親友からのステップアップ

~綾斗視点~
かなと出会ったのは、保育園に入ってすぐのことだった。俺は人付き合いが苦手で、園内ではいつも一人で本を読んでいるような子供だった。そんな時、声をかけてくれたのがかなだった。俺は彼を見て一瞬で心が奪われた。男にしては可愛い顔で浮かべる笑顔に惹かれたのだ。それから、俺はかなの隣にずっと居たくて、同じ校区内にある小学校や中学校はもちろんのこと、高校も同じところを受験した。きっと、かなは俺がそんな黒い感情を持っていることに気付いていない。それでいい。かなの隣に居られるなら気付かなくていい。

そんな変わらない平穏な日々は、高校に入ると崩れていった。なぜか、異様に女子に呼び出されるようになった。それも全部告白だった。皆、初対面で話したことない子たちだった。誰?かなとの時間を奪うなよ。そう思いながらも、愛想笑いを張り付けて丁重にお断りし続けた。一度、かなになんで彼女作らないのかって聞かれたことがある。その時、俺はかなは俺の恋愛対象も異性だって信じて疑ってないんだなって思った。いっそのこと告げようかと思ったけど、焦ってはいけないと思い、興味ないからと当たり障りのない言葉で答えた。
一生、この想いを伝えることはないだろう。そう思っていたはずなのに――

いつも通り帰り支度をして、かなと帰ろうと思い、席を立つと知らない女子に呼び出された。めんどくさいと思いながらも、ここで無視したらそれこそ後でめんどくさいことになりそうだと思い、俺はその子についていくことにした。
「…それで、何?」
「と、突然すみません…あの、実は、柿原くんに聞きたいことあって…」
「…聞きたいこと?」
「は、はい。あの、相良くんって、好きな人っていますか…?」
「……は?」
俺は拍子抜けした。今までの経験上、告白だと思っていたから断り文句を考えていた。ところが、彼女から発せられた言葉は告白の言葉ではなかった。かなの名前だった。は?どういういことだ、こいつはかなのことが好きなのか?なんで?どこで?疑問はいろいろ浮かんだが、ひとまず話を聞こうと思い、言葉を続ける。
「えっと、なんで俺に聞くの?」
「柿原くんと相良くん、いつも一緒に居るから知ってるかなって」
「そう。かなに好きな人はいないよ」
「本当ですか!?」
「うん」
「それじゃ、協力……」
「それはできない」
「ど、どうして?相良くんの友達なら協力してくれてもいいじゃない!」
「どうして?そんなの、俺もかなのことが好きだからに決まってるじゃないか。君よりも、俺はずっと彼のことが好きだから」
俺の言葉を聞いて彼女は泣きそうな顔で走り去っていった。なんだ、その程度の気持ちなんだな。俺は呆れながらも早く帰ろうと校舎裏の角を曲がると、かなの姿が見えた。よかった、まだ居たんだ。俺がかなの名前を呼ぶと、振り返ってくれて頬を緩ませたと同時に、かなが泣いていることに気付き、困惑する。何か嫌なことがあったのか聞くと、信じられない言葉が聞こえた。
「オレ、お前が誰かと付き合うの、いやだ…あやのことが好き。ごめん、男に、ずっと親友だった奴にこんなこと言われても困るよな…」
俺は一瞬夢でも見ているのかと思った。気づけばかなを抱きしめていた。こんなチャンスは二度とないだろう。そう思った俺はそのまま、言葉を綴る。
「嬉しすぎて、困る。俺もかなのことが好きだから。ずっと、子供の時から好きだよ。一目惚れだった。男だってわかってたけど、綺麗で可愛い顔で満面の笑みを浮かべてるかなを見て、一瞬にして好きになってた」
もう隠さなくていいと思った瞬間、俺は今までの想いを全てかなにぶつけた。かなは困惑しながらも、俺の背中に腕を回してくれた。
「かな、ここからは俺に言わせて。俺は奏人のことが好きだよ。俺と付き合ってください」
「…っ!喜んで…!」
あぁ、嬉しい。ずっと欲しかったものが手に入った。これで、もうかなは一生俺のものだ。