クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った

 俺と藤原さんがキングスライムの蹂躙劇に唖然としている中、ミンナが慌てた様子で俺達の元に走ってきた。

「魔法の威力が上がってる?」

「うん、ステータスの数値は変わってないのに、明らかにMPの減りは少ないし、魔法の威力は上がっているし……これってサイトウがいじったステータスによるものなんじゃないかな?」

「俺の方も……ミンナがモンスターを多く倒したからか、経験値が大量に流れ込んできて、レベルが12まで上がったんだよ」

「あとあの動き回ってるスライムはなに?」

「ちょっと色々こんがらがってきたから情報を整理していこう」

 ミンナを落ち着かせ、俺は木材から椅子を作り出して、3人で座る。

 まず経験値やレベルについてだろう。

 ミンナがモンスターを倒したり、俺がスライムを捕獲したり、キングスライム3体が他のモンスターを倒したり……これにより大量の経験値が短期間に俺に流れ込んできた。

 ミンナと別れて1時間程度で6レベルもレベルが上がった。

 ミンナのレベルを見ると、ミンナもモンスターを倒したからかレベルが10まで上がっていて、ポイントが溜まっている。

 で、俺が捕獲状態でステータスを弄ると、数値として見える普通のステータスとは別のアルファベットのステータスが通常のステータスに加算されている状態になるっぽい。

 どれぐらい加算されているかまでははっきりしないけど、ミンナの体感的に魔法の威力が1.5倍になった気がするって言っていたので、アルファベットのステータスをGからFに1段階上げると1.5倍になると考えることにする。

 後で試すが、ミンナの溜まったポイントを使ってFからEへと上げてみる。

 これで威力がどれぐらい上がるかの上がり幅が分かるはずだ。

「よし、試してみるね! ファイヤーボール!」

 火球を飛ばす魔法をミンナが放つと、バスケットボールくらいの大きさの火球が飛び出し、地面に穴を空けていた。

「うん、また威力が上がってる……宮廷魔道士の先輩達くらいの威力があるよ」

「体感でいいんで、いつもよりどれくらい威力が上がっているか分かるか?」

「うーんと……今で2倍くらいかも」

 ミンナの体感での判断になるけど、2段階で2倍、1段階で1.5倍の0.5の倍数で増えていくとなれば……3/2、4/2って感じで分母が2で固定で分子が1の計算だと……上限がAまでであれば7段階だから4.5倍、Sなら5倍までステータスの数値を上げることができるってことか? 

 ぶっ壊れやんけ……。

 例えばミンナのステータスの数値が

 HP 125
 MP 320
 パワー 105
 ガード 310
 マジック 756
 スピード 180
 ラック 75

 だから、マジックは1.5倍した段階で一流って言われてる1000の数値を突破するし、MPとガードも3.5倍で1000を超える。

 俺の仲間になっているという条件は付くが、これは破格だろう。

 恐ろしいのはこれが仲間にしたモンスターにも加算される可能性が高い点である。

 スライムだったら元が弱いから大したことないが、キングスライムになると、恐らくあの虐殺具合からして、高いステータスをしているだろう。

「ミンナ、正直に聞くけど……あのキングスライムに勝てるか?」

「魔法の威力が上がる前だったら厳しいかもしれなかったけど、今だったら魔法を連打すれば確実に倒せる」

「……ちょっと実験してみるか」

 俺はキングスライムを1体呼び寄せて、ミンナに倒しても良いからと魔法を連打してもらう。

 ファイヤーボールを10発食らうと、キングスライムは体が崩れ始めたので、俺はキングスライムを捕獲状態に戻す。

 すると回復中という表記が横に追加されていて、10:00:00ってなっていた。

 捕獲状態であれば仲間の自動回復効果があることも判明した。

 ミンナに今の威力の魔法を耐える体力ってどれくらいかって逆算してもらうと、体力が最低でも1000以上、ガードの数値が500以上はありそうとのこと。

 素早さもあれだけ速く動けているなら800くらいは硬いって言われたのでキングスライムの数値状のステータスはこんな感じか。

 HP 1000〜2000
 MP ? 
 パワー ? 
 ガード 500〜800
 マジック ? 
 スピード 800〜1000
 ラック ? 

 これがスライム32体で作れるって破格すぎる。

 ミンナ曰くここらで一番強いイエローベアーでこの数値らしい。

 HP 600
 MP 50
 パワー 800
 ガード 300
 マジック 50
 スピード 250
 ラック 50

 パワーでは負けるかもしれないが、数がいれば完勝できる数値はありそう……合成の威力恐るべしって言えば良いか? 

