たとえば私がいないほうが。

 少しもワクワクしない日曜日がやってきた。
 小学生の頃は、日曜日が楽しみで仕方なかったのに。
 お父さんとお母さんと私、3人でお出かけしたり、ご飯を作ったり、ゲームをしたり。平凡な休日が特別だった。
 いつからか、『平凡』を『特別』に変える魔法は使えなくなってしまった。

 ちょっとくびれた普段着に、日焼け止めを塗っただけの格好で家を出るお母さんについて行く。
 近くのコンビニまで行くのにも小綺麗な服にお出かけ用メイクをしていたのに、いつ頃からオシャレをやめてしまっていたのだろう。

 着いた先は、私の病室だった。
 真っ白なベッドに横になる私の身体。少し痩せたみたいだけれど、手の甲から延びた点滴がなければただ眠っているだけのようにみえる。
 寝ているだけなのに個室を使っているなんて、贅沢だなと思う。

 お母さんが部屋の隅に寄せてあった丸椅子をベッドの横に引っ張り、疲れたように腰かけた。

「本当は、起きてるんじゃないの?」

 空笑いと共に呟かれた声が、少し掠れていた。

「ごめんね、迷惑かけて……」

 聞こえないとわかっていても、謝らずにはいられなかった。
 入院費だってかかるし、こうやって時間を奪ってしまうことを申し訳なく思う。

 私の顔を眺めながらお母さんはしばらくぼうっとしていた。
「なんで起きないの? お母さんのせい?」
 お母さんがぽつりと言葉をこぼし、私の頬にゆっくりと手を伸ばす。

 触られるのなんていつぶりだろう。ここにはないはずの心臓が、絞られたようにぎゅっと痛んだ。
 手のひらが頬に触れようとしたところで、入り口の引き戸からガタリと音がした。