ショットクロックが動くまで

大会が終わって2日後の月曜日。この日もいつも通り、同じクラスで男バスのマネージャーをしている咲月とお昼ご飯を食べる準備をしていた。そのとき、お弁当にお箸が入っていないことに気づき、咲月に先ご飯食べていてと言って私は職員室に向かった。女子トイレを通り過ぎようとしていたとき、海咲とバスケ部のメンバーが何か話しているのを見かけて、声をかけようとした。
「やっほ、、、」
「マジで凪彩ってちょっとバスケ上手くて顧問に好かれてるからって調子乗ってるよね。うちミニバスから一緒だけどずっとあんな感じでさ。マジでやめてくれないかなーってずっと思ってたんだよねー。地区選抜とか選ばれるたびにすぐ調子乗ってさ。ホントむかつく」
え?海咲?
「それな。でも海咲なんでこの前の試合凪彩に最後シュート打たせたわけ?どうせ入んないの目に見えてたじゃん」
「私だってやりたくてそうしたんじゃないって。実はタイムアウト中に先生に呼ばれてさー、最後は凪彩のスリーに賭けようって言われたのー。じゃなかったらあんなやつにパスしないって笑笑」
「だよねー笑笑マジであの試合あいつのせいで負けたようなもんだよね」
「ホントにそれなー」
「てかやっとあいつとバスケやらずに済むわー。海咲あいつにもみんなと同じ接し方できててマジ尊敬するわー」
「そりゃキャプテンだし、あいつ私のこと信じてそうだったし笑笑。っていうかあんたらこの前に試合の後半あからさまに態度変えすぎー」
「だってもう限界だったんだもーん」
うそ。海咲が本当にそんなことを思っていたなんて。私はショックのあまりその場を逃げ出した。職員室に行くことも忘れて、人気の少ない廊下まで来た。はあはあはあ。。。なんで、海咲のことは信じてたのに。そう思った瞬間、我慢していた涙があふれてきた。こんなことになるならバスケなんて始めなければよかった。
「こんなとこで何してんの?」
え?誰?後ろから声がして振り返ると、階段に背の高い男子が一人腰かけていた。この人男バスの人だ。
「えっと、すみません。お見苦しいところを見せてしまって。では私はこれで」
そう言って歩き出そうとしたが体に力が入らなくてよろけてしまった。
「危ない!おい、大丈夫か!」
そんな声は私の耳には届かず、私はそのまま意識を失った。

目が覚めると保健室にいた。あれ、私あの後どうしたんだっけ?そんなことを考えていると、ドアが勢いよく開いて咲月が入ってきた。と思ったら後ろにもう一人、あのときの男子だ。
「凪彩!大丈夫!?」
そう言いながら抱きついてきた。
「あの、あなたがここまで運んでくれたんですか?」
すると彼は驚いて顔をしながら答えた。
「まあそうだけど、元気そうで何より」
「てか瑞樹、凪彩に名前覚えられてないのウケる」
「咲月うるさい」
あっこの人瑞樹っていうんだ。お互い呼び捨てで呼んでる当たり仲いいんだろうな。
「そんなことより凪彩が無事でほんとによかったよー。瑞樹から凪彩が倒れたって連絡来たときはどうしようかと」
咲月はほっとした様子で言う。
「咲月心配かけてごめんね。でももう大丈夫だから」
「凪彩ー!無理は禁物だよ!」
「うん、わかってる」
そう言うと、咲月はニコッと笑った。
「でも、なんで私が咲月と仲いいってわかったんですか?」
「えっとそれは、毎日咲月から凪彩ちゃんの話聞いてるからね。凪彩マジバスケうまい、ホントかっこいいって。そればっかり」
「瑞樹、その話は凪彩には内緒って言ったじゃーん。恥ずかしいって」
毎日話聞いてる?それってもしかして。。。
「二人は付き合ってるの?」
『え?』
二人は声が重なった次の瞬間顔を見合わせて爆笑し始めた。
私なんか変なこと言った?
「凪彩ホントに知らないんだ。珍しいようちの学校で」
「ホント咲月と付き合うとかありえないんだけど」
「そんなのこっちから願い下げよ」
なんか二人で言い合ってる。私が困惑しているのに気づいた咲月が咳払いをして話し始めた。
「では全然分かってない凪彩ちゃんに質問です。私の苗字は?」
なんかいきなり質問大会始まったんだけど。そんなの簡単。
「高橋!」
「せいかーい。じゃあ、私の誕生日は?」
「2006年8月7日!」
「ザッツライト!」
この質問に何の意味があるんだか、数秒後知ることになる。
「で、俺の名前は高橋瑞樹、2006年8月7日生まれ。もうさすがに気づいた?」
苗字も誕生日も一緒?まさかこの二人。。。
「双子?でも全然顔似てないけど」
そう答えると、二人は同時にニヤリとした。前言撤回、やっぱ双子だ。
「マジで知らなかったんだ凪彩ちゃん。結構有名な話だと思うけど」
「私そういうの疎くて…」
「まあ凪彩らしいっちゃ凪彩らしいか。あ、そろそろ先生読んでくるね」
咲月が先生を呼びに行ってくれて、結局その日は親に迎えに来てもらうことになった。