ただぼんやりと授業を眺めているだけで、あっというまに放課後になった。
今日の最後の授業終了のチャイムが鳴った瞬間、先生の退室を待たずして一気に教室に活気が戻った。
「みっこ! 今からなっことカラオケ行くんだけど一緒行かない?」
帰ろうとしていた光里を、彩花が呼び止めた。
まぶたのラメがキラキラとしていて、彩花の大きな目を輝かせている。
「あっこ……。ごめん、今日はちょっと用事があるから」
「えー! みっこさぁ、最近元気なくない? さくらのこと気にしてる?」
『さくら』と呼ばれドキッとした。私の話題になると思っていなかったから。
「そういうわけじゃ……」
「命にべつじょーないってせんせーが言ってたじゃん! さくら勉強好きだしさ、次のテストまでにはきっと学校来るよ」
彩花が珍しく語気を強めた。いつも笑顔を絶やさない彼女にしては珍しく、眉間に皺を寄せている。
命に別条のないはずの私が、すぐ隣でふたりの会話を聞いているなんてだれも思わないだろう。
それにしても、私って勉強好きだと思われていたんだな。
普通に授業を受けて、提出物の期限を守っているだけなのに。
2年生に進級するときにクラス替えがあった。
たまたま席が近かった私たちは、自然に4人グループになった。
光里は『みっこ』、夏美は『なっこ』、彩花は『あっこ』。そして、私は『さくら』。
いつの間にか私以外は、名前の最後に『こ』をつけるという共通の愛称で呼び合っていた。
私の名前の最後には、今も『こ』は付けられていないけれど。
だからって私だけ仲間外れにされたり虐められているわけではないし、気にしていない。
移動教室やクラスイベントでのチーム分け、グループ活動が避けられない学校生活では、仲間を作っておいた方がいい。
去年の一年生のときは仲間を作りそびれて、グループ活動などで不便をした。
きっと、みんなもそうだ。ひとりぼっちだと周りから思われたくないから、群れているだけ。
ふたりグループだとひとりが休んだ時にぼっちになるし、3人だとひとり余る。
ちょうどいい寄せ集めの4人組な私たち。
視線を地面に置いたまま、ぽつりと光里が呟いた。
「あのさ、みんなでさくらのお見舞いに行ってみない?」
「え?」
私と彩花の声が重なった。私の声は私にしか聞こえないのだけれど。
「ねえ、カラオケ行くことになった?」
今流行している色付きリップクリームで唇をつやつやと輝かせている夏美がやって来た。
いつもなら「その色かわいいね」と光里が褒めて、そこからメイク話に花を咲かせるのに。
「やっぱり今日は帰るね」
あっさりと会話を切り上げて、背中を向け立ち去る光里。
私は、咄嗟に光里の背中を追いかけた。
病院のある方角に向かって足早に突き進んでいく光里を小走りで追いながら、声をかける。
「お見舞いなんて行かなくていいよ。っていうか行かないでほしい」
もちろん今の私の声が届くはずはない。なのに、光里の歩く速度が半分に緩んだ。
正面に回り込んで更に声をかける。
「お見舞いなんて行っても意味ないよ」
私はここにいるし、私なんかに時間を使うのはもったいない。それなら彩花たちとカラオケに行った方が有意義だ。
今日の最後の授業終了のチャイムが鳴った瞬間、先生の退室を待たずして一気に教室に活気が戻った。
「みっこ! 今からなっことカラオケ行くんだけど一緒行かない?」
帰ろうとしていた光里を、彩花が呼び止めた。
まぶたのラメがキラキラとしていて、彩花の大きな目を輝かせている。
「あっこ……。ごめん、今日はちょっと用事があるから」
「えー! みっこさぁ、最近元気なくない? さくらのこと気にしてる?」
『さくら』と呼ばれドキッとした。私の話題になると思っていなかったから。
「そういうわけじゃ……」
「命にべつじょーないってせんせーが言ってたじゃん! さくら勉強好きだしさ、次のテストまでにはきっと学校来るよ」
彩花が珍しく語気を強めた。いつも笑顔を絶やさない彼女にしては珍しく、眉間に皺を寄せている。
命に別条のないはずの私が、すぐ隣でふたりの会話を聞いているなんてだれも思わないだろう。
それにしても、私って勉強好きだと思われていたんだな。
普通に授業を受けて、提出物の期限を守っているだけなのに。
2年生に進級するときにクラス替えがあった。
たまたま席が近かった私たちは、自然に4人グループになった。
光里は『みっこ』、夏美は『なっこ』、彩花は『あっこ』。そして、私は『さくら』。
いつの間にか私以外は、名前の最後に『こ』をつけるという共通の愛称で呼び合っていた。
私の名前の最後には、今も『こ』は付けられていないけれど。
だからって私だけ仲間外れにされたり虐められているわけではないし、気にしていない。
移動教室やクラスイベントでのチーム分け、グループ活動が避けられない学校生活では、仲間を作っておいた方がいい。
去年の一年生のときは仲間を作りそびれて、グループ活動などで不便をした。
きっと、みんなもそうだ。ひとりぼっちだと周りから思われたくないから、群れているだけ。
ふたりグループだとひとりが休んだ時にぼっちになるし、3人だとひとり余る。
ちょうどいい寄せ集めの4人組な私たち。
視線を地面に置いたまま、ぽつりと光里が呟いた。
「あのさ、みんなでさくらのお見舞いに行ってみない?」
「え?」
私と彩花の声が重なった。私の声は私にしか聞こえないのだけれど。
「ねえ、カラオケ行くことになった?」
今流行している色付きリップクリームで唇をつやつやと輝かせている夏美がやって来た。
いつもなら「その色かわいいね」と光里が褒めて、そこからメイク話に花を咲かせるのに。
「やっぱり今日は帰るね」
あっさりと会話を切り上げて、背中を向け立ち去る光里。
私は、咄嗟に光里の背中を追いかけた。
病院のある方角に向かって足早に突き進んでいく光里を小走りで追いながら、声をかける。
「お見舞いなんて行かなくていいよ。っていうか行かないでほしい」
もちろん今の私の声が届くはずはない。なのに、光里の歩く速度が半分に緩んだ。
正面に回り込んで更に声をかける。
「お見舞いなんて行っても意味ないよ」
私はここにいるし、私なんかに時間を使うのはもったいない。それなら彩花たちとカラオケに行った方が有意義だ。
