光岡くんとは同じ窓


 音楽準備室に戻って、吹奏楽部の練習が始まっても、わたしの指は思った通りには動いてくれない。上の空の練習が終わって、髪を結んでいたシュシュを外す。
「米原さん、まだ調子悪そうだね」
「あ、うん。ちょっとね」
 隣の同級生が話しかけてきても、生返事しか返せない。
「そういえば、米原さん光岡くんと同じクラスだよね。知っている?」
 心臓が跳ねたけれど顔に出さないようにする。転校することを本当は知っているのだろうか。
「光岡くん、面白いゲームをしているんだって。学年全員とツーショット撮るらしいよ。言ったら悪いけど、陰キャの子とかどうするんだろ」
「あ、うん。聞いたよ。……まだ、撮ってないけど」
「わたしも。実は日にちを決めて撮ろうって約束しているんだ。ほら、せっかくなら髪とかバッチリキメたいでしょ」
「そう、だね」
「米原さんもそうしなよー」
 どうしても撮らないといけないなら、それもいいかもしれない。転校する前に撮りたい写真をわたしだけ参加しないのは、光岡くんを傷つけてしまうだろう。
 でも、撮ったら終わりだ。そこで、光岡くんとの繋がりが朝のあいさつだけになってしまう。
「まだ、終わりたくないな……」
「ん? 何か言った?」
「ううん。また、明日ね」
 ケースに演奏していたホルンを入れて、部活をあとにした。