クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った

 錬金術のお店でアイテムボックスを購入した俺達は、服屋が連なっているエリアへと移動した。

 町の区画整理というか商店の場所が決められていたりするのか、同じ種類の店は比較的同じ場所に連なっていたりする。

 いい例が、南地区の宿が連なるエリアだろう。

 俺達が泊まっている月風亭もそうだが、持家がない冒険者だったり、町の外の住民は南の地区に隔離されているようにも思える。

 逆に北地区は貴族達が住む高級街は町の中でも入るのに門があったり……。

 身分差によって住む場所が決められているっていうのは日本でもあったし、そういうものと割り切ることができるが……。

 そんな事を考えながら1軒目の服屋に入ると、ここは一般人向けの作り置きしている量産品が並べられているらしく、日本のチェーン展開されているアパレル店みたいに並べられていた。

 動くマネキンが複数体展示されていて、今の季節の流行りの洋服を着用していたりする。

 マネキンというよりはゴーレムか。

 ゴーレムに指示を出すとポーズを取ってくれるので、動いた時にどう見られるかの服装を確認することもできる。

 一応試着もできるっぽい。

 ここまで洋服が発展しているのに、ブラジャーの値段が高くてあまり普及していないっていうのはちょっと違和感があるが、洋服の値段を見て納得した。

 飯関係は値段が安かったが、洋服は値段が高い。

 量産品の半袖のTシャツで1着400シンクもする。

 少し質の良い下着なんかは600シンクがざらである。

 ミンナに洋服の値段高くねって聞くと、値段の高い理由は職人が1着1着工房で作っているからであり、オートメーション……機械による自動化がされていないことや、化学繊維に近い素材は錬金術師達のクランと国側で価格の統制が行われているらしく、値段がどうしても高く成りがちであるらしい。

 後は魔王との戦争の影響で、この国の服は前線国の支援物資として優先的に送られているので、どうしても値段が高止まりしているとのこと。

 複数の要因で値段が高くなっていた。

 これなら俺が錬金術師から繊維素材を買って、洋服を作ったほうが金は掛からないし、数を作ることができる。

 店内を見渡して、服の感触を確かめたりしながら、俺は店員にカタログとかあるか聞き、カタログを購入すると、女性陣には1着、サイズの基準となる上下それぞれの服を買ってもらい、それで撤収することに。

「一応他のお店も見てみるか」

「そうだね」

 藤原さんも洋服のあまりの値段の高さに驚いていので、購入はあまりせずに、普段着で使いそうな上下1着ずつ購入するにとどめていた。

「洋服ってこんなものだと思うけどなぁ」

「私も15年前の知識と庶民の皆さんの価格はあまり分からないので……」

 ミンナはこんなものだと割り切り、マリーは基準がわかってない様子。

 とりあえずその後数店舗洋服店を巡り、実物を見たり、カタログを購入して撤収。

 結局その後俺達は洋服屋ではなく、糸や布を取り扱っている裁縫屋に移動していていた。

「いらっしゃい」

 工房と連結しているからか、奥から機織り機を動かす音が聞こえてくる。

 布地を作るのは全自動ではないが、半自動って感じかな? 

 魔石の力で機織り機が動き、それに女性の職人達が一定の感覚で糸を通して布を作っている。

 後は染料で染められた糸が天日干しされていたりと、独特な匂いがする店でもある。

 とりあえず俺は各色の糸と布を注文。

 この店では錬金術を用いない植物由来の品を扱っているので、綿製品が中心。

 それを数十着服が作れる量を購入する。

「町で作った服は売れないよ」

「いえ、地元の村に持っていくので」

「なんだ買い出しか。それならじゃんじゃん買っていっておくれ!」

 普通に嘘を付いたが、売るつもりは全くないので目をつけられることはないだろう。

 服は現在古着以外は国から価格統制と売買の制限がかけられているらしく、この町で業者を通さないで服を売った場合罰金刑に処される可能性があり、ピリついているらしい。

「たまに居るのよ。素材を買って服を勝手に売る人が……自前で満足するなら別だけど、売買は規制されているからねぇ……あ、町以外の場所だとそんな統制が厳しくないから、村で売る分まではとやかく言われないからね。うまくやりなさいよ」

 と、店員のおばちゃんに言われてしまった。

 そして、再びアイテムボックスを購入した錬金術のお店に戻り、今度は化学繊維みたいな糸束と錬金術師が作った染料を購入する。

 俺の予想通り、これなら値段が5分の1以下で済む。

 ちなみにシノンからも裁縫屋の店員と同じように、町で服を売ったら犯罪だからねと釘を刺されたが、どんだけ信用ないんだよ……まぁ信用も無い人物が規制品の素材を大量購入したら警戒されるか……。

