていない。なので、碁をやりたいのだろう。
(また結果は同じなのに…)
ほぼ毎日暇つぶしに碁をやって生きて来た玉蘭にそこらの武官が勝てるはずがないのは明らかだ。
「楽しみにしております」
パチリ──…。
パチリ──…。
お互いゆっくりと碁を置いていく音が響いていた。盤の状況は玉蘭は最悪とでも言いたいほど悪い。大体の人だったら諦めてしまいそうな差だ。玉蘭がとても大きいハンデを背負っているのだろうかと思えるほどに。
ただ、玉蘭にはもける気が全くない。
(ここで負けてしまうわけがない)
小さい頃、既にほとんどの楽器や作法などを覚えてしまった玉蘭が打ち込むことができたのは碁だった。毎日の様に碁をうち、ありとあらゆる手を考えた。
玉蘭の狙い通り、宗岳が初盤は有利に進めていたが、終盤では玉蘭が立場を逆転させた。まあ大体の客とやってもこうなるのだが。最初は妓楼で負けなしの玉蘭に勝てると思い込んでしまうが後で圧倒的に玉蘭が逆転勝ちをしてしまうのだ。
「玉蘭さんの一手一手に魂が込められている気がしますね」
宗岳はたまに意味深な事を言うが、ほとんど気にしていない。
「楽しかったですわ」
(こう思うと接待も上手くなったものね)
ふふっと笑う玉蘭の姿は全ての人の心を掴んでしまうだろう。これが傾国の華と呼ばれる玉蘭だ。
まだ夜の花街の熱は消えていなかった。
薔薇の間で待っていたのは、三十路手前の男だった。
「宗岳様ですね。わたくしこの日をとても楽しみに待っていたのですよ?」
宗岳、薔薇楼の上客でありかなりの地位の武官とも聞く。確か禁軍の将軍の片腕だとか。良い顔立ちで人が好む愛嬌と話術に長けている好青年で、まあ残念なのが少し臆病な所だろう。
「今日こそは碁で勝ちたいですね」
今まで何回か碁を共にやって来たが、宗岳は玉蘭には碁で勝てていない。なので、碁をやりたいのだろう。
(また結果は同じなのに…)
ほぼ毎日暇つぶしに碁をやって生きて来た玉蘭にそこらの武官が勝てるはずがないのは明らかだ。
「楽しみにしております」
パチリ──…。
パチリ──…。
お互いゆっくりと碁を置いていく音が響いていた。盤の状況は玉蘭は最悪とでも言いたいほど悪い。大体の人だったら諦めてしまいそうな差だ。玉蘭がとても大きいハンデを背負っているのだろうかと思えるほどに。
ただ、玉蘭にはもける気が全くない。
(ここで負けてしまうわけがない)
小さい頃、既にほとんどの楽器や作法などを覚えてしまった玉蘭が打ち込むことができたのは碁だった。毎日の様に碁をうち、ありとあらゆる手を考えた。
玉蘭の狙い通り、宗岳が初盤は有利に進めていたが、終盤では玉蘭が立場を逆転させた。まあ大体の客とやってもこうなるのだが。最初は妓楼で負けなしの玉蘭に勝てると思い込んでしまうが後で圧倒的に玉蘭が逆転勝ちをしてしまうのだ。
「玉蘭さんの一手一手に魂が込められている気がしますね」
宗岳はたまに意味深な事を言うが、ほとんど気にしていない。
「楽しかったですわ」
(こう思うと接待も上手くなったものね)
ふふっと笑う玉蘭の姿は全ての人の心を掴んでしまうだろう。これが傾国の華と呼ばれる玉蘭だ。
まだ夜の花街の熱は消えていなかった。


