クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った

 町に戻った俺は冒険者ギルドにて依頼の10時近くなるまで、酒場のカウンター席に座り、適当なジュースを注文してギルド内の様子を観察していた。

 現在時刻は7時30分。

 掲示板に張り出された新しい依頼を見つめる人だかりができていた。

 この時間は若い人達が多い様で、俺より歳下の少年少女だったり、俺と同じくらいの青年達が簡単そうで報酬が良さげな依頼を取り合っている。

 比較的ゆとりがある冒険者達はそんな若輩達を見ながら椅子に座って他のパーティーの人達と情報交換をしたりしている。

「異世界転移物だとここらでチンピラがちょっかいを出してきたりするんだが……そんな感じの輩は居ないんだよな」

 勿論強面の男性やスキンヘッドのお兄さんとかはいるが、彼らは掲示板に群がる若輩を見て、俺達もそんな時期があったなぁって浸っていたりするだけで、ちょっかいをかけようとは思わないらしい。

「青年、見ない顔だがよそ者か?」

 声をかけてきたのはガラスのコップを磨いているバーテンダーの様な男性だった。

 まだ酒を提供する時間じゃないので暇なのだろう。

 それかこの時間からジュースを飲んでいる俺が珍しいのか……。

「ええ、数日前にこの世界に来て」

「世界……ああ、異世界人か。勇者の召喚に成功したとお触れがまわっていたから……そうか難儀だったな」

「ええ、巻き込まれた側なのでたまったものではありませんが」

 キュッキュとガラスと布が擦れる心地よい音が響く。

「どうだこの世界は……前の世界と比べて」

「悪くはないですね。家族と離ればなれになった点はマイナスですけど……生きていけるとは思えました」

「ほう……優秀な能力でも授かったか?」

「ええ、まぁ」

「深くは詮索しない。語りたければ語れ」

「じゃあ遠慮しておきます」

「それが利口だ」

 俺は追加のジュースをいただく。

 スッキリとしたりんごと梨を合わせた様な味がするジュースを飲む。

 この町の近くで多く収穫される果実なのらしい。

「勇者は魔王を討伐できそうか?」

「そもそも魔王について俺は殆ど知らないのですが」

「ふむ、私が知っている限りだと」

 バーテンダーさん曰く、魔を統べる王で世界を破壊に導く存在。

 人間とは敵対し、文明の破壊者。

 力でモンスターを統べる混沌の王。

 こう呼ばれているらしい。

 魔人と呼ばれる存在の一部も魔王に協力し、人類に牙を向けているらしいが、そのせいで罪のない魔人や魔族と呼ばれる人々も迫害を受けていたり……それが返って魔王に協力する人物を増やす悪循環が国によっては発生していたり、実際に侵攻を受けて滅んだ国もあるのだとか。

 今は全人類の国家が協力体制で魔王軍に対応しているらしいが、うちの国でも多くの若者が義勇兵として戦地に行ったり、多額の支援金や支援物資を前線国に送っているのだとか。

 ここらへんはミンナから聞いたな。

 バーテンダーのおじさんはお陰でこれでも冒険者の数はだいぶ減ったと言う。

「この賑わいで減ったのか」

「ああ、減った。特に中堅やベテランがな。各所の町で義勇兵が募られ、少なくない数の若者が兵士に取られた。この町の冒険者ギルドは回っているが、他の町は冒険者の数が減って需要と供給のバランスが崩れ気味だ。そこを稼ぎ時と判断したパーティーは拠点をこの町から別の町に移して……て感じだ」

