荷物を纏めるやら挨拶やらで迎えまでの六日間はすぐにすぎてしまった。桃果には後宮でやっていけるのかなどと沢山馬鹿にされ、燕燕姐ちゃんは玉蘭に見送って欲しいと言い、燕燕姐ちゃんの身請けが早まることになり忙しさが増えたのは間違いない。最後にここを出ていく燕燕姐ちゃんは清々しく悔いはないと言った顔だった。白蓮姐ちゃんは仲のいい仕事仲間が二人も居なくなる事から、殆ど涙目だったのは間違いない。紅焼姐ちゃんは後宮と聞き心配そうな顔持ちだったが、励まされた。玲瓏には一番伝えづらかった。今までずっと一緒に生きて来た姉妹の様な感じなので、玉蘭自身も辛い思いで伝えた。玲瓏は機会を手伝うよと笑顔で言われたが、お互い夜に泣いたのは知っている。
(本当は後宮なんて行きたくないのに──…)
今日──入内日は滅多に見れないほどの晴天で、玉蘭を送り出している様で行きたくない気持ちとの葛藤が大きい。云々(うんぬん)と色々部屋で考え事をしていると、小妓が駆けつけてくる。この前の走っていた小妓だ。
「玉蘭姐さん、例の人が迎えに来たよ!」
ああ、ついに来てしまったかと思う。どうしても実感がないのは仕方がないだろう。
「分かったわ。すぐ行くと伝えて…」
小妓が走り去った後、今はすっきりと片付いてしまった自分の部屋を眺める。ジワっと目が目頭が熱くなっていくのは気づかない事にしておこう。気づいてしまったらもう意地でも行きたくないと叫んでしまうから。
(何も無かった私に私をくれたのはここなのね)
そのまま一歩一歩廊下の方に行く。長い長い廊下は玉蘭の今までの人生を語っているかの様に闇に輝いていた。下に着くとこの前の将軍様が小上がりに腰を掛けている。その姿が様になっていて、思わず見入ってしまう。ただすぐに冷静さを取り戻し、景蓮に優雅に一礼をする。
「六日間ぶりでございますね。旦那様」
景蓮は挨拶なんてどうでもいいらしく、玉蘭に見入ってしまっている様だ。玉蘭の今日の服は袖が長く広がった着物を何枚も重ね着された金糸の刺繍入りの華やかな色使いの礼服に、金細工の花を模った簪を差した髪は上層部だけお団子になっている。まあ普通礼服姿の玉蘭は誰が見ても美しいと言うだろう。ただ景蓮は皇族なので後宮にも出入り出来るだろうに、女なれしているものだろうと思っていた。
「あ、あぁ」
少々赤面しながら、返事をする景蓮は面白いに値する。
(私はただの一妓女なのに…。可愛い)
「それでは行きましょうか」
当本人の景蓮を置いて、玉蘭はスタスタと玄関まで歩いて行く。
「なぜお前が仕切っているんだ!」
置いてかれた景蓮は大股で男性らしい歩き方で、すぐ玉蘭の元まで来てしまう。
「貴方様が遅いからに決まっているでしょう。先ほどはわたくしに見惚れていたのですか?」
ちょっと煽ってカマをかけるつもりだったが、思った以上にダメージを受けた顔をする。本当に女なれしていないのだろうか。
「玉蘭‼︎何も言わずに出て行くのかい⁉︎」
ふざけていた玉蘭に、聞き飽きた高く低い声が響き渡る。ビクッと背中が震えるのはいつも叱られて来たからだろうか。
「そうよ〜。あんまりにも程があるわぁ〜」
玉蘭に似た白蓮姐ちゃんの声が聞こえて来て、四人分の足音が回廊を響き渡る。
「玉蘭達者でな」
「紅焼姐ちゃん⁉︎そんな蘭蘭は危ないとこ行かないよぉ」
意外な組み合わせの玲瓏と紅焼姐ちゃんの会話が、玉蘭の騒ぎ立てていた気持ちを鎮める。柳姐が側によって来てそっと玉蘭に耳打ちをする。
「あの男かなりの手練れだがお前の前だと流石に美しすぎてヘタレだな」
柳姐也の冗句だろうが、大方当たっているだろう。あんな青年まず女性が放って置くはずがない。まあ妻持ちだろう。
「蘭蘭!頑張って、」
玲瓏が玉蘭の胸に飛び込む。すぐ近くに玲瓏の顔があり不思議と温かい気持ちになる。玉蘭も玲瓏の背中に手を回し、ポンポンと軽く叩く。
「ありがとね」
四人は門の前で止まり、玉蘭と景蓮は門から外へと歩き出す。外の薔薇が玉蘭を送り出すかの様に美しく咲き誇っていた。薔薇楼の敷地から出ると胸がキュッと締め付けられる悲しみを覚えたが、景蓮の着物の裾を掴む気づくか気づかないか程度にそっと。
道路には馬車が停まっていて、上品な手入れされた馬が馬車と繋がっていた。馬車には高い段があったが、景蓮が手を差し出してくれたおかげで無事上がることが出来た。玉蘭はあまり身長が高いわけではないのですごく助かる。
「お前あくまでも臨時だからな。目的は事件解決だ」
(要するに帝に手を出すなと言うわけね)
景蓮は今までの玉蘭から男好きだと思っているのだろう。本当は逆で技とこう言う風を装っているだけなのだが。
「分かっていますわ。もしかして嫉妬してらっしゃるのかしら?」
「お前なんなんだ。性格悪いな」
景蓮の眉間に皺がよる。そう若いうちからその様な顔をしていたら、老けるぞと思うが。
「知ろうとしてくださって光栄ですわ。ふふ」
「お前何歳だ?俺より上か?」
急にどうしたのか。流石に小さい子扱いし過ぎたか?
