たとえば私がいないほうが。

 制服着てるし、今日って普通に登校日だよね。
 やばい、完全に遅刻だ。

 慌てて通学用のリュックを探す。
 いつも置いている机の脇ではなく、学習デスクの椅子の足元に置かれていた。

 なんだか汚れている。
 しかも、肩ベルトの一部が破れている。

 おかしいなと思いつつ、リュックのベルトを掴んだ。
 掴んだ、はず。
 確かに掴んでいるのに、持ち上げることができない。
 重いから、とかではない。
 空気を持ち上げてみてください、と言われても出来ないのと同じで、私はそれを動かすことができなかった。

 あきらかに普通では考えられないことが起こっているのに、私は自分でも驚くほどすんなりとこの状況を受け入れた。

 リュックを諦めて、私に笑いかけるアイドルのポスターに向かってゆっくり歩く。
 もうわかっていることだけれど、爪の先でカリカリと紙を引っ掻いても、ポスターは剥がれてくれない。

 このままここにいても退屈だし、外に行きたい。どうすればいいのだろう。
 ドアノブを握ったとき、それが九十度下に回転して、驚きで一歩後ずさった。