「で、キングスライムに走り回らせていれば、スライムの魔石や他のモンスターの素材を集めてくれるんでしょ?」

「ああ、ちょっと集まれ」

 俺はモンスターを倒していたキングスライム2体を招集し、素材を吐き出させる。

 ぺぺぺ

 スライムの魔石に角うさぎとデブスズメの亡骸が分別されながら並べられ、数を数える。

「スライムの魔石は250個、角うさぎが25羽、デブスズメが20羽……うーんと合計1万350シンクかな? シルバー冒険者のパーティ並みに稼げてるよ」

「ちなみにシルバー冒険者のパーティって1日でどれくらい稼ぐの?」

「5人パーティで5時間戦って5万シンクくらいかな?」

 俺は異空間に収納しながら、ミンナの話を聞くと、どれだけ恵まれているかが分かる。

 言っちゃ悪いがスライムに自動収集させているだけで1時間当たりキングスライム1体が約5000シンク稼いでいる状態だ。

 ヤバい……異世界生活が一気にヌルゲーになった。

「うーん、ヤバいな」

「ヤバいね。私的にはラッキーだけど」

「私も勇気を出して斎藤君の仲間になってよかった……」

 これで経験値も入るのだから笑いが止まらない。

「そう言えばレベルが上がって何か新しい技は覚えたの?」

「あ、そうだな……」

 俺はステータスを確認する。

 名前 サイトウ・タカシ
 年齢 17
 性別 男
 職業 農家/ファーマー
 レベル 12
 体力 E
 気力 F
 知力 E
 器用 D
 筋力 D

 技
 ・捕まえる
 ・合成する
 ・鍛える
 ・道具を作る
 ・収納する
 ・大豊作

 ステータスが全体的に上がっているけど、鍛えていた器用と筋力が優先的に上がっていた。

 で、新しい技は大豊作……。

「「大豊作?」」

「よーやく農家らしい技を覚えたな……」

 拡大して説明を読んでみるとこう書かれていた。

 大豊作……指定した範囲の植物を大豊作状態へと変化させる。

 1度使うと20時間のクールタイムが必要になる。

 範囲の広さは気力のランクで判定する。

「うーん、ちょっと現状使い道が分からないな……ミンナは何か思いつく?」

「そうだね……植物……あ! ステータスの種を増やせるかも」

「ステータスの種?」

「うん」

 1粒5万シンクする高価な種で、体力の種、魔力の種、筋力の種、防御の種、速さの種、幸運の種が1粒食べるごとに10上がるというヒマワリの種みたいなのが冒険者ギルドで宝くじ感覚で売られているらしい。

「それを兵士とかに配らないの?」

「種の色や形が同じだからどの種か分からないのが1つ、育てる難易度がべらぼうに高くて、あんまり量が流通しないのが1つ、宝くじみたいに売ることで金を集めるほうが国の為になるのが1つ……一気に食べてステータスが上がっても、体が馴染むのに数週間かかるから即効性がないってのもあるね」

 ステータスの10という数字は頑張れば数週間で上げられる数字なので、ランダムに10のステータスを5万シンクも支払って上げるくらいなら、普通に生活費とかに充てたほうが良いってのが一般の考え方とのこと。

 でも全ての植物が対象であるなら、ステータスの種を試してみる価値はあるんじゃないかなってミンナは言う。

 この調子なら1個買うなら1日スライムにモンスター倒し続けてもらえれば貯まる金額なので、今日の換金が終わったら試してみよう……ということになった。

「う、うん……初日から大健闘じゃないかな?」

「滅茶苦茶大健闘でしょ……お金って分配どうする?」

「あー、決めてなかったけど、均等分配で良い?」

「「え? いいの?」」

 ミンナと藤原さんが口を揃えて言う。

 現状稼げているのは俺の能力由来なので、藤原さんは良くて1割、最悪宿代くらいしか出ないことを覚悟していたらしい。

 でも、俺は均等分配を選択した。

 理由は単純に、それが仲間に対して信頼に繋がるからである。

 勿論今日みたいに目標金額があり、それを買うために資金を集中させることはあるかもしれないが、仲間の信用を得るために、なるべく誠意を見せていきたい。

 親父が言っていた。

 農業は仲間とやるものだと。

 田んぼは地域で機材を貸し出しあって、皆で田畑を整備する。

 1人が辞めれば、その人の土地が荒れれば他の田んぼも荒れる。

 これは良くないのである。

(親父の金言だな……まだ出会って数日のミンナにクラスメイトだけどしっかり話したのは昨日からの藤原さん。好感度っていうのは見えるけど、信用を少しずつ稼いでいかないと……均等分配で稼げるのならそれに越したことはないだろう)

「今日は能力の実験のためにステータスの種を買うけど、明日からはしっかり均等分配にしようと思う。基本お金に関してはとやかく言わないから自由に使う感じで……ストレス溜めたくないからさ」

「う、うん……気を使ってくれてありがとう……斎藤君と仲間になれてよかったよ」

 そう言ってもらえるだけで嬉しかった。






 その後、ミンナやキングスライムに手伝ってもらって、角うさぎ数羽とデブスズメを数羽捕まえることに成功。

 スライムよりは捕獲率は低いけど、それでも弱らせれば80%を超えていたので、1回レジストされても2回目にはほぼ捕まる。

 で、捕獲していって分かったが、同種として手持ちでいれる個体数は30匹が限界っぽい。

 なので、スライムを32匹集めてから一気にキングスライムにするっていうのは無理だった。

 毎回途中で合成? 進化? したスライムにしなきゃいけない。

 つまりキングスライムも30体が限界で、それ以上は効率が悪いと考えた方がいいっぽい。

「でも合成は気を付けた方が良いと思うよ」

「ん? どうして?」

「キングスライムはスライムの頭に王冠が乗っているだけだから一見見分けつかないから素早いスライムがいるってだけで済むけど、他の合成したモンスター……大型のモンスターになる可能性があるじゃん。そんなのが町の近くに現れたってなったら一騒動起きると思うよ」

「確かに……となると大きくならないモンスターと合成した方がいいのかな?」

「そんなモンスター居ます?」

 藤原さんもミンナに聞く。

 するとミンナは、

「妖精ってモンスターが近くに湧くことがあるんだけど、その大きさが親指サイズだから合成しても、大きさを制限することができるんじゃないかな?」

「おお! じゃあ今度妖精を捕まえよう!」