恋にはならない愛の行方

 翌日、お昼前に駅で待ち合わせをして山中さんと合流した。初めての状況にデートさながらの緊張感が漂う。でもそれは私だけが感じているようで、彼女は「行こう」と笑顔で歩いていく。
 横断歩道を渡ってすぐのお店に入り、窓際の席に座った。
 私たちはとりあえずメニューを見るものの、注文するものは決めている。
 イチジクのパンケーキだ。

「やっぱり、これだよね」
「うん。そうだね」

 パウチされた期間限定のメニューを指差す山中さん。
 私は大きく頷いた。
 注文をして、ふう、と椅子の背にもたれる。
 窓の外をちらりと見て、グラスに入った水を一口飲んだ。

「なんか、休みの日に会うの新鮮だね。流羽ちゃんの私服初めて見たかも」
「私も、山中さんの私服新鮮……」

 いつもポニーテールにしている髪は下していて、毛先は少し巻いている。白いチュールスカートにニットのカーディガンを着た彼女は、学校での雰囲気よりも可愛らしい。
 
 私はというと、スキニーデニムに小さな花柄のオフショルダーのシャツを着ている。
 この服、変じゃないだろうか。一応持っている服の中では一番女子高生らしいものを着て来たつもなんだけど、肩出し過ぎたかな。センスないとか思われてないだろうか。ここでイメージと違ってた、なんて思われて学校での関係が壊れてしまわないか、なんて不安がよぎる。
 山中さんはそんな小さなことを気にするような子じゃないとわかっているのに、悪い方にばかり思考が傾く。

「流羽ちゃん肌が白いから、オフショルよく似合うね」

 良かった。間違ってなかったみたい。

「ありがとう。山中さんも可愛い」

 服を褒め合う会話に、お互いフッと笑いがこぼれる。
 こんな話、学校ではしないから本当に新鮮だ。
 そうしているうちにパンケーキが運ばれてきて、私たちは思わず声を上げた。

「すごい……」
「おいしそう!」

 フワフワのパンケーキにホイップクリーム、イチジクがふんだんに載り、メイプルシロップがかけられている。スマホで写真を撮り「いただきます」とさっそくフォークを入れる。

 私たちは喋るのも忘れ、夢中で食べ進めた。
 時おり顔を見合わせて笑い、クリームが付いてるよと教えてあげる。
 緊張していたのが嘘だったかのように自然な時間を過ごしていた。
 食べ終わったあとはひと息つくように他愛のない話をして、お店を出た。

 流れるように駅まで歩き、改札の前で立ち止まる。
 ここで、解散するのだろうか。今は十五時。遊びに来て帰るには早い時間だけど、他に目的はない。
 この後どこか行く? 私から誘う? 誘ったところでどこに行くかは決められない。
 パンケーキを食べただけで解散ってあっさりし過ぎてるかな?
 こういうとき、希月となら何も言わずに歩き出して適当にお店を見て回ったりするんだよな。
 
 頭の中でグルグル考えていると、山中さんが笑顔で私を見る。
 
「じゃあまた、月曜日に」

 手を振って改札へ歩き出す彼女に、私も胸元で小さく手を振った。

「うん。またね」

 正直、ホッとした。楽しくなかったわけじゃないのにどこか疲れを感じるのは、初めて遊びにでかける相手だったからだろうか。
 誘ってもらえたことは純粋に嬉しかった。山中さんとはこれからもっと仲良くなりたい。
 ただパンケーキの写真を見ているだけで誘ってくれたんだから、山中さんも私と仲良くなりたいと思ってくれてるってことだよね。

 きっと希月と過ごす時間は減っていくだろう。小さいころからずっと一緒にいるけど、このままずっと一緒というわけではないのだから。
 そうしたら私は一人になってしまうんじゃないかと不安だった。でも、希月がいなくても、私は一人じゃない。