クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った

 俺は捕まえた藤原さんのステータスを確認する。

 名前 フジワラ・アヤノ
 種族 人族
 年齢 17
 性別 女
 職業 家事手伝い/内助の功
 健康 良好
 好感度 30/100

 レベル 1
 割り振りポイント5

 HP G 0/5
 MP G 0/5
 パワー G 0/5
 ガード G 0/5
 マジック G 0/5
 スピード G 0/5
 ラック G 0/5

 やはりというかステータスが違う形になっている。

 この状態だと、俺はステータス画面を拡張することにより詳細を調べることができる。

 つまり藤原さんのよくわからないと言っていた特殊能力の一端を見ることができる。

『内助の功』

 これに視線を向けて拡張すると、こう表記された。

 対象が好意を持っている異性の能力にバフを与える。

 好感度が高いほどバフの倍率は高くなる。

「なるほど……戦闘向きではないけど、補助役としては相当強いんじゃないか? 藤原さんの能力」

 もっとも、俺の能力にバフが掛かったらどうなるか分からないし、俺に好意を持ってくれるか分からない状態なので、何とも言えないが……。

「せっかくだし、2人共に鍛えるを行うか……」

 ミンナと藤原さん2人が捕獲状態なので、ついでにレベル上げをしておく。

「一気にレベルを上げるとなると、時間経過分数も多くなるのか」

 ミンナを2レベルから4レベルに上げるのには5分、藤原さんを4レベルに上げるには6分の時間が必要らしい。

 それぞれタイマーを起動すると、2人の表記が鍛錬中に切り替わり、俺は待っている間に、再び元木刀を色々な道具に変えて経験値を稼ぐ。

 ちょうど藤原さんのタイマーが終わった時に、俺のレベルが5へと上昇。

 そして新しい技を覚えることができた。

『収納する』

「収納する……明らかにアイテムボックス的な役割だよな?」

 俺はその欄を凝視して拡大する。

 収納する……道具を収納することができる。

 収納できる重さは自身の体重×レベル分。

「なるほど?」

 俺の場合75キロだから、今レベルが5で5倍すると375キロまで収納できるってことか? 

「というかレベルが上がれば技を覚えられるって……より育成ゲームみたいになってきたな……俺だけ」

 言っちゃ悪いが、俺だけ特殊能力が増えていくって感じだ。

 これだいぶヤバいんじゃないか? 

「よっと……確かにヤバいね」

 俺の後ろからミンナの声が聞こえたので、振り向くと、ミンナが姿を現していた。

「意識すれば、自分でも外に出られるっぽいね。あとフジワラとは捕獲状態でも念話みたいな形で互いに意思疎通をすることができるっぽい。遮断しようと思えば遮断もできるわね……フジワラ聞こえてるんでしょ。出る意識を強く持って外に飛び出す感覚で」

「えい!」

 すると藤原さんも外に出てきた。

「出れた……」

「ね、言ったでしょ」

「うん」

 藤原さんとミンナで話していたらしく、俺が新しく技を覚えたのも見ていたらしい。

「収納系の能力を覚えたの? 自前で覚えるのは珍しいわね」

「自前じゃなければ覚えられるのか?」

 ミンナの発言に疑問を抱く。

「いや、錬金術師達がミミックってモンスターを加工することで、外観よりも内容量の大きいバックやポーチを作っていてね。あと少ないけど能力として収納を扱う事ができる人物は居るから……そんなに警戒する様な能力ではないかな」

