次の日から落ち着かない心地で学校に行くことになる。
相変わらず、光岡くんとはあいさつしかしない。光岡くんはいつものメンバーで楽しそうに過ごしている。
たまに廊下にいる人に声をかけていた。二人で写真を撮ることもあれば、逃げられることもある。その様子を見る度に、いつ転校してしまうのだろうと胸が苦しくなった。
吹奏楽部の子が光岡くんと写真を撮る日はすぐにやってくる。わたしは前の日に聞いていて、昼休みに二年B組の廊下の前で写真を撮ることを知っていた。
どうせなら、もっとわたしがいかないような別の場所で撮影会をしたらいいのに。トイレに行ったあと、光岡くんが女子三人に囲まれている所に遭遇して、そう思った。
「光岡くん、わたしクラス一緒になったことないけどいいの?」
「もちろん。よく飼い猫の話していたよね。あ! 盗み聞きしているって聞いてキモイ?」
「ぜ、全然! 良かったら見てよ!」
喜々として女子の一人がスマホを光岡くんに見せている。光岡くんから可愛いと言われて嬉しそうだ。
わたしは思わず立ち止まってしまう。女子三人は髪の毛をいつもより綺麗にとかしていて、滅多に話さない光岡くんと話せて興奮しているようだ。
きっと光岡くんは転校する前に、一つでも多くの思い出を残そうとしている。同級生とのツーショットを撮ることは、写真を残すと同時に一人ひとりと話すことが目的なのだろう。
それと同時に胸の奥がモヤモヤする。
女子は勘違いしている子が多いんじゃないだろうか。きっと写真を撮って告白している子は一人や二人ではない。
光岡くんは転校するから、きっと全て断っているだろう。
でも、もしかしたら本当は本命の子がひとりだけいて、あまり関りのない子で、転校前に少しでも話しがしたいから同級生全員と写真を撮っているのかも。
そう思うと不思議と納得と諦めがやって来る。
クラスでもモブのわたしが光岡くんと関わるなんて、身分不相応に違いない。
「あ。米原さん」
吹奏楽部の子がわたしに気づいた。光岡くんもわたしに視線を向ける。
そして、八重歯を見せて破顔した。
「米原さん! この前、話したよね! 一緒に撮ろうよ!」
とてもまぶしくて、今のわたしには直視できない。少しだけ下を向いて答える。
「ごめん。みんなみたいに、準備してきたわけじゃないし。……また今度」
「そっか。でも、米原さんとは隣の席だし。準備が出来たときに話しかけてよ!」
光岡くんはわたしに片手を上げて、スマホを斜め上に構える。
わたしは横を通り抜けて教室に向かう。
モヤモヤしていたはずなのに、今はもう心が晴れている。
光岡くんに笑ってもらえた。いつでもいいやじゃなくて、準備が出来たら話しかけてって言われた。
それだけで、足が軽くなってうずうずとステップを踏み出すのをなんとか堪えた。


