たとえば私がいないほうが。

『生きるか、死ぬか、どっちを選ぶ?』

 突然、頭の中に直接言葉が流れ込んできた。
 ここがどこなのか分からない。地面も天井も感じない真っ暗闇の中に、一粒の光が浮かんでいた。
 まるで蛍みたい。本物は見たことがないけれど。

『まだ生きる? ここで死ぬ?』

 再び私に問いかけられる、穏やかではない言葉。

 ふわふわとした思考で、これまでの人生を振り返ってみた。
 可もなく、不可もなく、いたって平凡な私。
 乗り越えられる程度の不幸と、すぐに忘れてしまう程度の幸せを感じながら生きてきた十六年間だった。

 ただしここ数年は、緩やかに不幸の質量が増してきている。将来の夢や目標がない私は進路を決められず、いつも焦燥感を抱いていた。
 暗いニュースばかりが目に入り、未来に希望を持つこともできない。

 こんなつまらない世界に生まれてきたくなかったな、と思ったことも一度や二度ではない。

 積極的に死を選びたいわけじゃない。
 けれど、もしも『ひとりの命で大勢を救うことができるので、誰かひとりを捧げてください』と神様から言われたら、立候補してもいいと思っている。

 今の私は、生きたいんだろうか。
 目的もなく生きるのもつらい。でも、このまま死ぬのは口惜しい気もする。

 答えあぐねていると、再び頭の中で声がした。

『迷っているなら、ちゃんと見て。今、生きている世界を』

 軽く引っ張っれるような感覚がした。そこで一旦意識が途絶えた。