「よかった……」

 これで貴重な能力だから拘束する……とか言われたらどうしようかと。

「まぁ、特殊能力を後天的に覚えられるっていうのは本当に珍しいんだけどね」

「上に報告するか?」

「しないわよ。したところで面倒くさいことになるだけだからね」

 ボソッと、無理やり召喚させられて、拘束なんかしたら、他の人達も警戒してしまうだろうし……とミンナは呟いていた。

 いい人だ……。

「でも鍛えるって選択されると、強制的に眠らされるみたいで……終わった後に体の不調が全部取り除かれたみたいにスッキリしますね」

「分かる。気持ちいいよね」

 藤原さんとミンナは鍛えるについてそう表現していた。

 生憎自分自身を鍛えることはできないので試しようが無いが……。

「さてと、サイトウ。今後の動きはどうする? 幾つか選択肢はあるけど」

 ミンナが言うには勇者以外の人はなるべく城から早めに出ていってもらいたいのが上層部の希望らしい。

 勇者育成に労力を集中したいというのと、共謀して暴れられたら困るというのに尽きるらしい。

「早めに出るなら支援金を交渉して少し上乗せすることくらいはできるけど」

「……早めに動くのが吉か? 藤原さんはどう思う?」

「あの……支援金は召喚された人1人に対して2万シンクでいいんでしたっけ?」

「ええ、そうよ」

 ミンナが藤原さんの質問に答える。

「ちなみに宿が1泊400シンクって聞いたが、それが相場の値段か?」

「素泊まりの宿がそれくらいね。風呂付きが500シンク、朝食と夕食が付いて600シンクくらいが相場かしら」

「風呂あるのか」

「ええ、過去の召喚された異世界人が風呂に凄いこだわりを見せて、病気を抑える観点からも各地の町に宿か公衆浴場が作られているわ」

「すげーな異世界」

 この国では風呂が主流だが、他国はシャワーが主流だったり、蒸し風呂……サウナの様な物が主流だったりとバリエーションが色々あるらしい。

 俺たちが今居る部屋にもシャワールームが付いていて、寝る前に浴びることができたのでありがたかった。

「それに食事代金や雑費を加味すると1日800から1000シンクくらい使うことになるのか?」

「そうね……それくらいが一般的かしら」

「冒険者のアイアンランクだとどれくらい稼げるんだ?」

「依頼によるけど、軽作業で1日700シンクくらい、肉体労働で1000シンク、モンスターの討伐だと一般的なアイアンのパーティで800シンクくらいかしら」

「うーん……なるほど」

 俺は色々悩んだ末に、金額に余裕があるうちにモンスターの討伐を一度経験し、ダメそうなら俺は肉体労働、ミンナと藤原さんに軽作業をしてもらって食い扶持を稼ぐって感じが良いのかなぁと考えた。

「よし、支援金が多くもらえるうちに出る。ミンナは明日朝食後に俺と藤原さんは城から出ることを伝えてくれ。できれば支援金を増額よりこの世界の衣服を支給してもらえると助かるんだが」

「わかったわ。それくらいなら許可されると思うから任せて」

「私は自室に戻った方が良いかな?」

「その前に、互いの事をもう少し知りたい。藤原さんと俺クラスメイトでもあんまり喋る関係じゃなかったし」

「そ、そうだね……色々教えないと……」

 というわけで、ミンナは部屋を出て交渉に向かい、俺と藤原さんは互いの事を知るために話し合いを続けるのだった。





「さてと、俺の実家は農家だ。弟が1人、両親と爺さん婆さんが居て、牛と鶏の飼育と米や野菜を作っていた。俺の体臭というか、毎朝シャワーを浴びてから登校していたけど、どうしても牛や鶏の臭いがな」

「う、うん……匂いに関しては前から知ってたし、皆触れないようにしていたよね」

「周りに迷惑かけたと思ってる。藤原さんも不愉快に思ってたらごめん」

「い、いや……そんなこと思ってないよ……でもそっか……毎朝ギリギリで登校して、早く家に帰るのは実家の事があったから?」

「そうだな。家族経営だと俺も戦力だったから……どうしてもな」

「じゃあ実家に帰りたいって思いは一際強いんじゃないの?」

「強いは強いけど、藤原さんには言っておくか……多分園田が魔王討伐に成功しても、俺らは帰れないと思うぞ」

「え……」

「理由を話す」

 俺はミンナや衛兵のタジマさんから教えてもらった、過去の勇者と共に召喚された人達の多くが、帰還ではなく土着することになったこと、勇者を送り返すのにも膨大な魔力を消費すること、そして帰ったとしても時間は経過しているから、社会的に死んでいることになっている可能性が高い事を説明する。

「そっか……帰れないのか……」

 藤原さんは複雑な表情をしていた。

「あのね、斎藤君。私ね」

 藤原さんは自身の事を語り始める。

 彼女の親は学歴至上主義みたいな感じで、上にできる姉が2人居て、末っ子として育ったが、姉達の様に勉強ができなかった藤原さんは家で居場所を失いつつあったらしい。

 そして大学受験も自身の身の丈に合わないところに受験させられそうになっていたので、無理をして勉強をしていたらしい。

「正直異世界に転移して……解放感の方が強かったの。親や姉達に会えない悲しみよりも安堵の方が先に来て……薄情かな?」

「いや、誰しも辛い思いをしていて、それから解放されたら安堵が来るのは分かる。それに藤原さんは優しい性格をしているよ。普通ストレスから解放されたら松田みたいになるやつも居るし」

「松田さんはちょっと……」

 まぁあのノンデリ発言のオンパレードだった松田は心底どうでも良いが、例えとして出すにはちょうどいい。

「ストレスから解放されても周りを気遣っていた藤原さんは偉いよ。それに俺の仲間になったからには責任を持って守るから」

「斎藤君……」

「とはいっても、俺も非戦闘職。何処までやれるか分からない点が大いけどな」

 その後は互いに小学校、中学校、高校でどんなことをやっていたか、得意な事は何か、趣味は? ……と色々聞き合う。

「斎藤君、ライトノベルを読むのが趣味だったんだ……ちょっと意外」

「俺的には藤原さんが家事全般が得意ってのが驚いた。よく勉強優先な家庭環境で家事得意になったね。職業にも表れているけど」

「うん、両親も忙しかったから、自然と自分で自分のことはしなくちゃいけなくて、学校から帰ったら買い物して、家族の分の料理を作ったり……それくらいしか家族で役立てなかったから」

「いや、この世界だと料理ができるっていうのは大きいよ。俺のレベルが上がれば鉄の道具も作れるようになったら、フライパンとか包丁とかも用意できるかもしれないし……この世界で何処まで元の世界の料理が作れるか分からないけど、料理を作れるってのは武器になる」

「そ、そうかな?」

「そうだよ……と、結構話し込んだな」

「そうだね、2時間くらい話していたかな? お互いを知ることはできたね」

「昼食食べに行こうか」

「うん!」

 藤原さんと仲が深まる感じがした。

 彼女となら上手くやっていけそうだと俺は確信するのだった。