親友からのステップアップ

短い春休みも終わり、新学年となった。三年になり、受験や就活モードに入っている人も何人かいた。恐らく、あやもそのうちの一人だろう。実際、オレたちの会話はいつもと同じ他愛のない話だけでなく、進路の話もするようになっていた。
「かなは、どうするか決めた?」
「んー、まだ」
「やりたいこととかないの?」
「特にないんだよなー」
「そっか」
「おう。あやは勉強進んでる?」
「うん、順調だよ」
「そっか!それなら、よかった!」

進学か就職か…んー、やりたいことないなら就職でもいいのかもな。帰り道であやに相談してみようと思い、あやの席を見てみるとそこにはあやの姿はなかった。あれ?どこ行ったんだろ。オレは不思議に思い、近くのクラスメートに聞いてみた。
「なあなあ、あや知らない?」
「あや?あー、柿原のことか。あいつなら、女子に呼び出されてどっか行ったぞ。どうせまた告白だろ」
「そう、なんだ…わかった、ありがと!」
教えてくれた子にお礼を言い、オレは足早に教室を出てあやを探す。まただ。また、モヤモヤ…いや、前よりも胸の奥の痛みが増している。いやだ、あやが誰かと付き合うなんて…そんなの、嫌だ…!あぁ…オレ、あやのこと、好きだ。あき、やっとわかったよ。オレ、自分が思っている以上に、あやのこと好きだったみたい。自覚して、一人呆然としていると、不意に声を掛けられる。なんで、このタイミングで会うんだろう。今は会いたくなかった。どんな顔すればいいんだ、というか、絶対オレの顔、今変になってる。それでも、この気持ちを抑えることなんてできないオレは意を決して振り返る。案の定、そこにいたのはあやだった。
「…あや」
「かな…?ここで何して、というか、泣いてる?どうしたの?何か嫌なことでもあった?」
「あや、オレ…オレ、お前が誰かと付き合うの、いやだ…」
「かな、何言って…」
「オレ、あやのことが好き。ごめん、男に、ずっと親友だった奴にこんなこと言われても困るよな…」
「困る」
あやの言葉に泣きそうになりながら、もう一度、ごめんと言おうとするが、言葉にできなかった。あやがオレを抱きしめたからだ。オレは突然のことに困惑してどうすればいいのかわからず、視線を彷徨わせる。そんなオレを気にすることもなく、あやは耳元で言葉を綴る。
「嬉しすぎて、困る。俺もかなのことが好きだから。ずっと、子供の時から好きだよ」
「え…?」
「一目惚れだった。男だってわかってたけど、綺麗で可愛い顔で満面の笑みを浮かべてるかなを見て、一瞬にして好きになってた」
「あ、や…」
「かな、ここからは俺に言わせて。俺は奏人のことが好きだよ。俺と付き合ってください」
「…っ!喜んで…!」
そうして、オレたちはここが学校の敷地内であることを思い出し、慌てて周囲を見回すが幸い人がいなくて安堵した。それから、オレたちはいつもと同じように一緒に帰った。一つだけ違うと言えば、親友としてではなく、恋人としての時間になったということだ。