 ちなみに売買が規制されているだけで譲り合いだったりは大丈夫とのこと。

 まぁ俺も私生活で使う以上は現状取り扱う予定は無いからな……。

 もしかしたら新しいモンスターを捕まえるために行商人まがいの事は後々するかもしれないが、その時はその時で考えるとしよう。






「マーヤさん、昨晩言っていた新加入の子」

「マリーです。よろしくお願いします」

 宿に早めに戻った俺達は女将のマーヤさんに今晩から泊まることになるマリーを紹介した。

「あらあら、可愛らしいお嬢さんね……昔王族に居たマリー姫に似ているわね……同じ名前だしもしかしたら生まれ変わりだったりして」

「あはは……」

「そんなわけないわね!」

 いや、その人本人なんだが……まぁ言う必要は無いので愛想笑いしておく。

「昨日言われた通り、2人部屋は空けておいたわ。荷物は今日中に移動しておいてちょうだい。ミンナが滞在していた部屋は明日全部綺麗にしちゃうからね」

「分かりました。じゃあ買った物を部屋に置いたら、一度ミンナの部屋に集合して、荷物の移動手伝いで」

「あ、私の荷物そんなに無いから大丈夫。アイテムボックスに詰め込んだら一瞬で運び出せるし」

「そうか? じゃあ2人部屋の方で待ってるから」

 各々荷物を自室に置いて移動する。

 荷物と言ってもアイテムボックスを設置するくらいか? 

「これでよしっと」

 廊下にインベントリに仕舞っていた皆の分のアイテムボックスを置いて、各々自室に持ち込んでいく。

 俺も自室にアイテムボックスをクローゼットの中に置くと、ちょうど並列置きで2個入れられるスペースピッタリだったのでいい感じに置くことが出来た。

 そのままマリーとミンナが滞在する部屋へと移動して、今日各服屋で買ってきたカタログをマリーに見せる。

「材料あるからカタログに描かれている商品指定してくれれば、今から作るから、どんどん言ってくれ」

「便利な能力ね」

「洋服作ったりするのも俺に経験値が入るから修行みたいなもんだ。気にせずにな」

「それじゃあ」

 マリーはとりあえず下着類からチョイス。

 出来れば肌触りが良い素材で作って欲しいって言われたので、錬金術で作られた糸をチョイス。

 下着類は綿製より錬金術の糸の方が良さそうかな? 

「うん、7着有れば大丈夫かな?」

「後は外着だな。冒険者として活動する服装と普通の私服、あと寝間着がそれぞれ3着ずつ有れば十分か?」

「冒険者の服装ってどんなのがいいのかしら?」

「うーん……それは俺に聞くよりミンナに聞いた方が良いな。ミンナと藤原さんが来るまで寝間着から考えておいてくれ」

「わかったわサイトウ!」

 ちなみに俺も服は作る。

 変えのパンツとか寝間着のTシャツとか……ミンナが城を出る時に支給品として提供してくれたが、洗濯で縮みやすかったり、サイズが微妙に合ってなかったりしたので、この際一新しておこうと思い、俺のサイズに合わせた服を新調していく。

 服を作っては折りたたんでを繰り返していると、藤原さんとミンナも部屋に入ってきて、各々服をカタログから選び始めた。

「服まで作れる様になるって便利な能力だよね」

「俺もそう思う」

 ミンナの問いかけに俺はそう答え、ついでに予備の運動靴も追加で皆の分作っていく。

 ミンナ曰く、革靴よりも履き心地が良くて、動きやすいと好評である。

 藤原さんとマリーも特に靴擦れとかもないって言ってくれたのでホッとしていた。

 女子達で盛り上がっている中、俺は黙々と言われた服を作り、たまに着替えてみてどうかなーって言われるので、こっちのデザインの方が似合うような気がするけど……と基本前提で、時々アドバイスをすると、藤原さんは、

「斎藤君ってこういう服が好きなんだね……」

 と呟いていた。

 まぁ俺の好む服は清楚系かシンプルな服である。

 実家が農家だからデザインより機能美の方が目に行くからな。

 ミンナの場合は体型が気にならないような服装……ちょっとぶかっとした服を帯とかベルトで縛る服装が似合うがマリーと藤原さんは結構どんな服装でも似合う。

 マリーは金髪に銀の瞳、絹のように白い肌と少女体型なこと以外は完璧であり、子供アイドル的な可愛さがあるので、フリルが付いた服とかが結構似合う。

 藤原さんは長い黒髪で日本人の中の大人な美女って感じ。

 大学生が着るような服装は大抵似合う。

 逆にスーツとかは似合わないかもしれないかな? 

 ちょっと童顔な感じだし。

 目を隠さなくなった藤原さんは一番似合うのは高校の制服かもしれないけど……。

 そんな感じで各々着替えたり欲しい服を選んで作り続けること60着。

 あっという間に今日買った服の素材が無くなってしまった。

「もう素材がありませーん」

「楽しかった! ドレス以外の服って選ぶただけでも楽しいのね!」

 マリーからドレスしか着たこと無かったナチュラル王女様発言が飛び出したりもしたが、俺も自分が作った服を女性陣に着てもらって喜ばれるのは嬉しかった。

「素材から作ったらもっといいものが出来たりして……」

「斎藤君?」

「あ、いやなんでもない。また染料と糸や布を買ってくるから金貯まったらまたやろうか」

「「「うん!」」」

 楽しい服選びの会だった。