クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った

 捕まえた妖精が20体を超えたので、俺は合成を開始する。

「妖精を合成するとどうなるのかな?」

「少し大きくなるんじゃないか?」

 藤原さんの質問に俺が答える中、合成が進むと、妖精はピクシーへと変化した。

 出してみると、光の玉だった妖精に対して、手のひらサイズの羽の生えた小人って印象だ。

 ピクシー同士を合成するとハイピクシー……ここまでは予想通りだったが、そのハイピクシー同士での合成……妖精8体分の合成で誕生したのはホムンクルスという人型モンスターだった。

「ホムンクルスってヤバくないか?」

 ゲームや漫画とかだと禁忌の技術によって誕生する生き物って印象が強く、俺はミンナの方を向くと、ミンナはそこまで深刻そうな顔はしていなかった。

「へぇ……ホムンクルスを作ることもできるんだ……」

 外に出したホムンクルスはまるで人形みたいであり、赤ん坊の様にぷにぷにもちもちした肌をしていて、頭に黄緑色の触手みたいなのが生えている以外は人間の子供と遜色ない様な見た目である。

「かわいいー」

 藤原さんはホムンクルスを抱きかかえると、ギュッとしてほっぺた同士を擦り付けていた。

 心なしかホムンクルスも嬉しそうである。

 俺は図鑑からホムンクルスのステータスを確認してみる。

 ホムンクルス
 名前 なし
 年齢 0
 性別 女
 職業 なし

 HP 150〜200
 MP 450〜550 
 パワー 100〜150
 ガード 150〜200
 マジック 400〜450
 スピード 200〜250
 ラック 45〜70

 とりあえず2体作ってみてのステータスがこんな感じ。

 ハイピクシーとの違いはHPとパワーの伸び以外は特に変化が無い、ちょっとがっかり進化であるが、妖精の進化先がホムンクルスまで一直線だったのに対して、ホムンクルスから進化先が爆発的に増える。

 それこそスライムや人と同じように……。

 というか図鑑でホムンクルスの進化条件を見ると人もしくはホムンクルスって書かれた進化先がズラリと並んでいたり……。

 え? 人の代用ってことか? ホムンクルスって……。

 というか……ホムンクルスと人間を合成するとできる進化先もあるし……闇深い……。

 ただホムンクルス同士での進化先は無いようで、ホムンクルスは合成素体って言ったほうがよいかもしれない。

「能力としてはそんなに強くないし……合成素体かな? 藤原さん、とりあえず、このホムンクルスとキングスライムを合成してみるんで」

「ええ! 可愛いのに……じゃあね」

 ホムンクルスとキングスライム1体を捕獲状態に戻し、合成をしてみる。

 すると合成画面が金色に光だし、次の瞬間、外に何かが飛び出した。

『んん~ようやく喋れるようになったー』

 人型の姿をしていながらスライムの様に水色の肌に足元は形を崩してドロっとしており、気持ち良さそうに伸びをしている。

『改めて初めまして! クイーンスライム娘です!』

「「「クイーンスライム娘!?」」」

 どうやら俺はヤバいのを生み出してしまったかもしれない。





『おっと、人目がありますから、スライムの姿に戻りますね』

 スライム娘がそう言うと、プルンと王冠を付けたキングスライムに似た姿になる。

 キングスライムとは王冠の形が違っていて、ティアラっぽい。

 この状態でも彼女は喋ることができるらしい。

『いや~ただのスライムがスライムの夢であるキングスライムにしていただくだけでなく、こうしてクイーンスライム娘っていう魔人にしていただけるなんて光栄ですよ!』

 プルルンとスライム娘はスライムの状態で揺れ動く。

 唖然としていた俺達であるが、気持ちを切り替えて、スライム娘の彼女に説明を求める。

 魔人とは何か、合成による変化……聞いてみたいことは色々あるが、彼女はそこまで詳しく知っているわけでなく、魔人というのはモンスターが人型になれた存在で、多くのモンスターの夢なのらしい。

 合成による変化は意識の強い方が人格を塗り替えるらしい。

 ホムンクルスはほぼ人格がしっかりしていないので、キングスライムだった彼女の方が意識が強く、スライムとして持っていた知識をベースに、成長をしていった姿だと語る。

 まぁモンスターは強い存在に成れるんだったら、意識が塗り替えられてもへっちゃらって場合が多いらしいが……。

『キングスライムの時点でも結構知性はありますからね! 良かったですよ……ご主人が夜通しレベリングを敢行する様な人じゃなくて!』

 少し考えたりしていた夜通しレベリング。

 キングスライムに夜の間町の外でモンスター狩りをしてもらって簡単にレベル上げをしようと思っていたが、スライム娘曰く不満が溜まるから止めたほうがいいとのこと。

 やらなくて良かったー……。

「スライム娘ちゃん、モンスターってどうやって湧いてくるの? お姉さん知りたいなーって」

「ん?」

 ミンナがスライム娘に質問を投げかける。

 彼女曰く、なんでモンスターが湧いてくるのか……これが分からなくて多くの研究者は悩んでいるらしい。

『空気中の魔力が集まるとモンスターは勝手に産まれるよ。それ以上のことは私も知らないかな~』

「ふむふむ……空気中の魔力説は正しかった訳か……いや、ありがとうね」

『えへへ』

 ミンナがスライム娘の頭を撫でると嬉しそうにプルプルしていた。

 意思疎通がはっきり取れるというのは便利で、スライム娘の彼女にやりたいこととかあるか聞くと、答えは強くなりたいらしい。

『ご主人のステータスを上げる能力! あとレベルが上がると私強く成れる! それにレベルを上げる時の気持ちいい感覚! あれ好き! とにかく強くして欲しい! あと今はご主人できないけど、名前が付けられるようになったら付けて欲しい』