玉蘭は十七。けれど厚化粧のせいで二十歳くらいに見えてしまうのではないか。景蓮はざっと十九歳以下だ。
(本当の事答えるべき?)
「今年で十七です…」
最後が萎んでいってしまい幼くなる。幼くなると侮られるかもしれないので気をつけているのだが。
「え?おまっ十七…」
以下にも心外だったと言う反応を見せてくるのが嫌な感じだ。
「で?旦那様は?」
流石に人の年齢だけ聞いて黙るなんて事はないだろう。
「十九だ…」
玉蘭の予想は当たっていた。景蓮よりも玉蘭の方が勘が働くのかもしれない。
「旦那様は先ほどわたくしの年齢で驚いていらっしゃいましたよね?わたくしそんなに老けてないですよ…」
これは会話を繋げる為でもあるが、本当に不満だ。玉蘭も幼すぎると商品にならないので、話し方も変えさせられたし、化粧もまなじりを主張する大人っぽく妖艶な顔になるよう化粧している。あの反応だと二十五ぐらいに思われていたのかも知れない。
「いや、すごく大人っぽい喋り方する人で、でもちょっと幼い顔だなって…」
ボソボソと言うのは本当に思っていた様で安心したが、だがなぜ赤面するのだと言いたい。
「褒めてくださっているのですね」
「どう捉えたらそうなるんだ⁉︎」
ガラガラと揺れながら進んでいた馬車が、急にピタッと止まる。着いたのだ…。
(本当は後宮なんて行きたくないのに──…)
今日──入内日は滅多に見れないほどの晴天で、玉蘭を送り出している様で行きたくない気持ちとの葛藤が大きい。云々(うんぬん)と色々部屋で考え事をしていると、小妓が駆けつけてくる。この前の走っていた小妓だ。
「玉蘭姐さん、例の人が迎えに来たよ!」
ああ、ついに来てしまったかと思う。どうしても実感がないのは仕方がないだろう。
「分かったわ。すぐ行くと伝えて…」
小妓が走り去った後、今はすっきりと片付いてしまった自分の部屋を眺める。ジワっと目が目頭が熱くなっていくのは気づかない事にしておこう。気づいてしまったらもう意地でも行きたくないと叫んでしまうから。
(何も無かった私に私をくれたのはここなのね)
そのまま一歩一歩廊下の方に行く。長い長い廊下は玉蘭の今までの人生を語っているかの様に闇に輝いていた。下に着くとこの前の将軍様が小上がりに腰を掛けている。その姿が様になっていて、思わず見入ってしまう。ただすぐに冷静さを取り戻し、景蓮に優雅に一礼をする。
「六日間ぶりでございますね。旦那様」
景蓮は挨拶なんてどうでもいいらしく、玉蘭に見入ってしまっている様だ。玉蘭の今日の服は袖が長く広がった着物を何枚も重ね着された金糸の刺繍入りの華やかな色使いの礼服に、金細工の花を模った簪を差した髪は上層部だけお団子になっている。まあ普通礼服姿の玉蘭は誰が見ても美しいと言うだろう。ただ景蓮は皇族なので後宮にも出入り出来るだろうに、女なれしているものだろうと思っていた。
「あ、あぁ」
少々赤面しながら、返事をする景蓮は面白いに値する。
(私はただの一妓女なのに…。可愛い)
「それでは行きましょうか」
当本人の景蓮を置いて、玉蘭はスタスタと玄関まで歩いて行く。
「なぜお前が仕切っているんだ!」
置いてかれた景蓮は大股で男性らしい歩き方で、すぐ玉蘭の元まで来てしまう。
「貴方様が遅いからに決まっているでしょう。先ほどはわたくしに見惚れていたのですか?」
ちょっと煽ってカマをかけるつもりだったが、思った以上にダメージを受けた顔をする。本当に女なれしていないのだろうか。
