たとえば私がいないほうが。

 無視して帰ってしまうこともできるのに、律儀に私の病室に立ち寄る光里。
 そもそも、どうして私のお見舞いに来ているのだろう。

 光里はベッドには近づかず、出入り口から一歩入室しただけの場所で、私の足元を眺めている。
 まるで、近づくのを怖がっているみたいに。

 意を決したようにほんの数センチ前に歩み出て、私に向かって声を放った。

「あたしのせい? あたしが友だちなんかじゃないって言ったから、だから目を覚まさないの?」

「みっこ? なに言ってるの? 」

 いつもは鈴が鳴るように楽しそうに話す光里なのに、今は全然楽しそうじゃなくて、私まで悲しい気持ちになる。

 光里のせいなわけがない。私がこうなっているのは、すべて自業自得だ。

「あっこもなっこも、謝りたいって言ってるんだよ。ちゃんと、自分の気持ちを伝えればよかったって泣いてたよ」

 更にわけがわからない。
 彩花も夏美も、私がいなくてもいつも通りに過ごしていたはず。
 少なくとも学校ではそうだった。

 でも、こんな状況で光里が嘘を言っているとは思えない。

 光里の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちて、無機質な床に一滴の水たまりを作った。

「学校に来てよ。あたしたち、まだ本当の友だちになれてない。あなたの名前をちゃんと呼びたいよ、さくらこ……」

——初めて光里から、あだ名じゃない私の本当の名前を呼ばれた。