尋絵とその友達は、足早に先に山に入っていった。残された僕と多音は、足が慣れるまでもう少し休んだ後に登山を再開した。
「大辻尋絵とどんな話をしてたの?」
多音は興味なのか、嫉妬なのか分からない顔で聞いてくる。心なしか登っている山と同じやや険しい顔をしている。
「まあ、さっきの話の続きをね」
「ああ。やっぱりね。結局二人は知り合いだったの?」
「うん、一応ね。知り合いというか、向こうが覚えてくれただけと言いますか」
「良かったじゃない。知り合いで。何?覚えてくれるほどたいそうなことしたの?」
「まあ、水上アスレチックで川に落ちて泣いてる尋絵を助けたって感じかな。結構記憶は曖昧やけど」
「それは良かった」
それ以降、多音は何も言わずに黙々と山を登り続けた。会話がないからか、登り始めの時よりもちょっとだけ速くなった気がした。それとも、僕が遅くなったのだろうか。思い出という大きな荷物が肩に乗っかったからだろうか。30分くらいは何も会話がなかった。そして、多音は急に止まって口を開いた。
「私は分かってたけどね。なんとなく」
「それって、どういうこと?」
「勘だよ、勘。女の勘。大辻尋絵を見ていたらなんとなくわかった。それと、さっき休憩してたら偶然ばったり会ったことで確信に変わった。の方が正しいかな」
「は、はあ」
僕には多音が何を言っているのか腑に落ちなかったが、この子は出会った時から何かと不思議というか、常人では持っていない何かがあるというので自分を納得させた。
「というか、さっきからみんなと全然違う道を歩いてるんじゃない?他の人と全くすれ違わないんだけど」
「それはどうかな。どちらが合ってる、間違ってるのかな」
「でも、こんなに人とすれ違わないなんておかしいよ」
「そう?いいこと教えてあげようか?」
「なに?」
僕は少し呆れてしまい、すこし食い気味の返答をしてしまった。しかし、そんな僕の言葉を聞いても彼女は微笑んだまま言った。
「ほら、もう頂上だよ」
その言葉を聞いた瞬間、視界から生い茂った木々たちの姿は一切なくなり、燦々と降る太陽の光が二人の真っ白い肌を反射した。頂上からの眺めは全く遮るものがない。そんなありのままの街の景色は、僕の想像をはるかに超える絶景だった。二人は展望台のガードレールから身を乗り出して見回す。
「すごい!こんなにきれいなんだ!」
「ふふふ。すごく小学生のような感想」
「あれ?でも僕たち二人だけだね。みんなはどうしたんだろう。ここ頂上なんでしょ?僕たち結構長めに休憩していたから、先客がいるはずなんだけど」
どれだけ探しても近くには誰もいないようだった。
「本当にここでいいのかな?場所まちがってない?」
「大丈夫大丈夫。歩は心配性なんだから」
多音がそう言った瞬間、森の中から聞き覚えのある男の声が聞こえた。山井清の声である。
「よっしゃー一番のり、あれ?なんでこんなところに歩がいるんだ?」
清は絶対に自分が一番乗りと思ったようでノリノリで上がって来たのに、僕が先にいたことに驚きを隠せないでいた。
「あれ?二人は登りはじめたの最後の方じゃなかった?俺の記憶がおかしいのかな」
「はは、なんでだろうな。僕も清よりも先に山頂に着くなんてびっくりだよ」
「てか、またお前ら二人でいたのかよ。仲良すぎでしょ。出会ってまだ数日しかたってないのによ」
すると、多音が会話に入って来た。
「もう私と赤い糸が結ばれているのだ」
「い、いきなり何言ってるんだよ!」
突然、多音の口からこぼれた言葉に肝を抜かれた。じ、冗談だよなと苦笑いした。そこで僕は心の中で一つの言葉がこだました。「ちがうよ。私が進んでいるんじゃない。みんなが遅れているんだよ」僕は一番近くでその言葉の真意を少しだけ実感できた気がした。
