恋にはならない愛の行方

 ——なんて考えが杞憂だったかのように、希月との日々はなんの変化もなかった。

「流羽(るう)~お昼食べよ」

 お昼休み、隣の教室からやってくる希月。私の前の席に座ってお弁当を広げる。
 放課後は必ず一緒に帰るし、私はいまだに彼氏だという先輩を見たことはない。

「ねえ希月、先輩とはお昼食べなくていいの?」
「うん。食べようとか言われたことないし」
「デートとかは?」
「今のところ予定はないけど」

 どういうわけか、私の想像する彼氏彼女とは違うようだった。

「カップルっぽいことしてないの?」
「んー。毎日電話してる」

 なんだ。仲良しじゃん。
 毎晩ベッドの中で彼氏と電話をする彼女を想像する。

「なにを話してるの?」
「先輩が飼ってる猫の話とか、化学の先生のカツラの話とか、そろそろ長袖シャツに変えようかとか、そんなどうでもいいような話」

 希月は、他には……とまだまだ話したことを教えてくれるものの、私はもう内容は頭に入ってきていなかった。
 そんなどうでもいいような話をできる相手だということだ。きっと気が合うんだろうし、居心地の良い関係なんだろうな。
 私はたまらず、いつもは最後に食べる卵焼きに箸を伸ばした。甘い卵焼きが胃のむかつきを助長せる。そのままふりかけのかかったご飯をかき込む。だんだん、食べ物の味がしなくなっていく。
 水筒の蓋を開け、お茶を飲む。
 
「——ぇ、ねぇ流羽聞いてる?」
「あ、ごめん」
「もう、流羽から聞いてきたから話したのに。面白くなかったよね。この話やめよ」

 たしかに面白くなかった。でもそれは、彼女が思っている“面白くない”とは違う意味だ。
 別に私たちの関係が変わったわけではない。幼馴染で、親友で、変わらずこうやって一緒に過ごしている。

 なのにどうしてか、すごく気に入らない。
 理由はわかっている。私が、一番じゃなくなったから。
 だからって、そんなことは言えなかった。嫌われたくなかったから。
 希月は私のこんな醜い感情なんて知らない。知られたくもない。