ショットクロックが動くまで

週明けの月曜日、いつものように放課後図書館で本を読んでいたら、ドアがガラガラという音を立てて開いた。珍しい、瑞樹くんだ。向こうもこちらに気づいたらしく、手を振りながらこちらに向かった歩いてくる。
「瑞樹くん、今暇?」
「暇っちゃ暇」
「友達から相談されたことがあって、なんて答えたらいいかわかんないから一緒に考えてくれない?」
すると、彼は怪訝な顔をしながら、いいよと言った。
「その子ね、中学のとき運動部に入ってて、そこそこ試合に出てたのね。得点を取るのがその子の仕事なんだけど、中学3年生のときの県大会出場がかかった最後の試合で全然スリーが入んなかった、じゃなくて得点取れなくて、他のメンバーからもパスがもらえなくて落ち込んでたのね」
瑞樹くんは黙って私の話を聞いてくれる。
「それでもキャプテンはその子のこと信じて励ましてくれたみたいだったの。」
「うん」
「でもね、結局試合に負けちゃって、数日後に信じてたキャプテンがその子の悪口を言ってるのを聞いちゃったんだって。それでその子はそのスポーツやめちゃった」
「うん」
「でも、高校2年生になって自分がまだそのスポーツやりたいって心の中では思ってることに気づいて、どうしたらいいかわからなくて困ってるらしい」
よし、ほとんどちゃんと他人のことっぽく言えた。
「俺なら、もう一回やってみるね」
瑞樹くんがまっすぐな目で答えた。
「どうして?そこまではっきりとそう言えるの?また同じことが起こるかもしれないのに、また傷つくことになるかもしれないのに」
「だって17歳の今は今しかないんだよ。今ちょっとでもやりたいと思うんだったらやる。あとから後悔するのは嫌だから」
「でもそんなすぐ変われるかな?」
「人が変わるのにかかる時間はそれぞれだけど、早いからいいとか遅いからダメとかではないと思うんだ。大事なのは凪彩ちゃんが変わりたいと思う気持ちだよ」
「私が変わりたいと思う気持ち。。。ってん?なんで私のことだってわかったの?」
瑞樹くんはケラケラ笑っている。
「相変わらず噓をつくのが下手だからね凪彩ちゃんは」
瑞樹くんにはかなわないや。
「で?凪彩ちゃん、変わる気あるの?」
「ある、、、と思う。でも、やっぱりあの日のことを思い出すと辛い」
「無理に忘れろとは言わないよ。ちょっとずつ変わっていけばいい。よし!ちょっとでも気持ちがあるなら行動に移すべし!ほら、いくよ!」
そう言うと瑞樹くんは私の手を引っ張りながら走り始めた。
「え、ちょっと待って!」
図書室ではお静かにーと言う司書さんにすみませんと謝りながら私たちは図書室を出た。