「大辻尋絵とどんな話をしてたの?」
多音は興味なのか、嫉妬なのか分からない顔で聞いてくる。心なしか登っている山と同じやや険しい顔をしている。
「まあ、さっきの話の続きをね」
「ああ。やっぱりね。結局二人は知り合いだったの?」
「うん、一応ね。知り合いというか、向こうが覚えてくれただけと言いますか」
「良かったじゃない。知り合いで。何?覚えてくれるほどたいそうなことしたの?」
「まあ、水上アスレチックで川に落ちて泣いてる尋絵を助けたって感じかな。結構記憶は曖昧やけど」
「それは良かった」
それ以降、多音は何も言わずに黙々と山を登り続けた。会話がないからか、登り始めの時よりもちょっとだけ速くなった気がした。それとも、僕が遅くなったのだろうか。思い出という大きな荷物が肩に乗っかったからだろうか。30分くらいは何も会話がなかった。そして、多音は急に止まって口を開いた。
「私は分かってたけどね。なんとなく」
「それって、どういうこと?」
「勘だよ、勘。女の勘。大辻尋絵を見ていたらなんとなくわかった。それと、さっき休憩してたら偶然ばったり会ったことで確信に変わった。の方が正しいかな」
「は、はあ」
僕には多音が何を言っているのか腑に落ちなかったが、この子は出会った時から何かと不思議というか、常人では持っていない何かがあるというので自分を納得させた。
「というか、さっきからみんなと全然違う道を歩いてるんじゃない?他の人と全くすれ違わないんだけど」
「それはどうかな。どちらが合ってる、間違ってるのかな」
「でも、こんなに人とすれ違わないなんておかしいよ」
「そう?いいこと教えてあげようか?」
「なに?」
僕は少し呆れてしまい、すこし食い気味の返答をしてしまった。しかし、そんな僕の言葉を聞いても彼女は微笑んだまま言った。
「ほら、もう頂上だよ」
その言葉を聞いた瞬間、視界から生い茂った木々たちの姿は一切なくなり、燦々と降る太陽の光が二人の真っ白い肌を反射した。頂上からの眺めは全く遮るものがない。そんなありのままの街の景色は、僕の想像をはるかに超える絶景だった。二人は展望台のガードレールから身を乗り出して見回す。
「すごい!こんなにきれいなんだ!」
「ふふふ。すごく小学生のような感想」
「あれ?でも僕たち二人だけだね。みんなはどうしたんだろう。ここ頂上なんでしょ?僕たち結構長めに休憩していたから、先客がいるはずなんだけど」
どれだけ探しても近くには誰もいないようだった。
「本当にここでいいのかな?場所まちがってない?」
「大丈夫大丈夫。歩は心配性なんだから」
多音がそう言った瞬間、森の中から聞き覚えのある男の声が聞こえた。山井清の声である。
「よっしゃー一番のり、あれ?なんでこんなところに歩がいるんだ?」
清は絶対に自分が一番乗りと思ったようでノリノリで上がって来たのに、僕が先にいたことに驚きを隠せないでいた。
「あれ?二人は登りはじめたの最後の方じゃなかった?俺の記憶がおかしいのかな」
「はは、なんでだろうな。僕も清よりも先に山頂に着くなんてびっくりだよ」
「てか、またお前ら二人でいたのかよ。仲良すぎでしょ。出会ってまだ数日しかたってないのによ」
すると、多音が会話に入って来た。
「もう私と赤い糸が結ばれているのだ」
「い、いきなり何言ってるんだよ!」
突然、多音の口からこぼれた言葉に肝を抜かれた。じ、冗談だよなと苦笑いした。そこで僕は心の中で一つの言葉がこだました。「ちがうよ。私が進んでいるんじゃない。みんなが遅れているんだよ」僕は一番近くでその言葉の真意を少しだけ実感できた気がした。

