恋にはならない愛の行方

「え……?」

 大通りを外れて細い道を入っていく。
 タケダ屋とは、七十過ぎのおじいさんが営んでいる小さな駄菓子屋だ。
 小学生くらいまではよく百円玉を握りしめて二人で駄菓子を買いに行った。
 今は何か買うといったらほとんどがコンビニだ。

 私は手を握られたまま彼女の少し後ろをついていくように歩いていく。
 小さいころの柔らかい手とは違う、すらりと伸びた白い指。卵形に整えられた綺麗な爪。昔とは全然違うのに、強引な温もりだけはずっと変わっていない。

「タケダのおじさん久しぶりー!」

 お店に着くと手を離し、中に入っていく。人が一人通れるくらいの細い通路。昔ながらの駄菓子が並ぶ低い棚。
 希月がおじさんに声をかけると、奥のカウンターで小さく手を振り返してくれる。
 私も頭を下げ、軽く挨拶をした。
 それから二人でお菓子を見て回る。
 珍しいものは特にない。置いてある物のラインナップは昔から変わらず、変わることといえば販売終了となったお菓子が消えていくことくらい。
 欲しいお菓子があったわけではないけど、お店に入った以上買わなければいけないという心理が働くので、何を買おうか見て回る。
 
「あ、これこれ」

 希月が手に取ったのは、ねりあめだった。割り箸のような木の棒が刺さった丸く柔らかいアメ。青と黄色の二つをおじさんのところへ持っていく。お金を払うと、そのままお店の外へと出ていった。
 その背中に私は焦り、近くにあった五円チョコを一つ買った。
 高校生にもなって五円チョコ一つしか買わないなんて、と少しの罪悪感を抱きながらも急いで後を追う。

 希月はお店の前のベンチに座っていた。
 そうだ。お菓子を買ったあとはよくこのベンチで一緒に食べていた。
 青いねりあめの袋を外し、二本の棒を引っ張ったり回したりしてこねている。隣に座ると、黄色のねりあめを私に渡してきた。
 
「これ、流羽の」
「くれるの?」
「うん。ほら、小学生のころよく二つを混ぜて食べてたでしょ。あれやりたいと思って」
「ああ、懐かしいね」
 
 私は袋を外し、黄色のねりあめをしっかりねる。そして棒を左右に引っ張りあめが伸びたところへ希月が青いねりあめをサッと絡ませてくる。
 棒をクルクルと回し、床屋のポールのような模様になったところで私が伸びたあめを希月の持っている棒に巻き付ける。それを交互に繰り返し、ほどよいマーブル模様になったところで伸ばしきり、二つに分ける。

 完成した二色のねりあめに、顔を見合わせふふ、と笑う。
 正直、混ぜ合わせたところで味が変わるわけではない。それでも少しだけ美味しくなったように感じるのは、隣で嬉しそうにねりあめを舐めている彼女のせい。

 変わらない関係が心地よかった。
 物心ついたころから私の隣にいる希月。
 何度喧嘩をしても、自然と仲直りしてまたいつものように笑い合う。変わらない時間が一生続くと思っていた。
 そんなこと、あるわけないのに……。

 私より彼氏を優先するであろう近い未来に、嫉妬のような、苛立ちのような黒い感情がグルグルと混ざり合う。
 喜ばしいことのはずなのに、喜んであげられない自分に嫌気がさす。親友失格だ。
 これから彼氏と過ごす時間が増えて、私とは遊んでくれなくなるのだろうか。