「光岡、あの二人で写真を撮るやつ、終わったのか?」
休み時間。光岡くんの席に来た男子との会話が聞こえてきた。
聞いてはいけない。そう思っても耳を塞ぐわけにもいかず、近い席にいるわたしには自然と耳に入ってくる。
「ああ、あともう五人もいないはず。今月までに終わりたいから、少し急がないとな」
「ははは! ここまで残った選ばれし五人だからな!」
わたしは指先から頭のてっぺんまで凍り付いた。今月末というと、あと一週間ほどしかない。
間違いなく光岡くんは来月転校してしまう。いつもの彼なら、あと五人まで迫ったのだと胸を張って声を弾ませて自慢するに違いない。
どこか物憂げなのは、転校する日が近いからだ。
「そうだ! 米原さん! まだ写真一緒に撮っていないよね。席が近いからって、思っていたけど。今週中にでも、声をかけてよ!」
「あ、うん。分かった……」
突然声をかけられて、生返事しか出来なかった。
わたしは逃げられなくなる。もしも、わたしだけツーショット写真を撮らないとなると、光岡くんを悲しませてしまうだろう。
転校していくだけでも、悲しく寂しいことなのに最後の思い出さえ奪い取ってしまうかもしれない。光岡くんが完成出来なかったと肩を落とす姿は見たくない。
どれだけ不細工に写っても、ツーショット写真だけは絶対撮らないといけないんだ。
わたしが逃げていたせいで、友人たちはもう光岡くんと写真を撮っている。わたしと光岡くん、本当に二人だけで写真を撮るんだ。
考えただけで胸の鼓動が早くなる。光岡くんが居なくなることが悲しいことよりも、すぐに来る未来の、光岡くんと近づいて話すことが出来ることに気持ちが高揚しきた。
少しだけ目線を向けて、光岡くんの横顔を見る。目を細めて笑っている。ずっと見ていたいけれど、顔を正面に戻す。
わたしの気持ちを伝えるべきだろうか。
二人で写真を撮るときでないと、そんな機会は二度とないだろう。
伝えたところで気まずくなるに決まっている。すぐに会えなくなるけれど、きっとクラスのLINEは繋がったままだろう。
校庭と音楽室にいるときよりも、か細い繋がりだ。いっそのこと完全に切れてしまえばいいのに――そうしたら、きっと言えるのに。


