薔薇の心中〜傾国の華は真実を嗤う〜

おしろいのの粉っぽい匂いと、異国の花で作った香の匂いがここ薔薇楼(ソウビろう)の妖艶さそして高級さを物語っていた。


「ねぇねぇ知ってる?皇太后様が亡くなったらしいよ」

異国風に肩までの長さの綺麗な紫髪を下ろした女性が話しかける。

「そうなの…。わたくし後宮とか興味ないのよね…」

私こと玉蘭(ギョクラン)は静かにため息を吐(つ)く。

「そんないかにもつまらなさそうな顔しないでよ。よくそれでお客さん取れるよ。本当〜」

私は花街一番の妓楼、薔薇楼の最高位の妓女だ。楼主の承認でしか会えず、会えたとしても無愛想な女と囲碁や茶を楽しむ事しかしない。夜伽は絶対に行わず、露出を少なく、値が上がると言う仕組みだ。「傾国の花」や「薔薇の君」と呼ばれ、今では貴族でも簡単に会えない存在となった。

(まぁなるべく客を取らなくてもいいと言うのは楽だけれど…)

目の前で話しているのは、玲瓏(リンロン)。私の次に人気な妓女で、華やかでおしゃれ好き、玉蘭の事を考えてくれる一人だ。

「本当に…なんでかしら」

玲瓏は私の長い黒髪を持ち上げ、丁寧に編んで行く。頭の上の方で束ねた上品な御髪(おぐし)に薔薇の花と金細工で作られた華やかな簪(かんざし)差し込む。

「丁寧ね。小妓(妓女見習い)にでもやらせればいいのに…」

御髪を整え終わり、玉蘭の顔におしろいを塗る玲瓏の手が止まる。玲瓏がおしろいを近くの台に置き、玉蘭の前に膝をつき、玉蘭の白く細い手を掴む。

「私は蘭蘭の未来のための機会(チャンス)を手伝いたいの」

それだけ言うと玲瓏は化粧を再開させる。その手元が愛おしく感じる──自分の事を考えて行動してくれる人のいるありがたさを。