「玉蘭‼︎何も言わずに出て行くのかい⁉︎」
ふざけていた玉蘭に、聞き飽きた高く低い声が響き渡る。ビクッと背中が震えるのはいつも叱られて来たからだろうか。
「そうよ〜。あんまりにも程があるわぁ〜」
玉蘭に似た白蓮姐ちゃんの声が聞こえて来て、四人分の足音が回廊を響き渡る。
「玉蘭達者でな」
「紅焼姐ちゃん⁉︎そんな蘭蘭は危ないとこ行かないよぉ」
意外な組み合わせの玲瓏と紅焼姐ちゃんの会話が、玉蘭の騒ぎ立てていた気持ちを鎮める。柳姐が側によって来てそっと玉蘭に耳打ちをする。
「あの男かなりの手練れだがお前の前だと流石に美しすぎてヘタレだな」
柳姐也の冗句だろうが、大方当たっているだろう。あんな青年まず女性が放って置くはずがない。まあ妻持ちだろう。
「蘭蘭!頑張って、」
玲瓏が玉蘭の胸に飛び込む。すぐ近くに玲瓏の顔があり不思議と温かい気持ちになる。玉蘭も玲瓏の背中に手を回し、ポンポンと軽く叩く。
「ありがとね」
四人は門の前で止まり、玉蘭と景蓮は門から外へと歩き出す。外の薔薇が玉蘭を送り出すかの様に美しく咲き誇っていた。薔薇楼の敷地から出ると胸がキュッと締め付けられる悲しみを覚えたが、景蓮の着物の裾を掴む気づくか気づかないか程度にそっと。
道路には馬車が停まっていて、上品な手入れされた馬が馬車と繋がっていた。馬車には高い段があったが、景蓮が手を差し出してくれたおかげで無事上がることが出来た。玉蘭はあまり身長が高いわけではないのですごく助かる。
「お前あくまでも臨時だからな。目的は事件解決だ」
(要するに帝に手を出すなと言うわけね)
景蓮は今までの玉蘭から男好きだと思っているのだろう。本当は逆で技とこう言う風を装っているだけなのだが。
「分かっていますわ。もしかして嫉妬してらっしゃるのかしら?」
「お前なんなんだ。性格悪いな」
景蓮の眉間に皺がよる。そう若いうちからその様な顔をしていたら、老けるぞと思うが。
「知ろうとしてくださって光栄ですわ。ふふ」
「お前何歳だ?俺より上か?」
急にどうしたのか。流石に小さい子扱いし過ぎたか?
玉蘭は十七。けれど厚化粧のせいで二十歳くらいに見えてしまうのではないか。景蓮はざっと十九歳以下だ。
(本当の事答えるべき?)
「今年で十七です…」
最後が萎んでいってしまい幼くなる。幼くなると侮られるかもしれないので気をつけているのだが。
「え?おまっ十七…」
以下にも心外だったと言う反応を見せてくるのが嫌な感じだ。
「で?旦那様は?」
流石に人の年齢だけ聞いて黙るなんて事はないだろう。
「十九だ…」
玉蘭の予想は当たっていた。景蓮よりも玉蘭の方が勘が働くのかもしれない。
「旦那様は先ほどわたくしの年齢で驚いていらっしゃいましたよね?わたくしそんなに老けてないですよ…」
これは会話を繋げる為でもあるが、本当に不満だ。玉蘭も幼すぎると商品にならないので、話し方も変えさせられたし、化粧もまなじりを主張する大人っぽく妖艶な顔になるよう化粧している。あの反応だと二十五ぐらいに思われていたのかも知れない。
「いや、すごく大人っぽい喋り方する人で、でもちょっと幼い顔だなって…」
ボソボソと言うのは本当に思っていた様で安心したが、だがなぜ赤面するのだと言いたい。
「褒めてくださっているのですね」
「どう捉えたらそうなるんだ⁉︎」
ガラガラと揺れながら進んでいた馬車が、急にピタッと止まる。着いたのだ…。


