たとえば私がいないほうが。

◇

「ねぇ、今日みんなでカフェ行かない?」

 今年最後の夏服の日、遊びに誘われた。

「ごめん、今ちょっと金欠で……」

 断ったら、みんなの顔色が曇った。これまでも、行けないことなど何度もあったのに。

「いっつも断られるんですけどー。さくらって付き合い悪いよね」
 光里は冗談めかして言ってくれているけど、たぶん怒っている。

「ほんとごめん。今月分のお小遣い使い果たしちゃったの」
「そんなん気にしなくていーよ」
 彩花が机に手をついて身を乗り出した。
 そうそう、とそれに夏美が相づちを打つ。
「今日は特別にうちらが奢ったげるし」

 彩花と夏美も、今日は一段と押しが強い気がする。

「それは申し訳ないよ。自分で払いたいからまた今度でいい?」

 月の初めにお母さんからお小遣いとして5千円をもらっているけれど、なるべく使い切らずに貯金している。できればバイトもしてお金をためて、少しでも進学費用を自分で用意したいから。カフェなんて贅沢すぎる。

 夏美がつやつやの唇を尖らせる。

「さくらってさ、実はあたしたちのこと見下してない?」

「そんなことない!」
 みんなを下に見たことなんて一度もなかった。なのに、どうしてそんなふうに取られてしまったのか皆目見当もつかない。

 彩花も完全に機嫌を損ねている。

「でもさ、メイクもネイルも一緒にやろうとしても『私はいいから』って拒否るじゃん」

 それは単純に、私には似合わないと思うから。私はみんなみたいに、キラキラできない。

「さくら勉強できるし、あたしたちとは違うって思ってる?」
 光里が真顔で、私の目を見据えた。

 そんなこと、ずっと思っている。みんなと私は違う。
 勉強やルールに縛られて、日々の楽しみ方がわからない私。勉強が苦手でも、毎日が楽しそうなクラスメイトたち。
 この学校に来て、勉強がすべてではないのだと思い知らされた。
 だけど私は、真面目に勉強すること以外に自分の価値を高める術がわからない。

 もしも志望校に合格して今とは違う学校に通っていたとしても、きっと私は落ちこぼれていただろう。
 どこに行っても、私は私だから。

 こんなにもネガティブな感情は、明るいこの子たちには吐露できない。

 言葉を探せずにいるうちに、はぁ、と深いため息が聞こえた。

「もういいよ。行こ」

 見下してなんかない。むしろ、私にはないものをたくさん持っているみんなに憧れている。

 どうして私はうまくできないんだろう。
 みんなみたいになれないんだろう。