ショットクロックが動くまで

私、守谷凪彩(もりたになぎさ)は小中の9年間バスケにかけてきた。地区選抜にも選ばれたし、いろんなチームの指導者の方に名前を覚えてもらえるようにもなった。さらには、9年間の努力が実を結んだのか、バスケの強豪校からうちに来ないかという言葉もかけてもらった。ちょうど私もその高校に行きたいと思っていたから、声をかけてもらったときは声が出るほど嬉しかったし、もちろん行くつもりでいた。中3のあの日までは…

中学3年の夏、最後の大会。今日は地区の3位決定戦で、3位になれば県大会に出場できる。相手は何度も試合をしたことのある隣の中学。チーム全体の実力は一緒ぐらいで、勝てる確率は五分五分ってとこ。でも、絶対勝つ。
試合が始まって5分経過。おかしい、いつもみたいにスリーポイントが入らない。相手のディフェンスがめちゃくちゃきついわけでもないのにリングに嫌われてばかり。レイアップやミドルなら点数は取れるが、スリーを決められないのはとても痛い。結局、前半終了時、25対35で10点を追いかける形になってしまった。
ハーフタイム中、やはり私の調子が悪いという話がチーム内で出た。それでも打ち続けたらいいって先生は言ってくれて少し元気が出た。でもこの時の私は、チームメイトが不満そうな表情をしていたのに気づかなかった。
後半が始まり数分が経過した頃、私はあることに気づいた。前半より明らかにチームメイトが私にパスする回数が減ったのだった。もちろん今まで通りパスを回してくれる子もいるが、同級生の一部は全く私にパスしなくなった。それでも他のチームメイトが点数をある程度取ってくれてはいて点差が広まってはいなかったので、それならそれでチームが勝てるならいいやと思ってコートに立って自分ができる精一杯のプレーをした。相手のパスをカットしてそのままレイアップを決めたり、オフェンスリバウンドを取ってシュートを決めたり。そんなこんなで気づけば4クォーターの残り15秒。うちの先生が後半最後のタイムアウトを取った。点差は3点。タイムアウト明けは相手ボールからのスタートだが、早い段階でマイボールにしてスリーを決められればまた可能性はあるかもしれない。でも、問題はボールが回ってくるか。そんなことを考えているとき、キャプテンの海咲が全員に向かって言った。
「凪彩のスリーに賭けよう」
私は耳を疑った。ここまででまだ1本しかスリーを決められてないのに、大事な場面で自分にシュートを託してくれるのか。キャプテンの海咲は先輩後輩関係なく誰からも好かれるタイプ。しかも、バスケの実力も高い。だからだろうが、周りのチームメイトも渋々、海咲が言うならって感じで頷いた。
タイムアウトが終わり、相手ボールから試合が再開した。残り7秒の段階でなんとかボールを奪うことができ、私にパスが回ってきた。残り2秒。これは打つしかない、そう思いリングに向かってシュートを放った。試合終了のブザーと共に私の耳に届いたのは、ボールがゴールネットを揺らす音ではなく、相手チームの喜ぶ声。ああ、私のせいで負けたんだ。その後は何にも考えられないまま、片付け、先生に集合、そして帰宅。せっかく海咲が自分に託してくれたのに、自分は期待に応えることができなかった。帰り道、海咲や一部のチームメイトは、そんなこともあるよ、気にしなくていいなんて言ってくれた。だけど、内心は私のことを恨んでいるかもしれない、そんなことばかり考えながらその日は眠りについた。