 とのことだった。

 名付けるだけならできそうであるが、名を魂に刻み込む……というのが俺はそのうちできる様になるらしい。

 多分レベルが上がったら技として名付けるが覚えられるのだろう。

 スライム娘曰く、名付けると名付けた者同士の合成はできないらしいが、名付けられた者の意識が優先して継承されるらしい。

「なんでそんなことを知っているんだ?」

『合成された時に知識として刷り込まれたよ?』

 うーむ、まだまだ分からないことだらけだな……。

 スライム娘の彼女に食べ物とかは必要なのかって聞くと、実体化している時はお腹が空く様になるけど、捕獲状態で居ればお腹は空かないらしい。

 あと元がスライムの種族は空気中の魔力やそこらの雑草や土でも栄養にするから、放っといてもお腹に関しては大丈夫らしい。

『だから私のご飯とかは気にしなくていいよ。でもそれはスライム族だけだから、他のモンスターはちゃんと餌が必要だからね』

「気をつける」

 スライム娘のお陰でモンスターに対しての知識が深まった気がする。

 あともし夜通しのレベリングがしたいなら夜行性のモンスターでやった方がいいよ……とのこと。

「夜行性のモンスターって何かいるか?」

「うーん、ゴーストとかアンデッドとか、そういうモンスターが多いかな? 郊外の集団墓地とかに行くとゴーストが湧いている事があるけど、元々人間の死者の魂だったりするからあんまり捕まえて欲しくはなかったりするけど……」

「夜行性の動物系モンスターもいるんじゃないかな? フクロウみたいな……」

 ミンナと藤原さんがアイデアを出してくれた。

 まぁ当面は夜通しレベリングは封印ということで。

 とりあえず、妖精をじゃんじゃん捕まえて、合成素材のホムンクルスを大量に確保することに努めるのであった。





「いやぁ……スライム娘の活躍凄かったな」

『でしょでしょ! この姿になったおかげで色々魔法も使えるようになったし!』

 スライム娘は体の一部を伸ばして素早く妖精を捕まえるだけでなく、粘着性の泡を飛ばして妖精を捕まえたりで大活躍だった。

 おかげでホムンクルスを今日だけで30体マックスまで捕まえるだけでなく、素体となるハイピクシーもマックスの30体捕獲状態にすることができた。

 同種は30体までの縛りはあるが、進化前を捕まえておけば、素早く合成できるので、実質の数はもっと多くできる。

 別行動をしていたキングスライム2体を招集すると、ペッとモンスターの亡骸とスライムの魔石を吐き出してくれた。

 数的に今日は3万シンクくらいかな? 

 それでも十分であるが。

「じゃあ今日の狩りはここまでにして、建材屋に行こうか」

「「おー!」」

 スライム達は捕獲状態にしてから町に入る。

 先に冒険者ギルドで換金を行い、ミンナの案内で建材屋に向かうと、木材や石材、鉄の塊とかが店の前に置かれていた。

 これなら色々試すことができそうである。

「いらっしゃい」

 店主のおっちゃんは貫禄があり、いかにも強面の人物だったが、俺は臆することなく、答える。

「石材と鉄のインゴットを買いたいんですけど」

「あいよ、量はどれくらいだ?」

「それぞれ50キロずつ」

「塊の方がいいか? 10キロずつにするか?」

「じゃあ10キロずつで」

「あいよ」

 少しすると、袋を担いで店主が戻ってきた。

 両肩で50キロずつ担ぐって凄いな……。

「石材50キロと鉄50キロだ。値段は3000シンク」

 俺は財布代わりにしている袋から1000シンク硬貨を3枚渡す。

「ちょうどだな」

 俺は収納でそれら素材を異空間に収納する。

「兄ちゃんの能力か? 何キロまで運べる?」

 そう聞かれて、俺は現体重×レベル分だから……約1.4トンと答える。

「十分だ。お前さん冒険者だよな? 名前は?」

「サイトウですが」

「サイトウか、お前に指定依頼を出したい。いつも頼んでいる建材を運ぶ奴がぎっくり腰で倒れちまってな。そいつが回復するまでの間建材運びを依頼したいんだが」

「いいですよ。報酬は?」

「1件運ぶごとに500シンク。1日最低6件は保証する」

 となると運ぶだけで3000シンクか。

 悪くない報酬だな。

 スライム達の監視は藤原さんとミンナにやってもらえれば良いし……。

「いつからですか?」

「明日には頼みたい。朝10時にここに来てくれ」

「分かりました」

 というわけで、俺は指定依頼を受けることになるのだった。






「というわけで、明日から数日別行動するけどいいか?」

「別に構わないよ。私とフジワラはスライム達の監視をしていればいいんでしょ。フジワラに魔法を教えるにはちょうどいい時間だね」

「私頑張るから! 斎藤君も頑張って!」

「まぁ素材運ぶだけだけどな」

 宿までの帰り道でそんなことを話すのだった。