「なるほど」

 別の町がどんなものか興味が湧いてくるな。

 ここら周辺のモンスターを全て捕まえたら、移動してもいいかもしれない。

 ミンナから言われた俺の能力を最大限活かして金稼ぎするなら行商人が向いているかもしれないという言葉も引っかかる。

「ごちそうさま。料金ここに置いておきますね」

「あいよ、仕事頑張れよ」








 バーテンダーのおじさんと話していたらちょうどよい時間になり、10時少し前に建材屋に到着。

 店主のおっちゃんが、

「おお、よく来てくれた。じゃあ地図と運ぶ建材を教えるから、運んでくれ」

 指示された通りに俺は建材をインベントリの中に収納していく。

 だいたいは木材や石材。

 1回の移動では運びきれないので、1つの依頼場所を何回か往復する必要がある。

 レベルがもっと高ければこんな事をしなくてもいいんだが……。

 俺は走って指定された場所に行く。

 大抵建築予定地だったり、中途半端に組み立て途中だったりするのでわかりやすい。

 1カ所回る度に5往復くらいしなければならず、現場に到着して数分休んだら、まだ建材屋に戻るを繰り返す。

 そうこうしていると、キングスライム達やミンナと藤原さんが頑張っているおかげか、経験値が入ってきて、レベルが上がっていく。

 走り続けているせいかステータスの体力がよく伸びる。

 レベルはこの建材運びが終わるまでに23レベルまで上がり、体力のステータスが2段階、気力のステータスが1段階上がった。

 レベル 23
 体力 B
 気力 D
 知力 E
 器用 D
 筋力 D

 体力のステータスが伸びたおかげか、途中から走っているのが少し楽になったが、ただそれだけ。

 結局クタクタに7時間ぶっ通しで働いて、夕方になってしまった。

「おう、兄ちゃんお疲れ」

「ど、どうも……」

「いや~助かった。ほい、今日の依頼料金」

 3000シンクの報酬が支払われる。

 走るのは辛いけど、日給3万円って考えれば十分高いな。

 モンスター狩りでそれ以上に稼げてしまっているから金銭感覚が狂うが……。

 宿代6日分を1日で稼げたと考えれば十分過ぎるだろう。

「もう数日頼むがいいか?」

「ええ、これだけ貰えるのなら全然やりますよ」

「そう言ってもらえると助かる」

 建材屋のおっちゃんとは特にイベントとかも無く、会話はそれで終了。

 俺は急いで平原に戻り、ミンナと藤原さんを迎えに行くのだった。






「おお、繁ってる」

 キングスライムに乗って移動をし、朝薬草畑を作った場所に向かうと、大豊作を指定した範囲に大量の薬草が生い茂っていた。

「遅かったね」

「依頼が思ったよりも長引いて……たぶん数日こんな感じになりそう」

「そっか、明日からは私達この時間まで待たないで、早めに町に戻ろうかな」

「了解、俺も依頼が終わったらキングスライム達を回収してから冒険者ギルドに向かうから、宿で合流で良いか?」

「うん、問題ないよ。フジワラもそれでいい?」

「はい、ミンナさん」

「よし、決まり!」

 それとミンナと藤原さん、それにスライム娘が薬草をある程度収穫してくれていたので、それをインベントリに移し、あとキングスライム達が集めてくれたスライムの魔石も回収する。

 そして冒険者ギルドで売っている周辺地域の地図に今日作った薬草畑の位置を書き込み、これを冒険者ギルドで売ればちょっとは金になるだろう。

 ルンルン気分で、再びキングスライムに乗って町近くまで移動するのだった。





 冒険者ギルドに到着し、俺は換金に向かうと、意外な人物とはち合わせした。

「ん? 斎藤か?」

「後藤じゃん」

 後藤とその取り巻き、そして見知らぬ女性2人の5人で換金場所の列に並んでいた。

「後藤達も冒険者になったか」

「ああ、昨日城を出て、今日から冒険者になってな……いやぁ稼ぐの大変だな」

 後藤曰く取り巻きの2人と監視役の女性2人の5人でパーティーを組み、今日はスライム狩りをしたらしいが、稼げた金額は3000シンク。

 今日の宿代で消えてしまう金額だってボヤいていた。

「斎藤はどうだ? 上手くいっているか?」

「う、うんまぁ」

 戦闘職の後藤達より稼げているとは言いにくい。

 今日はスライムの魔石の換金は止めておこう。

 薬草だけでも十分な稼ぎだ。

「薬草200束で1万シンクになります」

「はい」

 換金場所のお姉さんからお金を受け取る。

 後藤の取り巻き達は羨ましそうにこちらを見ているが、後藤が他2人を注意していた。

「はぁ、クラスメイトってだけで助け合う理由にはなるか……」

 俺は後藤に近づき、

「後藤これやるよ」

「これは……地図か?」

「印の付いている場所に薬草の群生地がある。ちょっと遠いが数日は取り切れない数薬草が生えているから行ってみると良い」

「そんなお前に悪い」

「いいんだ。俺は別に仕事を受けてっからパーティー分の宿代は養える。クラスメイトが困ってる姿を見る方が気分が悪くなるからな」

「……恩に着る」

「ああ、後藤達なら装備さえ整えてしまえば、スライムよりも強いモンスター狩れるだろ。あとこの町は物価が高いらしいし、魔王との戦いで他所の町は冒険者不足で結構稼げるらしい。場合によっては拠点を移動してもいいかもな」

「そうなのか? 情報助かる。他のメンバーとも相談してみることにする。お前ら行くぞ」

「「おう」」

 取り巻き達も俺に一礼してから別のところに行った。

「はあ、ミンナと藤原さんに謝ろう」








「別に良いんじゃない? 同郷を助けるのは普通に美談だよ」

「う、うん……私達は余裕があるけど、他の人達は厳しい始まりだよね……」

 薬草畑がある位置を描いた地図を後藤達にあげた事をミンナと藤原さんに謝ったが、2人はそんなに気にしていないっぽい。

 何なら明日別の場所に作れば良いだけだしって言ってくれた。

 あと後藤達が居なくなってから魔石を改めて換金したら4万シンクだった。

 薬草と合計すれば5万シンクである。

「これだけ稼げてるんだし、色々厄介事になる前に恩を着せたのは大きいんじゃない? 彼ら戦闘職でしょ? だったら将来冒険者として大成するかもしれないし……」

「私達気にしてないから大丈夫だよ」

「ありがとう2人共」

 その後、冒険者ギルドから宿に移動した俺達は夕食を食べて風呂に入り、自室でゆっくりしていると、藤原さんが部屋に入ってきた。

「あの……斎藤君にお願いがあるんだけど」

「お願い?」

「できればで良いんだけど……ブラジャーを作ってくれないかな……ミンナに聞いたら、似た下着はあるけど、しっかりとしたブラジャーはオーダーメイドで日数と高い値段がするって聞いて……」

「ちょっと待ってな」

 俺は作れるかどうかを確認する。

 するとブラジャーは作れるらしく、布素材とゴム素材、あとスポーツブラの場合はこれだけだが、普通のブラジャーは鉄素材が少々……たぶん針金分だと思う。

「ゴム素材が今無いから明日錬金術で作っているところを探してみるよ。なるべく早く作るから」

「うん! ありがとう!」

 女子のブラジャー作るって結構エッチなイベントな気がするのは俺だけだろうか?